■環境負荷の低減、ハンドリングなどの運動性能との両立を可能にする新技術
タイヤ市場シェアで世界首位を誇るブリヂストン。同社は、2019年にタイヤの転がり抵抗を大幅に低減できる新技術「Enliten(エンライトン)」を開発したと発表しています。
この新技術は、車両のハンドリングなどの運動性能、タイヤライフにつながる摩耗性能を維持しながらタイヤ重量を軽量化することにより、タイヤの転がり抵抗を大幅に低減できる技術です。
この新技術は、3次元形状革新サイプによるパターンブロック挙動の最適化、最新シミュレーション技術を活用した接地形状最適化により、運動性能、タイヤライフを維持しつつ、タイヤに使用する部材を削減。これにより、従来の乗用車用タイヤに比べて約20%の軽量化、転がり抵抗を約30%低減することできるそう(タイヤサイズ225/40R18での比較)。
2020年7月9日、ブリヂストンは、この新技術「ENLITEN(エンライトン)」が、フォルクスワーゲンの新型EVである「ID.3」のタイヤに採用されると発表しました。
「ENLITEN」は、タイヤ重量を大幅に軽量化し、省資源化やタイヤの転がり抵抗を大幅に低減することにより、環境負荷を低減すると共にハンドリングなどの運動性能との両立を可能にするタイヤ技術。
●電気自動車のバッテリー寿命と航続距離に貢献
先述したように、同技術により約30%転がり抵抗が低減され、ガソリン車であれば走行時のCO2排出量低減、燃費改善に貢献します。
今回のフォルクスワーゲンID.3のようなEVの場合は、バッテリー寿命を大幅に延ばすと共に、当然ながら1充電あたりの航続距離の延長に貢献、つまり実用電費の向上にも寄与。
さらに、従来品よりも約20%軽量化されることで、タイヤ1本あたりの生産に必要な原材料を約2kg削減する環境負荷低減効果も期待できるそう(タイヤサイズ225/40R18での比較。環境性能と運動性能を両立する「ENLITEN」非搭載タイヤと比較したもの)。
新車装着タイヤ(OEタイヤ)の開発は、自動車メーカーとの協業により成り立つ場合が多々あります。まして、それがEVなど自動車メーカーの新たな戦略を担うモデルや、期待の新シリーズであれば当然必要な作業になります。
フォルクスワーゲン「ID.3」のタイヤ開発では、環境性能と運動性能を両立するタイヤ技術「ENLITEN」と新しいコンパウンドの配合技術を最適に組み合わせることにより、グリップの維持と摩耗性能の向上に成功したそう。
これにより、大幅な転がり抵抗の低減に加え、ウエットおよびドライ路面での運動性能やブレーキ性能、長く使うための耐久性能全てにおいて、フォルクスワーゲンの高い要求レベルを達成したとしています。フォルクスワーゲン「ID.3」は、160km/hでリミッターが作動するようになっていますが、最高速近くでの巡航でも安定した走りも当然クリアしているはず。
BMW i3にブリヂストン独自の低燃費タイヤ技術「ologic(オロジック)」を適用させたブリヂストン。
同社では、環境性能と運動性能を両立するタイヤ技術「ENLITEN」について、進化するモビリティ社会へ貢献し、ユーザーの価値向上を可能にする、持続可能な事業戦略を支える基盤技術の一つと位置づけています。
(塚田勝弘)