目次
■すでに半世紀! 清水和夫のラリーとレースにかけた人生
●清水和夫のドライバー人生ワード「SUBARU」「グループA」「N1耐久」、そして「CVT」
![箱スカ](https://clicccar.com/uploads/2020/10/28/kazuoshimizu_blog_vol7_04-20201028121634-200x136.jpg)
18歳で免許を取得すると、箱スカをゲットし、もっとも手軽なモータースポーツである千葉・鋸山のヒルクライムに挑戦した。お尻が青い小僧が、いきなりスピード競技は無謀だったが、ヒール&トゥも満足にできず、成績はケツから数えたほうが早かった。
![SUBARUレオーネ](https://clicccar.com/uploads/2020/10/28/kazuoshimizu_blog_vol7_05-20201028121422-200x151.jpg)
続けて初級ラリーに参加し、すっかりとモータースポーツに没頭したのである。
その後、ランサーやTE27レビンに乗り換え、志賀高原ラリーというビッグイベントに挑戦。幸運にも優勝でき、将来はプロドライバーになろうと決意した瞬間だった。
![FJ1600](https://clicccar.com/uploads/2020/10/28/kazuoshimizu_blog_vol7_12-20201028121816-200x100.jpg)
そのあとはSUBARUのワークスドライバーとなり、レオーネで全日本ラリー選手権に参加するが、同時にFJ1600というレースも走った。エンジンがSUBARUの水平対向エンジンだったので、SUBARUが仕掛けたカテゴリーだった。
1980年代後半はラリーからレースに転向し、耐久レースを中心に海外のレースも参戦し、ジャーナリスト業と二足のわらじを履いた。
●ヘナチョコCVTに喝!
![](https://clicccar.com/uploads/2020/10/28/kazuoshimizu_blog_vol7_11-20201028123051-200x118.jpg)
ラリーからレースへ、そして再びラリーに復帰したのはCVTというギヤボックスのおかげだ。
そもそもCVTとは、軽自動車から多くの日本の小型車に使われる無段変速ギアボックスを指し、従来からあるトルクコンバータータイプのATとは機構が大きく異る。このCVTを搭載するヴィッツでラリーに復帰したのである。
東富士にあるトヨタの先進技術部門ではモード燃費で優れた数値を得るには都合がいいが、ドライバビリティには不満を感じていた。もちろん、CVTはスポーティな走りには不向きという評判が定着し、CVTの開発チームはなんとかCVTの性能を変えたいと考えていた。
そこで目をつけたのがラリー参戦だった。
![ヴィッツCVT](https://clicccar.com/uploads/2020/10/28/kazuoshimizu_blog_vol7_06-20201028121928-200x102.jpg)
今から4年前の2016年11月。全日本ラリー選手権・新城ラリーが開催され、そこにヴィッツのCVTが走ったのである。その時のマシンはヴィッツのラリー仕様だが、ギヤボックスはCVTだった。ラリーの歴史に残るエポックメイキングなマシンだった。
ドライバーは現在、GRヤリスでWRC世界ラリー選手権を頑張っている勝田貴元選手。彼のアグレッシブなドライブで数ヵ所のSS(スペシャルステージ=速さを競う)でトップタイムをマークした。2日目は運悪くクラッシュしてリタイアしたが、CVTのポテンシャルの高さにラリー関係者は驚いていた。
CVTは独特なゴム感(ゴムが伸びたような節度感がない加速フィール)があるので、楽しいギヤボックスとは言い難いが、SUBARUはターボ車でもCVTを使っているが、ゴム感はあまり感じない。
つまり、CVTでも楽しい走りを実現することは可能なのだ。
そこで、トヨタは「もっと良いクルマ作り」を目指してネックとなっていたCVTを鍛える作戦を計画した。それがCVTの「新スポーツ制御」で、一部のGRモデルに採用されている。
しかし、さらに高みを目指すために、本格的に2017年からヴィッツCVTでラリーに参戦することになったのである。
●ペースノートを生んだのはSUBARUレオーネだった
