4ストロークと2ストロークとは?混合気を吸い込んでから排出するまでの行程の違い【自動車用語辞典:エンジンサイクル編】

■2ストロークが燃費と排ガス性能で劣るのは、ガス交換の効率の悪さに起因

●2000年以降の排ガスと燃費の規制に対応できるのは、効率に優れる4ストローク

4ストロークエンジンが、(吸気)-(圧縮)-(燃焼)-(排気)の4行程をエンジン2回転で行うのに対して、2ストロークエンジンは(吸気/圧縮)-(燃焼/排気/掃気)の2行程をエンジン1回転で行います。

自動車用として2サイクルエンジンは市場から消え去りましたが、両者の行程の違いと2ストロークエンジンの課題について、解説していきます。

●4ストロークと2ストロークの根本的な違いは

4ストロークエンジンでは、(吸気)-(圧縮)-(燃焼)-(排気)の4行程をエンジン2回転で行います。すなわち、エンジン2回転で1回だけ燃焼してトルクを発生します。

一方の2ストロークエンジンは、(吸気/圧縮)-(燃焼/排気/掃気)の2行程をエンジン1回転で行います。すなわち、エンジン1回転で1回燃焼してトルクを発生します。

両者の詳細な行程については後述しますが、2ストロークエンジンは次のような特長があります。

・圧力の高い吸気で排気ガスを押し出しながら、新気を吸入する「掃気行程」が存在

・ピストンが上死点に到達するたびに爆発するために、4ストロークエンジンの2倍近いトルクが発生

・動弁機構を持たないので部品点数が少なく、シンプルな構造で小型軽量

●4ストロークエンジンの基本サイクル

4ストロークエンジンは、(吸気)-(圧縮)-(燃焼)-(排気)の4つの行程で構成されています。この4行程でエンジンは2回転して、それを連続的に繰り返すことによって回転を持続します。

・吸気行程
ピストンが下降し始める上死点(ピストンの最上点)直前に吸気弁を開いて、シリンダー内に空気または混合気を吸い込みます。

・圧縮行程
ピストンが上昇することによって、吸入した空気または混合気を圧縮します。

・燃焼行程
圧縮した混合気を点火プラグの火花で着火させ、燃焼してピストンを押し下げます。

・排気行程
ピストンが上昇し始める下死点(ピストンの最下点)より少し前に排気弁を開いて、燃焼ガスを排出します。

●2ストロークエンジンの基本サイクル

2ストロークエンジンは、(吸気/圧縮)-(燃焼/排気/掃気)の2行程をエンジン1回転で行います。この2行程でエンジンは1回転して、それを連続的に繰り返すことによって回転を持続します。

・(吸気/圧縮)行程
ピストンが上昇して混合気を圧縮し、同時に吸気口を通してクランクケース内に吸気が取り込まれます。

・(燃焼/排気/掃気)行程
上死点付近で圧縮混合気に点火されると燃焼してピストンが下降し、排気口から排ガスが排出されます。さらにピストンが下降すると、クランクケース内に吸入されていた新気が掃気口を通して燃焼室に入り込み、残留した排気ガスを掃気します。

4ストロークと2ストローク
4ストロークと2ストローク

●2ストロークエンジンはなぜ消えた?

4ストロークエンジンに対して、小型軽量で2倍近いトルクが発生するメリットはあるものの、機構的に混合気と排気ガスが混じり合うため燃焼が不安定になります。何よりも問題なのは、混合気が排気口から抜けてしまうので燃費と排気ガス特性が良くありません。

1970年代まで自動車用にも採用されていましたが、排ガス規制強化やユーザーの燃費志向によって姿を消しました。


2ストロークエンジンの高トルク特性は魅力的ですが、1980年代以降の排ガス規制に対応できなくなり、クルマ用としては完全に消え去り、またバイク用としても2008年以降は国内では生産されていません。

汎用エンジン、船舶用大型ディーゼル用としてはまだ残っていますが、同様の理由から少しずつ姿を消しつつあるのが現状です。

(Mr.ソラン)

この記事の著者

Mr. ソラン 近影

Mr. ソラン

某自動車メーカーで30年以上、自動車の研究開発に携わってきた経験を持ち、古い技術から最新の技術までをやさしく解説することをモットーに執筆中。もともとはエンジン屋で、失敗や挫折を繰り返しながら、さまざまなエンジンの開発にチャレンジしてきました。
EVや燃料電池の開発が加速する一方で、内燃機関の熱効率はどこまで上げられるのか、まだまだ頑張れるはず、と考えて日々精進しています。夢は、好きな車で、大好きなワンコと一緒に、日本中の世界遺産を見て回ることです。
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