軽自動車に最適な軽量コンパクトな2ストロークで鈴木自動車は排ガス規制を乗り越えられるか?【スズキ100年史・第16回・第4章 その2】

2ストロークエンジンには、構造が簡単で軽量コンパクトという大きなメリットがあり、古くからバイクや軽自動車で採用されていました。しかし1970年代に入って排ガス規制が強化されると、2ストロークエンジンでは規制対応するのが難しいという課題に直面しました。

1967(昭和42)年、ホンダは「N360」でいち早く4ストロークエンジンを採用して大ヒットしました。多くの軽自動車メーカーが4ストロークエンジンに置き換える中、鈴木自動車は実績のある2ストロークエンジンにこだわり、排ガス規制を乗り切ることを選択したのでした。

第4章 排ガス規制と2ストロークエンジンの危機

その2.排ガス規制と2ストロークエンジン

●2ストロークエンジンとは

4ストロークエンジンが、吸気-圧縮-燃焼-排気の4行程をエンジン2回転(ピストン2往復)で行うのに対して、2ストロークエンジンは下記のように「吸気/圧縮」-「燃焼/排気/掃気」の2行程をエンジン1回転(ピストン1往復)で行います。

・ピストン上昇時:吸気/圧縮行程

クランク室に混合気を吸入し、同時にシリンダー内の混合気を圧縮

・ピストン下降時:燃焼/排気/掃気行程

圧縮された混合気は点火プラグで着火燃焼し、ピストンの下降とともに燃焼ガスを排気ポートから排出。さらにピストンが下降すると掃気ポートが開き、加圧された混合気が燃焼室内に吸入される掃気によって、シリンダー内の残留燃焼ガスを排気ポートから排出

4ストロークエンジンと2ストロークエンジンの作動原理
4ストロークエンジンと2ストロークエンジンの作動原理

●空冷2ストロークエンジンは何が優れているのか

2ストロークエンジンの最大のメリットは、吸排気弁系のような複雑な機構がなく、構造が簡単で部品点数が少なく、軽量コンパクトなことです。また、4ストロークエンジンは2回転に1回、2ストロークエンジンの場合は1回転に1回燃焼行程があるので、理論上は4ストロークの2倍のトルクが得られます。

また、空冷システムであれば燃焼室やシリンダーを冷却するためのウォータージャケット(水の通路のこと)が不要なので、さらに小型軽量化が可能です。空冷とは、バイクやクルマが走行するときに得られる走行風を利用してエンジンを冷却するシステムです。

エンジンの搭載スペースが限られるバイクや軽自動車にとって、軽量コンパクトは大きなメリットなので、古くから空冷の2ストロークエンジンが採用されていたのです。

●空冷2ストロークエンジンは何が問題なのか

2ストロークエンジンの致命的な問題は、掃気行程で混合気と燃焼ガスが混じり合うために燃焼が不安定になること、さらに混合気が排気ポートから吹き抜けてしまうので、大量のCO とHCが排出されることです。その結果、燃費と排気ガス性能が4ストロークに比べて大きく劣ってしまうのです。

また、空冷エンジンでは、走行風でエンジンを冷却するので水冷エンジンに比べると適正な冷却ができません。そのため、エンジンの温度管理が難しく、排ガス性能が悪化しやすくなり、さらに高速走行となるとエンジンの温度が上がり過ぎるので、オーバーヒートを避けるため出力を抑えなければいけません。

●鈴木自動車の2ストロークエンジンへのこだわり

鈴木自動車は、2輪車で多くの実績を上げ、モータースポーツでも成功を収めたこともあり、2ストロークエンジンに対しては強いこだわりがあったようです。

4ストロークエンジンのホンダN360(1967(昭和42)年に発売)が大ヒットしたときにも、空冷2ストローク3気筒エンジンの「フロンテ360」で、3年後の1970(昭和45)年にはN360を上回る最高出力36PSの「フロンテ71」で対抗しました。

1967ホンダN360
1967ホンダN360
1970フロンテ71
1970フロンテ71

1973(昭和48)年に本格的な排ガス規制が始まると、空冷2ストロークエンジンの燃費や排ガス性能が問題視されるようになり、多くのメーカーは水冷の4ストロークエンジンへの置換えを進めました。しかし、鈴木自動車は2ストロークエンジンで排ガス規制を乗り切る道を選んだのでした。

(文:Mr.ソラン 写真:ホンダ、スズキ)

第17回に続く。


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