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■事故件数・死傷事故率に「大きな変化ない」
高速道路の最高速度を定める交通規制基準について、警察庁は今年8月をめどに改正基準を示す予定です。この改正で、日本の高速道路の最高速度は時速100km/hから時速120km/hに引き上げられます。
現在、高速道路の最高速度は100km/hですが、新東名と東北道の一部区間で指定速度を120km/hに引き上げて試行を続けています。
引き上げ区間を担当する静岡県警と岩手県警は22日、120km/h試行1年間の実勢速度や死傷事故の変化を発表しました。
両県警は実勢速度、死傷事故件数や死傷事故率の双方で、110km/h試行時と「大きな変化はなかった」と評価しました。警察庁はこの結果を受けて、高速道路の最高速度そのものを引き上げることができると判断、改正に着手します。
■120km/h走行が可能な道路はどこ?
道路交通法に定められた法定最高速度は100km/hのままです。交通規制基準は通達に基づくもので、最高速度が120km/hに引き上げられても、高速道路のすべての区間が120km/hになるわけではありません。
現状の高速道路は100km/hの一部に、中央道のような80km/hがありました。改正基準が示された以後は、その1つに120km/hの区間ができるイメージです。
関係者によると120km/hが実現する区間の基準には、次のようなものがあります。
・設計速度120kmhで、実勢速度も100km/hを超える交通流であること
・死傷事故率が高くないこと
・距離20km以上連続で、120km/hの引き上げが可能なこと
・最高速度が引き上げられても、道路状況や交通状況が安全で円滑な通行を妨げないこと
これらの条件を満たす区間はそれほど多くはありません。例えば、東名高速などは設計速度の条件が満たされず、基準を満たしません。
一方で、最高速度見直しのきっかけを作った古屋圭司元国家公安委員長は
「設計速度120km/hを超える高速道路で100km/h規制を続けることは、国民の財産を無駄にすることだ」
と、明確な引き上げを求めています。
試行区間は最高速度120km/hの本格運用に移行しますが、全国的には、どの区間が120km/hに変わるのでしょうか。
■4路線5区間が、本格運用のスタート
設計速度が120km/hを超える高速道路は全国で総延長で691kmありますが、すべての区間の最高速度を変えるまでには時間がかかります。
例えば、現状の高速道路には速度標識が1つしかありませんが、120km/hに引き上げられた区間は、最高速度を明示する標識が必要です。これら標識の設置方法も新たな基準で示されることになります。
改正基準が示された後に、どの区間を引き上げるか。最終的には都道府県警察の判断と地方公安委員会の決定が必要となりますが、警察庁によると当面は片側3車線の区間を優先して、道路を管理する高速道路会社の調整が進みそうです。
例えば、試行が実施されている新東名は御殿場JCT~浜松いなさJCTまでの145kmが、今年度中に6車線化(片側3車線)されます。この145kmには試行区間の一部も含まれています。ここは120km引き上げが最も有力視されている区間です。
ほかにも常磐道(柏IC~水戸IC/約70km)、東北道(浦和IC~佐野スマートIC/約53km)、東関東道(千葉北IC~成田IC/約20km)で可能性が検討されています。これらの区間を含めると、4路線5区間で120km/hの本格運用を目指していることになります。
(文・写真 中島みなみ)