1970年代の自動車とは?排ガスや燃費など環境問題に直面【自動車用語辞典:歴史編】

■マスキー法による排ガス規制とオイルショックによるガソリン価格の高騰が直撃

●厳しい排ガス規制の中でCVCCエンジンのホンダシビックや日産スカイラインなど名車が登場

1970年代に入り、クルマは環境問題や省資源問題といった新しい課題に直面することになりました。引き金となったのは、米国のマスキー法による排ガス規制、オイルショック(原油高騰)が引き起こした燃費重視などの社会的、政治的な動きです。

排ガスや燃費が重視され始めた1970年代のクルマと自動車産業について、解説していきます。

●大きな方向転換が求められた1970年代

1960年代には、自動車メーカーはクルマの普及とともに高性能化技術の開発に注力しました。

ところが、1970年米国のマスキー法による排ガス規制の制定、1973年のオイルショックによる原油高騰、1974年の米国の安全基準の強化などクルマへの新たな課題が持ち上がりました。

1970年、米国でマスキー上院議員提案の大気汚染防止法(俗称、マスキー法)による排ガス規制が制定されました。当時の排ガスレベルを1/10まで低減する厳しい排ガス規制でした。

ちなみに、この規制を世界で初めてクリアしたのは、ホンダのCVCCエンジンでした。

ホンダ・シビック
ホンダ・シビック CVCC(写真:本田技研工業)

1973年、第四次中東戦争を機にアラブ産油国が原油の減産と大幅な値上げを行い、世界的な経済不況が起こりました。石油価格の上昇によって、それまでの高出力志向のクルマに代わって燃費の良いコンパクトカーが注目されるようになったのです。

1974年、米国で時速5マイル(8km)の衝突でボディにダメージを与えず、また復元可能なバンパー(通称5マイルバンパー)を装備することが義務付けられました。当初は大型の金属バンパーで重量も重く、排ガス規制と相まって性能低下は避けられませんでした。

また、1972年には、メルセデス・ベンツSが電子制御式ABS(アンチロック・ブレーキシステム)を世界で最初に搭載しました。

●代表的な外国のモデル

1970年4WDのオフロード車ながら、高級車並みの快適性を備えたランドローバー・レンジローバーが新しいジャンルを切り開きました。

1974年、フォルクスワーゲン・ゴルフは、ビートルの後継車として発売されました。

ジウジアーロのデザインで、コンパクトなボディながら大人5人が乗車でき、実用性と経済性を兼ね備えて世界中で人気を博しました。

1978年、ポルシェは911の後継車としてFRクーペ928を発売しました。

V型8気筒エンジンをフロントに搭載し、後輪の「バイザッハアクスル」と呼ばれるサスペンションを採用し、後の4WSやマルチリンクサスペンションに大きな影響を与えました。

●代表的な日本のモデル

1972年、ホンダが世界戦略車として発売したのがシビックです。実用性の高い小型FF車として注目されましたが、人気に火が付いたのは米国の排ガス規制を世界で初めてクリアしたCVCCエンジンを搭載してからです。

1972年の4代目スカイラインは、「ケンとメリーのスカイライン」や「愛のスカイライン」といった広告キャンペーンの人気とともに、スカイラインの人気を不動のものにしました。丸型4灯のテールランプが特長で「ケンメリ」と呼ばれました。

乗用車として日本で初めて4WD車が登場したのは、1970年代です。

1972年、スバル・レオーネのエステートバンに4WDを設定し、1975年にはセダンにも4WDを設定しました。このときの4WDシステムは、レバー操作でFFと4WDを切り替えるパートタイム式でした。

1970年代の主要なモデル
1970年代の主要なモデル

1970年代は、贅沢品の象徴的存在であったクルマが、大きな方向転換を余儀なくされた時代でした。環境問題や省資源問題が大きな社会課題となり、クルマのネガティブな面がクローズアップされました。

ここから、本来のあるべきクルマへの進化が始まったと言えます。

(Mr.ソラン)

この記事の著者

Mr. ソラン 近影

Mr. ソラン

某自動車メーカーで30年以上、自動車の研究開発に携わってきた経験を持ち、古い技術から最新の技術までをやさしく解説することをモットーに執筆中。もともとはエンジン屋で、失敗や挫折を繰り返しながら、さまざまなエンジンの開発にチャレンジしてきました。
EVや燃料電池の開発が加速する一方で、内燃機関の熱効率はどこまで上げられるのか、まだまだ頑張れるはず、と考えて日々精進しています。夢は、好きな車で、大好きなワンコと一緒に、日本中の世界遺産を見て回ることです。
続きを見る
閉じる