ゴールド免許の更新講習がオンラインで可能に。課題は受講者本人確認

運転免許更新手続きのオンライン化が数年後に実現する予定です。優良運転者にとって、更新手続き負担はますます軽くなりそうです。

警察庁交通局はゴールド免許所持者を対象に、希望者が受講しなければならない更新時講習をオンライン化することを明らかにしました。事務手続き前にスマホやパソコンを使ってオンラインで講習ができるように、今後2年間をめどに全国展開の条件を整えていきます。

■来年秋頃までにプログラム作成

優良運転者の更新時講習のオンライン化に着手した警察庁
優良運転者の更新時講習のオンライン化に着手した警察庁

免許更新時の講習は、希望者が運転免許試験場や警察署を訪問し、受講する必要があります。オンラインが実現すると、講習内容を表示できる端末があれば場所を選ばず、どこでも受講できるようになります。

警察庁は2021年秋頃までにオンライン講習に必要なプログラムを開発し、2022年にかけて全国の都道府県警察のうちの1か所で1年間のモデル事業を実施します。標準的なオンライン更新講習のあり方を策定し、全国の警察本部が採用できる手順を整える予定です。

各地の警察がオンライン講習に踏み切るタイミングは都道府県の財政状況で異なりますが、2023年3月までにはどの都道府県でもオンライン講習が実施できる環境になります。

●警察では新旧の免許を取り換えるだけに

オンライン化に際しては「ながら見」などへの対策が必要となる

オンライン講習が実現すると、希望者は好きなタイミングで更新時講習を受けることができます。現在の優良運転者の更新時講習は30分です。オンライン化しても、この時間は短縮されません。

新旧の免許証を切り替えるための写真撮影や受講後に運転免許試験場や警察署を訪れることは必要ですが、講習後に一斉に免許証を受け取ることが避けられるので、今以上に手続き時間が短縮されることが期待されます。

一方、オンラインに踏み切る警察としては心配もあります。受講者が免許証の本人かどうか。端末を使った講習の場合、いわゆる“ながら見”のような状態にならないか。ということが大きな課題です。

オンライン化を推進する運転免許課は、こう話します。

「受講者と免許証本人であることが一致するように、識別番号を打ち込んでログインしてもらうなどの仕組みを作ること。漫然と講習が終わらないように、区切りごとにQ&Aを入れてクリアしないと次に進めないようにして、最初から最後まできちんと見てもらうことを考えたい」

●交通行政にとっても事務負担の軽減に

現状で行っている受講者の本人確認は、職員や警察官がマンパワーで行っています。更新手続きを担う警察にとっても、大幅に事務負担を減らすことができます。講習の実施時間を知らせるなどの案内も不要になります。

ただ、運転免許の保有者は全国で約8200万人。運転可能な年齢層の約9割が持っています。その中でオンライン講習可能な優良運転者は約6割を占めます。昨年は約908万人が受講しました。

モデル事業の初期段階では、実際に講習を受けた場合とオンラインの場合で、更新手続きの窓口が変わる可能性はあります。

「仕様は見えてきてはいる。実際に支障なく運用できるかどうかはわからないが、新型コロナの感染拡大もあり、デジタル化は時代の要請。免許を持つ人全体に影響を与える手続きなのでまちがいなく着実に進めたい」(同前)

菅政権の掲げる「行政のデジタル化」。免許制度で実感できる日が待ち望まれます。

(文・写真 中島みなみ)