■星空が見たい
「次はいつ会えるの? またドライブに行こうよ。」
新型ハリアーでのドライブは、よっぽど楽しかったらしい。帰り道で、彼女は楽しそうに次のデートのプランを立て始めた。
「今回、来られなかったから、次は絶対、海、だね。夜景を見に行くのもいいね。」
彼女の口から次のドライブの目的地が次々と出てくるのは、ハリアーを気に入っていることの何よりの証だろう。
ところで夜景と言えば、ハリアーには大きなガラスルーフがオプション設定されている。固定式だけど、開閉機構を組み込まないことでガラスの横幅が広くしたのが特徴。だから都会のナイトドライブでは頭上の夜景がよく見えるのが、ドライブデートの時にはうれしい。
さらに、そのガラスルーフに組み込まれている凝った仕掛けが面白い。液晶を活用した調光機能で、スイッチを押すだけで瞬時にガラスが透明からすりガラス状(調光状態)へと切り替わるのだ。その仕掛けは音声認識とも連動していて、すりガラス状の時に音声認識で「星空を見せて」といえば、透明になるようなコマンドが隠されている。
■ハリアーのよさ
「そういえば、静かじゃないこのクルマ?」
そんな彼女の気付きは気のせいではなく、事実だ。なぜならハイブリッドカーだからだ。ハイブリッドカーは走行中もエンジンを止めるので、その音がしないことは市街地でこそ、これまでのガソリン車とは次元の異なる静粛性を生み出す。彼女にとってはじめてのハイブリッドカーだから、驚くのも無理はない。
でも、それだけじゃない。新型ハリアーはキャビンを囲むように、そしてエンジンルーム周辺やタイヤの周り、荷室フロアにも吸音材や遮音材を入念に貼るなどの対策をしてクラスを超えた静粛性を作り込んでいる。
たとえば荷室床のボードを跳ね上げると、その裏にまで吸音材が貼ってあることに驚く。そんなクルマはこれまで見た記憶がないが、そこまで徹底した対策が効いているのだ。静かさはかなりのレベルにある。
そのうえ思うのは、乗り心地が抜群にいいことだ。車体の上下動を抑えて乗員が揺さぶられるのを防ぐサスペンションなど、トヨタはここ1年ほどで良好な乗り心地の作り方がさらに巧みになった。
この乗り心地のよさは、彼女もきっと気が付いていることだろう。
エレガントなデザイン。ラグジュアリーなインテリア。そして優れた静粛性と良好な乗り心地によるハイレベルな快適性。こうして新型ハリアーに接していると、トヨタはボクらが「いいクルマ」として感じる心惹かれる要素を巧みに突いてきたなと思う。トヨタ恐るべしだ。
トヨタは昨今、これまでのような八方美人をやめ、「そのクルマを買う人が気にするポイントは伸ばし、そうでない部分は割り切る」というメリハリをつけたクルマ作りへと舵を切った。
たとえば新型ハリアーでいえば前者はデザインや室内の上質感そして快適性、後者は荷室容量(先代や兄弟となるRAV4より狭い)などだ。だけど、それによって個々のクルマの魅力はますます高まったように思えるのは、きっと気のせいではないだろう。
(おしまい)
(文:工藤貴宏/今回の“彼女”:彩川ひなの/ヘア&メイク:宮本博子/写真:ダン・アオキ)