■CX-3が急激に売り上げを伸ばしたのは廉価グレードの設定か?
先日発表された8月の新車登録台数。その月に登録された台数(軽自動車を除く)をカウントしたものです。
1位はトヨタ「ヤリス」で1万1856台。2位はトヨタ「カローラ」で8751台、そして3位はホンダ「フィット」で7158台と続きます。このあたりは想定の範囲内といった感じですが、興味深いのは4位と5位。
4位はトヨタ「アルファード」で7103台。今年3月以降は対前年同月比で売り上げが伸びていて、特に本格的にコロナ禍の影響を受けているはずの6月以降の前年比をみると、6月が134.3%、7月が135.6%、そして8月が153.5%と絶好調です。その反面、兄弟車のヴェルファイアをみると6月が40.4%、7月が38.4%、そして8月が59.4%と勢いを大きく落とす状況。理由はわかりませんが、気になるところですね。
8月のランキングの話に戻ると、5位はトヨタ「ハリアー」で6231台。前年同月比203.6%と絶好調。たしかに実車に触れると、しゃれたデザインや室内の高級感など、売れる理由がよくわかります。大量のバックオーダーを抱えていて、現時点でオーダーすると納車待ちは半年とのこと。こちらは月販目標台数3000台ですから、現在はフル生産と思われます。
注目すべき車種の1台が32位のスズキ「ジムニーワゴン」。軽自動車抜きのカウントなので、「ジムニーシエラ」のことですね。
1381台と台数的には控えめですが、前年同月比298.3%というのは驚くべき数字です。ジムニーシエラも大量のバックオーダーを抱えていることで知られています(そもそも細く長く売り続けることを前提とした計画なので生産キャパが多くない)が、イギリス向け(現地でも熱狂的信者が少なくないようだ)の販売が終了したことで、その生産枠が日本向けに振り分けられたのでしょう。
ちなみに乗用車販売は終了したイギリス向けのジムニーですが、後席を備えない商用車として復活しました。これは排ガス規制の影響を受けた模様。乗用車としては厳しいけれど、商用車扱いならばOKということのようですね。
そして49位のマツダ「ロードスター」も、前年同月比137.8%と健闘(台数は448台)。理由は不明ですが、同様にコロナ禍で販売台数が5割もアップした北米では「旅行にも外食にも行けずお金の使い道がない富裕層が、趣味のクルマを増車」というパターンが多いようで、もしかすると日本もそのパターンかもしれません。
ところで、8月の登録台数を見てもっとも驚いたのは41位のマツダ「CX-3」。台数は968台にすぎませんが、なんと前年同月比467.6%というとんでもない伸びを記録しています。
果たしてこの理由は?
確実な理由が存在します。それは5月に新グレードの「15S」が追加されたこと。これまでCX-3のガソリンエンジン車は2.0Lのみでしたが、189万2000円から選べる1.5Lエンジンを新設定。いわゆる「廉価モデル」が登場したのです。
そのおかげで、CX-3は従来より27万5000円も安く買えるようになり、販売増に直結したというわけです。
このエピソードは「安い仕様を出せば売れる」という結果を如実に示したことになるわけですが、正直なところこの結果を見てマツダが低価格路線に走らなければいいな、とも思ったりします。
(工藤貴宏)