■二輪との車車間通信を実現すれば間違いなくデファクトスタンダードを取れる
2020年9月3日、日本時間では夜になって衝撃的な発表がありました。ホンダとGM(ゼネラルモーターズ)が北米においてプラットフォームやパワートレインの共有化をはじめとして、生産・研究開発・購買といった幅広い領域においてアライアンスに向けて検討を始める覚書を締結したというのです。
2013年から燃料電池領域での共同研究をはじめ、2018年には自動運転領域での共同研究を開始。2020年4月にはGMの開発した電気自動車専用プラットフォームを用いてホンダも電気自動車を販売すると発表するなど着実に関係を深めてきた2社ですから、「北米における」という条件付きながら、ほぼ全面的なアライアンスを組むというのは驚きではありません。
資本提携など、さらに踏み込んだ提携についてはとくにアナウンスされていませんが、GMの発表したニュースリリースでは”MOU”と表記されていることから将来的にはそうした可能性も否定できないほど深い関係になると予想できます。
たしかに北米市場というのはピックアップトラック人気が高いなどグローバル市場と異なる部分もあり、規模は大きいものの実は特別な市場だったりしますが、ホンダとGMのアライアンスにおいて『プラットフォーム共有による規模の拡大及び、パフォーマンスの向上』や『規模と効率を高めるための共同購買』を進めるということは、それがグローバルモデルに影響を及ぼさないはずはありません。
実際、2019年のグローバル販売規模をみると、GMは約770万台で業界4位、ホンダは約520万台で業界7位ですが、両社を合計するとおよそ1200万台となります。
業界トップのフォルクスワーゲン・グループが約1100万台、つづくトヨタ・グループが約1070万台、ルノー日産三菱アライアンスが約1000万台といった規模なので、もしGMとホンダが資本提携まで踏み込んだアライアンスを組めば、これまでのトップ3を圧倒する巨大アライアンスの誕生につながるというわけです。
ちなみに、ステランティスという名前でアライアンスを進めていくことが発表されたPSAとFCAの合計は800万台規模ですから、GMとホンダが本格的に手を組んだときの規模感がどれほどのものか理解できるでしょう。
さらに、今回の北米におけるアライアンスでは、車車間通信などのコネクテッドサービス分野における協力もうたわれています。自動運転においてV2Xと呼ばれる車車間通信、路車間通信は欠かせない技術ですが、グローバル販売で1200万台規模ですからその手法がデファクトスタンダードになるだけの規模感です。
さらに車車間通信を二輪まで拡大するとすれば、言わずと知れた二輪トップシェアのホンダですから、二輪と四輪の両方でトップシェアの規模を生かして完全に自動運転時代のデファクトを取れる可能性大。業界標準を生み出すだけでなく、自動運転インフラを加速させる役割も果たすことさえ期待されるのです。
過去に、GMと資本提携を組んだ、いすゞやスズキの関係性を見る限り、互いをリスペクトして独立性を維持するのがGMのアライアンスに対するスタンスという印象があります。冒頭でも記したように時間をかけて関係を深めてきたことも考え合わせると、ホンダとGMのアライアンスというのはかなりうまくいきそうな予感が大きいです。
(自動車コラムニスト・山本晋也)