■本格オフローダーでも高い快適性を確保
先代ディフェンダーは、何度か限定車で正規輸入されてことがありますが、2020年に日本にも導入された新型ディフェンダーはカタログモデルとして常時、選択できるようになっています。
試乗する機会が得られたのは、5ドアモデルの「110(ワンテン)」。日本仕様は全長4945×全幅1995×全高1970mmという巨体といえるサイズです。
なお、欧州仕様は全長5018(スペアタイヤ含む)mm、全幅2008(ミラー 格納時)、2105mm(ミラー展開時)、1967mm(ルーフアンテナ装着時) という数値になっていて、とくに全幅のワイド感が郊外でも伝わってきます。
試乗時にコインパーキングから出る際もその大きさに少し驚きました。駐車場の出入り口の幅は、それほど狭くないはずですが、気を使います。高いアイポイントと水平基調のボンネット、スクエアなフォルムにより「コマンドポジション」の恩恵で、見切りはまずまずしやすくなっています。
とはいえ、シートハイトを使い座面を上に上げていってもボンネット先まで完全に見切ることは難しく、狭い道では気を使いそうです。また、フロントシートは、座面の前後長がかなり長め。
身長171cmの筆者は、決して足が長い方ではなく、比較的日本の男性の平均身長に近いはずですが、太もも裏に座面が当たる感覚も慣れが必要でした。できれば、座面の前後長が調整可能だとより適正なドラポジが取れるはず。
日本仕様のパワートレーンは、2.0L直列4気筒ガソリンターボ、8ATの組み合わせになっています。300ps/5500rpm、400Nm/1500-4000rpmというスペックは、2240kgという車両重量に対して余裕綽々というほどではありませんが、市街地のストップ&ゴー、郊外路で流れに乗って走る分には不足はありません。
今回は走行する機会はありませんでしたが、高速巡航でも十分に走ってくれそう。
また、新型からモノコックボディが採用されたディフェンダーは、静粛性の高さと乗り心地の良さも美点です。
グッドイヤーのオフロード用タイヤ(255/60R20)を履いていましたが、オンロード、オフロードを問わず静かですし、3mを超えるロングホイールベースや2.2t超という重さも効いていることもあり、オフロードでも快適な乗り心地が担保されています。モノコックボディになったとはいえ、900mmの最大渡河水深を誇る新型ディフェンダーであることを考えると、この上質さは驚きです。
110にはエアサスペンションが標準装備されていて、路面からの大きな入力も巧みにいなしているのが、オンロードだけでなくオフロード走行からも伝わってきます。
試乗コースには、オフロード走行も用意されていましたが、推奨されたローギヤ設定でなくても容易に走破してしまうはずで、さらにオフロード走行で際立って感じられたのはラインコントロール性の高さ。ディテールに先代のモチーフを残しながらも「まるで違う」ほどモダンになった新型ディフェンダーは、その愛らしい顔つきからは想像できないほどの悪路走破性を備えているのが垣間見えました。
(文/塚田勝弘 写真/井上 誠)