■車両本体価格450万円〜500万円に迫る「Honda e」の走りは?
CEV補助金を含めても400万円を超える、小さな高級車であるHonda eは、メインになるはずの街中での走りはEVらしい利点がいくつも挙げられます。
今回試乗したのは「Advance」で、装着タイヤはミシュランの「パイロットスポーツ4」。フロントが205/45R17 88Y、リヤが225/45R17 94Yとなっています。空気圧は前後共に230kPa(2.3kgf/cm2)。
ストップ&ゴーの多い街中では、デフォルトの走行モードである「NORMAL」モードでも滑らかで力強い加速感が得られます。50〜60km/hまで加速して減速、停止するというシークエンスでは、NORMALモードよりもさらにトルク特性を絞った「ECON」モードのような省電費モードがあってもいいのかもしれません。
それほどEVらしい、走り出しからのトルク特性が得られます。
センターコンソールの「シングルペダルコントロール」をオンにするとクリープ現象がなくなり、減速時はアクセル操作のみで停止までできます。さらに、停止後にブレーキペダルから足を離しても自動でブレーキがホールドされ、慣れるとアクセルのシングルペダルのみで操作できそうです。
減速度はステアリングのパドルシフトである減速セレクターで調整可能で、通常は4段階(最大減速約0.1G)、「シングルペダルコントロール」をオンにすれば、3段階(最大減速0.18G)の設定が可能。
タウンユースでは静粛性の高さも印象的。モーターがリヤに配置されることもあり、EVやハイブリッド、プラグインハイブリッドなどでお馴染みのヒューンという音が遠くの方で聞こえるかな? という程度。
従来型のドアミラーがないため、空気抵抗を抑制するだけでなく、風切り音がかなり低く感じられます。
高速道路にシーンを移しても流れに乗って走る分には、「NORMAL」モードのままで十分。「SPORT」モードにすれば合流時や加速時でも流れをリードできる、素早いレスポンスが得られます。
一方で、街中での速度域ではあまり目立たなかったロードノイズが大きく感じられるシーンもありました。とくに後席は、リヤタイヤハウスからの侵入や音が少し大きめ。
試乗車の「Advance」は、ミシュランの「パイロットスポーツ4」ということもあってか、乗り心地は引き締まっていて、とくに後席だと後輪由来の振動が少し気になります。全長3895×全幅1750×全高1510mm、2530mmという短めのホイールベースを考えると、十分に納得できる範囲ですし、フロントシートはシート自体の減衰も利いていて、後席よりも高い快適性が確保されています。
床下に駆動用バッテリーなどからなるIPUを積むHonda e。EVらしい重心の低い動きで、ノーズも軽く、ハンドリングはホンダ車らしく軽快感があります。さらに4.3mという最小回転半径は、シティコミューターの中でも群を抜いて小回りが利く印象。
ちなみにパリの街を小気味よく走るルノー トゥインゴと同値(あちらもRR)です。
交差点などでUターンをする際、通常は2車線が必要な場所でもHonda eなら1車線あれば回転できてしまいます。初代スマート・フォーツーの最小回転半径3.3m、同じく2人乗りだったスズキ・ツインの最小回転半径3.6mにはおよびませんが、大人4人が乗れるシティコミューターでは、驚異的な小回り性能が確保されています。
(文/塚田勝弘 写真/井上 誠)