■オーストリアのマグナ・シュタイヤー社とのコラボでEVを製作
SONYが「CES 2020」で注目を集めたEV「VISION-S」の走行デモを本社ビルの敷地内で実施しました。
SONYのモビリティー関連の取り組みを具現化したEV初号車で、同社が誇るセンシング技術を搭載。自動運転にも対応しており、今後さらにSUVなど複数台を開発し、今年度内の公道走行試験を予定しているそうです。
ボディサイズは全長4,895×全幅1,900×全高1,450mmで車重は2,350kg。モーター出力200kW×2(前後)の4WD仕様で最高速度は240km/h。0-100km/h加速は4.8秒と俊足。
それにしても、自動車メーカーではないSONYがどのようにして高性能EVを作り上げたのでしょうか。
同社は本年1月、米ラスベガスで開催された「CES 2020」に同車を出展した際、クラウド技術を活用した車載ソフトウェアの制御により、乗り続けることでAI(人工知能)が学習して進化するセンシングシステムや、高度なカメラ監視システム、直感的に操作できるパノラマスクリーンなどを搭載。
ショー終了後、同車は更なる開発に向け、ラスベガスからオーストリアに輸送されました。そう、SONYはオーストリアのマグナ・シュタイヤー社と協業で「VISION-S」を開発していたのです。
ウィーンに次ぐオーストリア第2の都市、シュタイヤーマルク州の州都グラーツでは自動車産業が盛んで、マグナ・シュタイヤー社はここに存在しています。自動車生産の実績を豊富に持つエンジニアリング会社で、そのルーツは100年以上に遡り、これまでに350万台以上の生産実績が有るそうです。
メルセデス・ベンツ Gクラスなどの生産で知られ、以前には同Eクラス(2&3代目)や初代BMW X3、プジョーRCZなどを生産。最近ではBMW 5シリーズやBMW Z4と、その姉妹車であるトヨタ スープラなども同社のグラーツ工場で生産されています。
車両生産のみならず、システムやエンジニアリングなど、自動車メーカーさながらの開発ノウハウを持っていることでも知られており、近年ではジャガーのEV「I-PACE」の生産も手掛けています。
SONYが自社EVを開発するにあたり、マグナ・シュタイヤー社のこうした実績を踏まえて協業したものと思われますが、現時点でEVの量産計画が無いにもかかわらず、大掛かりな自動車開発を手掛ける背景には、画像センサーや、映画・音楽といったエンターテインメント事業を主力とする同社にとって、「自動運転車」の存在が大きく影響しているようです。
SONYは車載センサーの事業拡大を狙っており、自動運転技術の進展に伴い車載センサーのシェアを高められる可能性があることから、実車を使った開発が不可欠と判断した模様。
そうした背景から、7月に「VISION-S」がマグナ・シュタイヤー社から日本に帰って来るや、早速敷地内を走行する様子の報道陣向け公開に踏み切ったわけです。
日本初公開となる「VISION-S」は4人乗りのセダンで、スマホやカードによる開錠時にフロントエンブレムからドアノブ(自動で突出)に向かって車体をぐるっと包み込むように帯状の白色LEDが点灯。
開錠すると車内には「オーバルコンセプト」を構成するアンビエントランプがほのかに点灯。暗所での鮮映性が高いカメラを使ったサイドミラーや前後左右をモニターできるドライブレコーダー、各シートに内蔵されたスピーカーで360度のあらゆる方向から音楽を聴ける立体音響技術「360リアリティオーディオシステム」により、高音質で映画鑑賞できる機能などが盛り込まれています。
また画像センサーや複数の対象物の距離を測定できるToF(Time of Flight)センサーなど33個のセンサーが搭載されており、従来の車載センサーでは困難だった霧や逆光、夜間の雨中でも周辺環境を把握して安全性を向上させています。
こうしたSONYの動きからは、自動運転で走行する静かなEVの車内でエンターテイメントを大画面・高音質で楽しむ時代がすぐそこまで来ている事を感じさせるとともに、「VISION-S」のようなEVが実力派エンジニアリング会社とのコラボにより、あっさり具現化されてしまうことを考えると、既存自動車メーカーもうかうかしていられないかもしれません。
(Avanti Yasunori・画像/動画:SONY)
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