■3気筒エンジンのネガ(音・振動面)をほとんど感じさせない高い完成度
ボルボの日本における最販モデルであるXC40に、プラグインハイブリッドの「XC40 Recharge Plug-in hybrid T5」が加わりました。電動化(PHEV、バッテリーEV)も見据えて設計されている「CMA(コンパクト・モジュラー・アーキテクチャー)」をベースにした「XC40 Recharge Plug-in hybrid T5 」は「Drive-E」と呼ぶ自社製エンジンで、1.5Lの3気筒を初採用。
エンジンとモーターでフロントを駆動し、リチウムイオンバッテリーはセンタートンネル内に配されています。なお、補機バッテリーがラゲッジフロア下に移動していて、ガソリンエンジン車で可能だったトノボードの床下格納ができなくなっています。
しかし、それ以外は電動化による使い勝手への影響は感じさせず、「60:40」の前後重量配分もガソリンエンジンなどの内燃機関搭載モデルと同等としています。
初採用となる1.5L 3気筒エンジンには、新型で湿式のトランスミッションの7速DCT(7DCT-H)が組み合わされていて、モーターはトランスミッションに直接マウントされます。エンジンの最高出力は180PS/5800rpm、最大トルクは265Nm/1500-3000rpm。モーターは、60kW/160Nmというスペック。燃費は、WLTCモードで14.0km/L。
デュアルクラッチの7速DCTは、奇数ギヤと偶数ギヤの動力経路が独立した構造になっていて、エンジン駆動モードとモーター駆動モードを両立するのが特徴です。なお、回生ブレーキを強くさせるのは「B」レンジになり、回生レベルセレクター(回生用ステアリングシフト)は用意されません。トランスミッションのマニュアルモードは、エンジンに連動するマニュアルシフトモード(シフトアップ、ダウン)ということになります。
軽い操作感が特徴の「シフトバイワイヤ」化されたシフトを「D」レンジに入れて、スタートさせると、極低速域でも3気筒らしい音・振動は伝わらず、静粛性の高さが印象的です。首都高速への合流時や加速時も音・振動面での3気筒のネガはほとんど伝わってきません。
また、モーターアシストによる出だしの良さも印象的で、モーター走行を最優先させる「Pure mode」にすると、街中では静かでスムーズな走りが享受できます。「Power mode」にすると、エンジンとモーターが常時稼働し、鋭い発進、加速が味わえ、かなりスポーティな走りを披露。
最もバランスがいいのが「Hybrid mode」で、エンジン(システム)をオフにして再度オンにすると、同モードになります(デフォルトのモード)。
XC40は、ボルボのSUVでは最小サイズになります。それでも電動化もあって静粛性の高さ、ドシッとした乗り味は、エントリーSUVという雰囲気ではなく、高級SUVそのものといえる仕上がりになっています。
電動化車両らしく、床下に重いバッテリーを積むため中・低速域を中心に揺すぶられるような乗り心地になります。また、レーンチェンジなどでも多少の重さを感じさせるものの、価格にふさわしい高級感は十分に伝わってきます。
今回の試乗車は2020年モデルの「XC40 Twin Engine T5 Inscription」でしたが、販売される車両は「XC40 Recharge Plug-in hybrid T5 Inscription」になります。これにより、Cピラーやテールゲートなどエンブレムやリヤバンパーの形状、インテグレーテッド・デュアルテールパイプが非設定になるなど、一部のディテールが異なっています。
「XC40 Recharge Plug-in hybrid T5 Inscription」の価格は、649万円ですが、エコカー減税・環境性能割等で24万1000円(概算)と20万円CEV補助金により、604万9000円まで下がる見込みになっています。
(文/塚田勝弘 写真/井上 誠)