銀行、ディーラー、信販会社…どこでローンを組むべき?【クルマとお金:金融知識編】

●ローンといっても会社によって少しずつ違う仕組み、理解していますか?

大きなお金が動くクルマの購入では、現金一括払いと並行してローンでの支払いをしていく人も多いと思います。クルマのローンといっても、取り扱っている会社も様々、商品形態も様々です。

今回は、クルマのローンを取り扱っている自動車ディーラー、銀行、信販会社のどこでローンを組むべきなのか、それぞれの特徴を元銀行員&元自動車ディーラー営業マンが解説していきます。

・自動車ディーラーローンや信販会社の特徴

自動車ディーラーでクルマを購入する際に「お支払いは?」と聞かれ「ローンです」と答えると、ディーラー独自のローンの提案が行われます。「クレジット」という名称で呼ばれることが多く、自動車ディーラー用意しているマイカーローンです。

たとえばトヨタではトヨタファイナンス、日産では日産フィナンシャルサービス、ホンダではホンダファイナンスなど、直系のローン会社を持ちっており、その会社を通してユーザーにお金を貸し出します。

そのほかの中古車販売店などでは、ジャックス、セディナ、オリックスなどの信販会社を通して、お金の貸し出しを行う形になっています。

カーローン
どこでローンを組むか、悩みは尽きません。手続きと、資金使途の広さなど、多様な目線で選択することが大切です。

クルマの購入先と、ローンの手続きを行う場所が一緒になっており、手続きがワンストップで行われるため、ユーザーにとって手続きが簡単に済むのが特徴です。

また、審査申し込みから回答までの時間が非常に早く、その場で30分程度時間があれば審査申し込みから本申し込みまで完結してしまうスピード感が最大の魅力になります。審査に際しても、年収の証明書や通帳の写しなどの書類も必要ないことが多く、銀行系ローンに比べて審査も通りやすいでしょう。

ディーラーローンや信販会社経由ローンでは、車検証上の所有者がローンの完済までは自動車ディーラーや信販会社となり、この状態を所有権留保といいます。

いわゆるクルマが借入金の担保となっている状態です。また、審査が通りやすいというメリットがある一方で、銀行系ローンと比べて、貸出利率が高めに設定されている傾向にあります。実質年率で3%から4%前後です。

手続きが簡単で、その場で終わる手軽さとスピード感がメリットとなり、所有権留保される点と金利が高めになっている点がデメリットといえるでしょう。

・お金の番人、銀行系マイカーローンの特徴

お金に関する相談を一手に引き受けるのが「銀行」で、預貯金から様々なローンまで幅広く取り扱っています。もちろんクルマに関するローンもあり、一般的に「マイカーローン」と呼ばれて商品化されているものです。

自動車ディーラーや信販会社経由のローンよりも貸出利率が低い傾向にあり、実質年利が1%台の後半から2%台の後半の間で、貸付されているケースが多いです。

マイカーローンを使用した際のお金の流れは、銀行からユーザーへお金が振り込まれ、そのお金を購入先のディーラーに支払います。自動車ディーラー側から見るとお金を支払ったのは購入者であるユーザーであることから、車検証上での所有権留保などを行わずに、ローンを組んでいてもクルマの所有者はユーザー自身になるのも、銀行でマイカーローンを借りた際の特徴になります。

銀行
銀行でのマイカーローンは、資金使途が広いのが特徴。ただし、審査はディーラーよりも厳しく、時間もかかります。

資金使途も幅広く、クルマの購入はもちろんオプションの費用、免許取得費用、車検や点検、自分のクルマの修理費用にまで充てられます。クルマに関係する費用を丸ごと借り入れることも可能です。

審査や申し込みに関しては非常に厳格になっており、資金使途をしっかりと調べられ、通帳の写しを提出したり年収を証明する書類を提出したりして、時間と手間がかかります。

インターネットやFAX、電話などで仮審査を申し込み、その後に必要書類を提出しての本審査があり、金銭消費貸借契約書というお金を貸し借りする際に使用する書類に署名捺印を行うなど、複数回銀行とのやり取りや来店手続きを行わなければなりません。手続きが多いのと同時に、審査にかかる時間もある程度の日数がかかります。

銀行系マイカーローンのメリットとしては、金利が低く設定されている点、使途が広い点が挙げられ、デメリットとしては、手続きの回数の多さや審査の長さがが挙げられます。

・実際にどちらを選べばいいのか

ディーラーローンと銀行ローンのどちらを選べばいいのか迷うユーザーは多いと思います。筆者が自動車ディーラー営業マン時代にも、多くのお客様が最後まで支払い方法について悩まれていました。

金利の安い銀行か、手続きがの簡単なディーラーか、決め手になるのは最終的に金利の部分となるケースが多くありましたが、年利1%の違いがどの程度なのかを、しっかり考えておきましょう。

商談デスク
銀行とカーディーラー、単純な金額の差以外にも、時間の差が生まれます。ワンストップで済むものは、そこで済ましてしまうのもいい選択になるでしょう。

300万円のローンを3年で返済するケースで、年利2%と3%の場合の総返済額の差は47,000円程度になります。年間に直すと15,000円程度です。手続きにかかる時間と労力の差を考えると相応の金額差なのではないかと考えられます。支払い金額の面では、間違いなく金利が低いところがお得なりますが、そこに至る時間を含めて費用計算すると、1%程度の金利差ではあまり違いは出ないように感じます。

自動車ディーラーでは、特別金利と言われる特定の支払い方法や特定の車種を購入した際に、金利を引き下げるキャンペーンを行っていることが多く、銀行とディーラーの金利差は、縮まる傾向にもあります。

とにかく、煩わしい手続きはしたくない、ワンストップで終わるならそれでいいという方は、自動車ディーラーローンを選んでみてはいかがでしょうか。

また、手続きに負担を感じない、金利は少しでも安い方が良いという方は銀行系ローンがおすすめです。それぞれの特徴である「時間」と「お金」を天秤にかけて、選択してみるといいでしょう。

・まとめ

マイカーローンの形態も多様化し、わかりにくくなっていますが、総合的なサービスの内容は、大きく違いません。ユーザー側が、最も使いやすく安心できる場所でローンを組むことが、安心のカーライフを送るうえで重要になっていくでしょう。

(文:佐々木 亘)

この記事の著者

佐々木亘 近影

佐々木亘

大学卒業後、銀行員になるも3年で退職し、大好きだった車の世界へ足を踏み入れました。自動車ディーラー営業マンへ転職し、レクサス・セールスコンサルタントとして自動車販売の現場に7年間従事します。
現在はフリーライターとして独立し、金融業と自動車ディーラーでの経験を活かして活動中です。車にまつわる金融・保険・法規などの、小難しいテーマを噛み砕き、わかりやすい情報へと変換して発信することを心がけています。常にエンドユーザーの目線に立った、役立つ情報を届けていきたいと思います。
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