■スポーツ路線だけでなく、全体にクオリティを上げたという自負が「H」という名称に込められている
SUBARUが日本のユーザーのために、レガシィからの伝統であるツーリングワゴンのファンのために生み出したモデルが「レヴォーグ」。そのフルモデルチェンジが近づいています。
ターボエンジンとAWDを組み合わせたパワートレインによるグランドツーリング性能は、レガシィツーリングワゴン”GT”からの伝統。ですから、レヴォーグも初代からGTというグレード名を基本としていました。
それは新型レヴォーグでも変わりません。予想価格310万円程度(消費税込み)のエントリーグレードのグレード名は「GT」、その上に位置づけられているのが、18インチアルミホイールやハンズフリーオープンパワーリヤゲートなどを装備する「GT-H」で予想価格は消費税込み330万円程度。
4つのドライブモードセレクトや専用バンパーなどでスポーツ度を高めたのが「STI Sport」で、こちらは消費税込みで370万円前後の価格が予想されています。
走りの基本性能で差別化せず、装備やセッティングによって違いを表現するというグレード構成は、従来型のレヴォーグと変わりません。ただし大きく変わった点があります。それは中間グレードの名前です。従来モデルでは「GT-S」となっていましたが、新型レヴォーグでは「GT-H」となっています。
「GT-S」と「GT-H」、なぜ名前が変わったのでしょうか。
そもそも「GT-S」の「S」というのはスポーティという意味です。レガシィツーリングワゴンからの伝統でもあるビルシュタイン製ダンパーを採用するなど走りの面でグレードアップしていることを、「S」というアルファベットに込めたネーミングです。
一方、新型レヴォーグの「GT-H」というグレード名に使われているアルファベット「H」は「High」に由来するもので、走りだけでなく全体の質を上げていることを意味しているのだといいます。
たしかにGTグレードに対して異なる部分、たとえばブルーステッチの入ったトリコット&ファブリックのシートやアンビエント照明、運転席10WAY、助手席8WAYの電動パワーシートといった装備内容をみると、グランドツーリングカーとしてハイレベルな仕上がりになっていると感じます。
もちろん、走りにおいてもGTグレードが215/50R17サイズのタイヤなのに対して、GT-Hは225/45R18を履いていますから、そこでのアドバンテージが生まれていることも間違いありませんが、走りだけでなく全体として高級になったグレードがGT-HであるというのがSUBARUの主張です。
新型レヴォーグにおいて、シンメトリカルAWDやボクサーターボエンジンがイメージさせるスポーツ性だけでなく、さらなる高みを目指し、そこにたどり着いたという開発者の自負を、この新しいグレード名の付け方に感じます。
3D高精度地図を利用して渋滞時にはハンズオフ(手放し)運転も可能な「アイサイトX」を新設定したこと、スバル伝統のボクサー(水平対向)エンジンを完全新設計としたこと、大画面のセンターインフォメーションディスプレイを採用した先進性などなど、新型レヴォーグの進化については、ひとつの記事で書ききれないほど多岐にわたっています。
また、試乗すると実感するのは静粛性が高まっていることで、このあたりもスポーツ性だけでなく高級を感じさせる仕上がりに効いているのでしょう。グリップ断面形状から見直されたステアリングホイールのグリップ感、表皮のしっとりとした感触も高級感につながっています。
つまり、走りだけでなく、すべての要素においてハイレベルになっているのです。今回「GT-H」という新しいグレード名が採用されたことは、単なるアルファベットの変更という話ではなく、新型レヴォーグの進化スタンスそのものを象徴した変更点といえるかもしれません。
(山本晋也)