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■高齢者などの事故低減に向け、国内4メーカーが販売
近年、社会的な問題になっていることのひとつが、高齢者などによるペダル踏み間違いが原因の事故。そのため各メーカーでは、新しく発売するモデルの多くに自動ブレーキや誤発進時の加速抑制装置などを装備してきています。
一方、それら安全運転支援システムが装備される以前に発売された車種については、ペダル踏み間違いで誤発進や加速をしてしまった場合、クルマ側での対応はできません。
そこで最近注目されているのが、後付けの「ペダル踏み間違い時加速抑制装置」。トヨタやダイハツではいち早く2018年から自社モデル向けに発売を開始していますが、今年に入ってスバルやマツダ、スズキなどが続々と同様の後付け装置を発売しています。
ここでは、近年注目されている後付け「ペダル踏み間違い時加速抑制装置」についてご紹介します。
●スズキやマツダ、スバルが参入
まずスズキは、後付けが可能な急発進等抑制装置「ふみまちがい時加速抑制システム」を、2020年8月21日より発売することを発表しました。
このシステムは、2012年9月から2014年7月に販売したワゴンR FX・FXリミテッドに取り付けができるもの(レーダーブレーキサポート装着車、5MT車、20周年記念車、昇降シート車、スティングレーは対象外)。価格(税込)は6万3800円です。
装置は、前後バンパーに装着する4個(前後各2個)の超音波センサーを、表示機を運転席側インパネ上部に装備しドライバーに警告などを出す表示機から構成されています。
これらにより、まず前方または後方約3m以内で壁などの障害物を検知した時に、表示機が運転者にランプとブザーで注意を喚起。
また、前方または後方の障害物が検知された状態でアクセルペダルを強く踏み込んだ場合には、運転者へランプとブザーで警告するとともにエンジン出力を制御し、加速を抑制します(加速抑制機能が作動中に、アクセルペダルを約5秒以上踏み続けると加速抑制制御が解除され、緩やかに発進)。
さらに、後退時も車速が約5km/hを超えた時に加速を抑制すると共に、表示機がランプととブザーで運転者に危険を知らせます。
マツダが、2020年7月6日に発売した後付けの「ペダル踏み間違い加速抑制装置」も、基本的な機能やシステム構成はスズキが発表したものと同様で、こちらは2007年から2014年に製造したデミオ(AT車とCVT車)と、2005年から2015年に製造したベリーサ(AT車)に取り付けが可能。価格(税込)は6万7100円となっています。
一方、スバルでも、2020年5月29日に、アイサイトおよびスマートアシストが装着されていない車種向けに後付けできる同様のシステムを発売しています。
こちらは2タイプあり、インプレッサ(GP/GJ型)とXV(GP型)向けにスズキやマツダと同じ機能を持つ「ペダル踏み間違い時加速抑制装置」を価格(税込)5万6100円で用意。
一方、軽自動車のルクラ(RF型)、ステラ(RK型)、プレオ(RD型)、プレオ+(RE型)向けには、ダイハツのペダル踏み間違い時加速抑制装置「つくつく防止」をスバル車向けにしたシステムをラインナップ。
こちらの主な機能は、時速約10km以下での前進/後退時に、前後に装着したソナーセンサーで前/後方約3m以内にある壁などの障害物を検知し、アクセルを強く踏み込んでしまった場合、ランプとブザーで警告するとともに、加速を抑制するというもの。他メーカーのシステムと機能的に大差はなく、価格(税込)は3万5200円です。
ちなみに、「つくつく防止」のダイハツ版(元祖)は、より幅広い車種向けになっているのも特徴。
対応車種は以下の8モデルで、価格(税込)は3万4560円です。
【対応車種】
・タント[L375S系](2007年12月〜2013年9月)
・ムーヴ[L175S系](2006年10月〜2010年12月)
・ムーヴ[LA100系](2010年12月〜2012年12月)
・ミラ[L275S系](2006年12月〜2013年2月)
・ミラココア[L675S系](2009年7月〜2018年2月)
・ミライース[LA300系](2011年9月〜2013年8月)
・ムーヴコンテ[L575S系](2008年8月〜2017年1月)
・タントエグゼ[L455S系](2009年12月〜2014年9月)
●トヨタは既存装置の機能を強化
ダイハツと共に、他メーカーに先駆けて後付けの「ペダル踏み間違い時加速抑制装置」を販売しているトヨタでは、7月に「急アクセル時加速抑制」という新機能を追加した新型「踏み間違い加速抑制システムⅡ」を発表しました。
従来のシステムは、前後バンパーに装備した4つのセンサー(前後各2個)が、クルマの前後にある壁やガラスなどの障害物を検知し加速を抑制するというのが主な機能でした。
一方、新型はこれに加え、右折時や一時停止後などドライバーが実際に急加速を必要とする状況を除き、前方に障害物がない場合でもペダルの踏み間違い操作を検知した際に加速を抑制。また後退時には、障害物の有無に関わらず急加速した場合に加速を抑制する機能を追加しています。
トヨタでは、踏み間違い事故のさらなる低減を図るために今回の機能開発を実施。実際の踏み間違い事故発生時にアクセルペダルが全開で踏まれた状況を分析し、その踏まれ方の特徴をコネクティッドカーから得られたビッグデータと照合。その結果、従来の機能に加えて障害物がない場合の加速抑制を追加することにしたといいます。
また、機能強化を図りつつシステム構成を見直すことで、価格(税込)は3万8500円と、従来商品比で1万7600円安の低価格を実現しているのもポイント。国土交通省が2020年4月に創設した、後付障害物検知機能付ペダル踏み間違い急発進抑制装置の性能認定制度に対応(本制度で初の認定を取得)しています。
対応車種は、今のところプリウス(2015年12月〜2020年6月生産の車両でインテリジェントクリアランスソナー非装着車)のみですが、今後はSAI(2009年10月〜2018年2月生産)、クラウン(2008年2月〜2012年12月生産)、マークX(2009年10月〜2016年11月生産)など、順次対応モデルを拡大していく方針です。
ちなみに今回追加された「急アクセル時加速抑制」は、マイナーチェンジを受けたプリウスに採用された新車向け新機能「プラスサポート」にも採用。
こちらは、専用スマートキー「プラスサポート用スマートキー」(販売店装着オプション)でクルマのドアを解錠すると、自動的に「プラスサポート」が作動し、進行方向に障害物がない場合でも、ペダルの踏み間違い操作を検知した際に加速を抑制するなどの機能を装備しています。
対応車種は、こちらも現段階では7月1日発売のプリウスとプリウスPHVのみですが、順次他のインテリジェントクリアランスソナー装着車へ拡大していくことになっています。
今回の発表に際しトヨタは、「自社製品の開発・販売だけでなく、国内の自動車メーカーに幅広く、急アクセル時加速抑制機能の考え方などを共有している」と言及しています。つまり、今後このような障害物がない場合の加速抑制(急アクセル時加速抑制)機能が、他メーカーの新型車や後付け装置に採用される可能性があるということです。
このような動向により、交通事故がさらなる減少傾向となることに期待したいものです。
(文:平塚直樹/写真:トヨタ自動車、マツダ、スバル、ダイハツ工業、スズキ)