目次
●フォルクスワーゲンらしさが随所に
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■先進性はバツグンだが、ゴルフに対しては質感が劣る
■操作のしやすい8インチナビ
■フロントシートの座り心地は硬めだが、疲れにくい形状
■実用性は高い、荷室エリア
■まとめ
■先進性はバツグンだが、ゴルフに対しては質感が劣る
運転席に座り前方を見ると視界が開けており、左右の死角も少ないので運転時の見切りがよい。また、車幅1825mmと広いものの大型ナビモニターのような余計な突起物がダッシュボード上にないので、視界に入りこまず運転のしにくさは感じない。
視線を落とすと、赤いステッチの入ったスポーツタイプのステアリングホイールと、その奥にナビゲーションが表示されたデジタルメーターがある。
タコメーターやスピードメーターは表示を切り替えれば小さくができ、好みの表示方法を探すこともできる。いろいろ試したが、やはりタコメーターとスピードメーターのクラシックな組み合わせがしっくりとくるのは、筆者のなかの古い感覚が抜けきらないからだろう。
また、シフトノブカバーやファブリックのシートにも赤いステッチが入っており、ブラックとグレーとレッドのコンビネーションからはフォルクスワーゲンらしい統一感が感じられる。
ただし、T-Rocのインテリアの質感は、ダッシュボードやドアインナーパネルなどハードなプラスチック素材が多用されており、期待していたほど高くはない。ゴルフ7のようなインテリアの雰囲気を期待したが、どちらかというとポロのようなエントリープレミアムに近い質感だ。
光沢のあるダッシュボードへの張り物だが、写真のダークグレーはTDI Sport専用色で、このほかにもカラー設定はあるがグレード指定となる(TDI Style Design Packageにするとブラック、イエロー、ブルーが選べる)。
T-Rocのように、お洒落なエクステリアを求めるユーザーには、組み合わせを自由に選ばせてほしいところだ。
■操作のしやすい8インチナビ
インパネの上段にレイアウトされている8インチナビゲーション「Discover Pro」は、ハンドルを握る左手から近い位置にあるので、タッチ操作がやりやすい。手を近づけると「フッ」とモニターの下側に、操作スイッチの表示が現れる。ナビ操作の使い勝手は癖がなくて分かりやすく、直感的な操作で設定ができる。
また、連動したナビ画面が、メーターディスプレイにもノースアップで表示されるため、この方が明らかに見やすい。
他社車メーカーのオプションだと、25万円以上はするナビゲーションシステムだろうが、T-Rocではこちらも標準搭載となるのはありがたい。また、温度調節機能がきちんとボタンスイッチで残されているのも重要なポイントだ。
細かいところだが、アクセルペダルの右側に、右足の置き場所が設定されているのも良いところだ。
ACCなどを使うシーンが当たり前になった今、左足のフットレストと線対象の位置に、右足の置台があることで両足を突っ張ることができ、腰回りへの負担が軽減できる。
また身体がねじれることもなく、長距離運転時の疲労が圧倒的に減るように思う。
これはT-Rocに限らず、ポロやゴルフ、パサートにも設定されている。何度か国産車メーカーのエンジニアへ「設定はできないのか?」と聞いたことがあるが、効果は良いと思うが設定していいのか、迷うところだと、いずれも口ごもる。
本当に良いと思うならば、他メーカーが採用する良いところは素直に学んでいただきたい。筆者的には、この右足置き場は「マストアイテム」だ。
■フロントシートの座り心地は硬めだが、疲れにくい形状
赤いステッチの入ったフロントシートはスポーティな雰囲気を出してはいるが、サポート性や座り心地などスポーツ走行も可能なシェイプではなく、あくまで普通のファブリックシートだ。
尻下のクッションは固めだが、おさまりが良いので長い時間座っていても、疲れにくい。左右の足のフットレストとセットで使えば、何時間でも運転できそうな雰囲気だ。
後席シートは、座面もシートバックも硬めで、座り心地は快適とはいえないシートだ。だが、後席からの視界はなかなか良い。
後席左右のウィンドウ面積が広く、また前方向も比較的開いており、明るくて開放的だ。
後席シートは、背もたれを倒す関係で、シートバック側がフラットになっているが、身体が左右に振られるようなことがあってもファブリック素材が引っかかるので、身体が触れ回ることもなく良い。革製のシート素材だと、こうはいかないだろう。
■実用性は高い、荷室エリア
後席シートバックは4:6可倒式だ。後席のセンター部分は開くので、4人乗車で、乗員の間に長い荷物を載せるといった使い方もできる。
カーゴエリアはクルマの見た目よりも広く感じる。リアゲートの傾斜がきついので、そこまでたくさん載せられないであろうが、デッキボードを使いフロアがフラットになるので、荷物の乗せ降ろしは楽だ。
ちなみに、ラゲッジボードの下にもスペースがある。深めの2段底にできるので、より荷物を積み込みたい場合には、このスタイルで使ってもいいだろう。
■まとめ
繰り返しになるが、運転者の右足の置き場所は、ACCを搭載する車両や、自動運転のクルマにも設定するべきだと考える。
とっさの時に、アクセルペダルと踏み間違える可能性や、オルガン式にすればよい、という反対派の方もいるが、あるのとないのとでは、長距離運転時の疲労がかなり異なる。
何年も前からできているのがこのフォルクスワーゲンであり、運転者へのこうした気配りは、他の自動車メーカーのエンジニアにも、ぜひマネしていただきたいポイントだ。
(文:自動車ジャーナリスト吉川賢一/写真:エムスリープロダクション鈴木祐子)
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