グリーンスローモビリティとは?車速20km/h以下で走る4人乗り以上の低速電動車【自動車用語辞典:次世代モビリティ編】

■地域交通の充実と温暖化ガスCO2の低減を同時に解決

●高齢者や地域住民、観光客の足として、全国特定地域で実証調査を実施中

電気自動車(EV)とCASE(コネクテッド、自動運転、シェアリング/サービス、電動化)を活用した地域交通のモビリティとして、グリーンスローモビリティ(車速20km/h以下)と超小型モビリティ(車速80km/h以下)があります。

地域が抱える交通に関する課題と温暖化ガスCO2抑制を同時に解決するグリーンスローモビリティについて、解説していきます。

●グリーンスローモビリティとは

グリーンスローモビリティとは、電動で車速20km/h以下で公道を走行する4人乗り以上のパブリックモビリティのことです。車両サイズに応じて、軽自動車の4人乗りゴルフカートタイプから、乗員7~10人程度の小型自動車と16人乗員できる普通自動車の低速バスタイプがあります。

車両は一台一台、新規の検査を受ける必要があり、通常の乗用車と同様に自動車税などの納付や車検が必要です。

ゴルフカートタイプは、乗車定員に応じて軽自動車や小型自動車のナンバープレートが取得できます。低速バスタイプは、車両サイズなどに応じて小型自動車や普通自動車のナンバープレートが取得できます。

グリーンスローモビリティ
グリーンスローモビリティ

●グリーンスローモビリティの5つの特長

グリーンスローモビリティには、5つの特長があります。

・Green

EVなので温暖化ガスCO2を排出しません。また家庭用電源で充電できるので、ガソリンスタンドの少ない地域でも対応でき、しかも経済的です。

・Slow

最高速度が20km/hと低いので、一般道路や遠方への走行には不向きです。交通量が少なく、信号の多い中心市街地など、速度が出せない道路の走行に向いています。また、低速走行なので、観光地での使用に適しています。

・Safety

低速なので、高齢者でも安全で運転しやすいモビリティです。

・Small

小型なので、従来のコミュニティバスでは運行できないような道路での地域コミュニティ、乗用車が入れない道路に観光客を連れていくモビリティなどで活用できます。

・Open

窓ガラスがないため開放感があり、乗って楽しい乗り物です。

以上のように、どこでも自由に乗り入れて高齢者でも扱いやすい実用的な利便性と、乗って楽しいモビリティとして、観光資源としての役割も期待できます。

●グリーンスローモビリティの活用例

グリーンスローモビリティは、地域住民の足としての活用、観光客向けの新しいモビリティとしての活用、ちょっとした短距離の移動/輸送として活用など、これまでのモビリティでは十分対応できなかった地域の課題を解決するような用途に活用できます。

・地域住民の足としての活用

道幅が狭く、従来のクルマでは入れなかった地域での活用、高齢化が進む地域で高齢者が運転して高齢者を運ぶ、あるいは高齢者のために日用品を輸送するモビリティとしての活用、既存のバスからの転換

・観光客向けの新たなモビリティとしての活用

ドライバーがガイドとなって自由に観光地を案内、プチ定期観光バス、自家用車を駐車場に駐車して乗り換えて観光地などを周遊するパークアンドライドとして活用、パレードのようなイベントでの活用

・ちょっとした移動/輸送としての活用

歩くには長いがバスを使うほどでもない短距離の地点間移動、例えば駅からイベント会場、施設間移動、駐車場から施設までなど短距離移動用として活用


グリーンスローモビリティは、地球温暖化の抑制や高齢化地域交通の確保、観光振興など日本の地域社会が抱える課題を解決できる新しいモビリティとして注目されています。

すでに、バスが運行していない高齢化の住宅地や道路環境が良くない観光地、公共交通機関がない離島、観光客向けの周遊バスを使っている中心市街地などで運行を始めています。

(Mr.ソラン)

この記事の著者

Mr. ソラン 近影

Mr. ソラン

某自動車メーカーで30年以上、自動車の研究開発に携わってきた経験を持ち、古い技術から最新の技術までをやさしく解説することをモットーに執筆中。もともとはエンジン屋で、失敗や挫折を繰り返しながら、さまざまなエンジンの開発にチャレンジしてきました。
EVや燃料電池の開発が加速する一方で、内燃機関の熱効率はどこまで上げられるのか、まだまだ頑張れるはず、と考えて日々精進しています。夢は、好きな車で、大好きなワンコと一緒に、日本中の世界遺産を見て回ることです。
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