最近のラリーはターマックが主体で昼の明るいうちに行われるから、昔のような体力勝負という性格ではなかった。久しぶりのラリーはTRDラリーチャレンジという初中級ラリーに参戦することになった。だが、最近のラリーはペースノートを持って走るので、ナビゲーターの役割は変わってきている。コマ図を読んだり、計算したりする作業は軽減しているのが、ドライバーの目視で確認できないコーナーを先読みするペースノートが重要なのだ。
日本のラリーにペースノートを持ち込んだのは、チームスバル時代に非力なレオーネで参戦していた私たちだった。
![志賀高原ラリー](https://clicccar.com/uploads/2020/10/28/kazuoshimizu_blog_vol7_08-20201028122130-200x151.jpg)
私は21歳の時に、志賀高原ラリーにビギナーズラックで優勝した。数秒の僅差で勝ったのだが、その時の作戦は夏に合宿してラリーステージのコースを徹底的に頭に叩き込んだ。霧や雪で視界が悪くなったら、コースを知っているかどうかがポイント。東京生まれ東京育ちのドライバーが地元の選手と戦うには、この作戦は必死だった。
そんな経験があるので、エンジンが非力な当時のレオーネで戦うにはペースノートが必要だったのだ。ペースノートとCVTを上手く使いこなせるかどうかが勝敗の鍵を握る。
こうして始まったラリー復帰は幸運にも、TRDラリー西日本シリーズでチャンピオンを獲得し、同じ年式のヴィッツMTと対等に戦えるポテンシャルを持つことが証明された。
曲がりにくいと言われるFF車を手なずけるのは大変だけど、もっと曲がりにくかったSUBARUレオーネを経験してきたので、私の辞書には「アンダーステア」は存在しない。左足ブレーキやサイドブレーキを駆使して走るが、基本はサスペンションのセッティングが大切だと思っている。
●そしてヤリスCVTでのラリー挑戦は続く
![ヤリスCVTのロールケージ](https://clicccar.com/uploads/2020/10/28/kazuoshimizu_blog_vol7_14-20201028122425-200x111.jpg)
2020年は待望の新型ヤリスを購入し、ガレージ・オクヤマで全日本ラリー選手権仕様に大改造した。ロールバーはやりすぎたかもしれないが、24点式。
全日本ラリー選手権に参加するつもりだったが、コロナの影響でラリーは中止…。
![2020初ラリーで3位](https://clicccar.com/uploads/2020/10/28/kazuoshimizu_blog_vol7_02-20201028122535-150x200.jpg)
ところが、10月25日に『TRDラリーチャンレジ@裾野』が開催された。テストを兼ねて参加し、新型ヤリスのポテンシャルと課題を見出すことができた。結果は3位だが、満足できる走りができたので、メラメラと心の中で闘争心が湧き出てきた。
次は2020年11月15日、愛知県豊田市で開催されるTRDラリーに参戦する。
![10月25日に『TRDラリーチャンレジ@裾野』](https://clicccar.com/uploads/2020/10/28/kazuoshimizu_blog_vol7_01-20201028122733-200x133.jpg)
![頑固一徹ヤリスCVT](https://clicccar.com/uploads/2020/10/28/kazuoshimizu_blog_vol7_03-20201028123509-200x108.jpg)
(清水 和夫/画像:AUTOSPORT誌・清水和夫コレクション・清水和夫SNS)
【清水 和夫 プロフィール】
1954年生まれ東京出身/武蔵工業大学電子通信工学科卒業
![愛犬COCOちゃんと清水パパ](https://clicccar.com/uploads/2020/10/28/kazuoshimizu_blog_vol7_15-20201028215709-200x139.jpg)
1972年のラリーデビュー以来、国内外の耐久レースに参加する一方、国際自動車ジャーナリストとして活動。自動車の運動理論・安全技術・環境技術などを中心に多方面のメディアで執筆し、TV番組のコメンテーターやシンポジウムのモデレーターとして多数の出演経験を持つ。