■スポーティグレードの「B5 R-DESIGN」の広さや使い勝手、装備をチェック
現行のボルボV60(60シリーズ)は、兄貴分の90シリーズと同様に、「SPA(スケーラブル・プロダクト・アーキテクチャー)」をベースに仕立てられています。電動化も見据えたアーキテクチャーでもあります。なお、ボルボの電動化とは、48Vマイルドハイブリッド、プラグインハイブリッド、100%EV(BEV)などが含まれています。
今回試乗した「V60 B5 R-DESIGN」は、48Vマイルドハイブリッドであるため、トヨタなどのストリングハイブリッドと比べると当然ながらモーターアシストの領域は限られ、エンジンが主体になります。それでもエンジン再始動時の静かさや中低速域のスムーズさなど、モーターによる加勢は感じられますし、何よりエンジンそのものの完成度の高さも魅力です。また、パッケージング(居住性や積載性)に影響を与えないのもユーザーメリットといえるかもしれません。
ここでは、試乗車の「V60 B5 R-DESIGN」の使い勝手についてご紹介します。
ボディサイズは全長4760×全幅1850×全高1435mm、ホイールベースは2870mm。車両重量は1750kgです。搭載されるエンジンは、2.0Lの直列4気筒ターボで、最高出力250PS/5400-5700rpm・最大トルク350Nm/1800-4800rpm。モーターは、10kW/3000rpm・40Nm/2250rpm。
組み合わされるトランスミッションは、8速ATになります。なお、駆動方式はFFで、V60の4WDはプラグインハイブリッド仕様に設定されています。
「B5 R-DESIGN」のフロントシートは、スポーツシートが標準になり、電動ランバーサポートや電動クッションエクステンションなどにより体型や好みに応じて調整が可能。スポーツシートといっても乗降性に影響が出るようなサイドサポートの高さや、強く拘束するような座り心地ではありません。
ワインディングでしっかりと身体を支えながらも適度な心地良さ、そして北欧生まれらしく大きなシートが美点です。身長171cmの筆者には、大きすぎることはないにしても身体のどこかの支えが不足気味に感じることはありませんでした。
一方の後席は、ボルボのデータによると後席の膝前空間はV90に次ぐ広さで、身長171cmの筆者がドライビングポジションを決めた後ろの席には、膝前に拳(こぶし)が縦に2つ半、頭上には1つ強ほどの余裕が残ります。前後席共にSUVのようなヒップポイントやアイポイントの高さはないものの、閉塞感はなく心地よい空間が確保されています。
試乗コースだった箱根のようなステージでは、SUVなどよりも乗員の左右に傾くような動きの量も少なく感じられ、後席もロングドライブでも疲れにくい環境といえそうです。
現行V60のラゲッジスペースは529Lで、ひと回り大きかった旧V70の575Lには及ばないものの、日常使いでは必要十分といえる広さ。キャンプやスポーツなどの趣味を楽しむならオリジナルのルーフボックスなども用意されていますから、荷室スペースの拡張もスマートにできます。
荷室は6:4分割可倒式で、ラゲッジボードを立てることで荷物が動くのを防いだり、そのボードのフックにエコバッグなどが掛けられるお馴染みの仕掛けもあります。テールゲートには、両手が塞がっていても、リヤバンパー下で足を動かすことで開閉可能なハンズフリー・オープニング/クロージング機構も用意されています。
そのほか「R-DESIGN」には、専用品としてエクステリアにはフロントグリルや前後バンパー、グロッシーブラック仕上げサイドウインドーフレーム、ブラックカラー、ドアミラーカバー、デザインアルミホイールなどの専用装備が用意され、スポーティでありながら上質でスタイリッシュなムードが楽しめます。
インテリアには、専用装備として先述した専用スポーツシート (フロントシートの電動バックレスト・サイドサポート、ベンチレーション機能、マッサージ機能は非装備) 、メタルメッシュアルミニウム・パネル、本革/シルクメタルのスポーツステアリングホイール、スポーツ・ペダル、専用本革巻シフトノブ、専用フロアマット、チャコールカラーのルーフライニングが備わります。
なお、試乗車のボディカラーは「フュージョンレッドメタリック(9万2000円)」で、21万円の「チルトアップ機構付電動パノラマガラスサンルーフ」、11万円の5ダブルスポーク(ダイヤモンドカット/マットブラック)アルミホイール(8.0J×19)、9万円の「クライメートパッケージ」などのオプションが用意されています。
「V60 B5 R-DESIGN」の車両本体価格は624万円。試乗車はオプション込みで728万6650円です。
2020年8月の日本の販売データでは、XC40、XC60に次ぐ売れ筋モデルになっているV60。
日本でも比較的取り回ししやすいサイズでありながら、広いキャビンとラゲッジスペースも魅力で、ステーションワゴンの美点が感じられるモデルになっています。
(文:塚田 勝弘/写真:井上 誠)