■NORフラッシュ大手のサイプレスを統合、年間売上100億の新生インフィニオンが誕生
自動車の大変革期。CASEというキーワードが示すように、コネクテッドや自動運転といった、これまでスタンドアロンでの性能で勝負していたクルマが、ネットワークによってつながっていることが必須の時代になってきています。
そこで重要になってくるのはセキュリティ性能です。とはいえ、自動運転のようなテクノロジーでは多量のメモリを必要とします。セキュアなシステムを構築することは自動車業界の重要なテーマになっているのです。
そうした状況において覚えておきたい半導体メーカーがあります。それがドイツで生まれた「インフィニオンテクノロジーズ(通称:インフィニオン)」です。
従来から半導体分野においては有力企業のひとつでしたが、2020年4月に自動車用NORフラッシュメモリにおいて大きなシェアを持つサイプレスセミコンダクタ社を買収したことで、世界の半導体メーカートップ10に名を連ねるようになり、また自動車業界での存在感も増しているのです。
そんなインフィニオンが、ADAS(先進運転支援システム)などのセキュリティ性能を確保するためのメモリソリューションとして「Semper Secure NORフラッシュ」を発表しました。
これはセキュリティと機能性を1つのNORフラッシュ デバイスに統合した世界初のソリューションで、最先端のコネクテッドカーに求められるセキュリティや安全性、信頼性を提供するというものです。
自動運転につながるADASにおいては多くの情報処理が必要となりますし、また小まめなアップデートも必要となります。そのために欠かせないフラッシュデバイスは外部からの攻撃対象となりやすく、高いセキュリティ性能が求められるといいます。そのために、こうしたセキュリティ性能に優れたNORフラッシュのニーズが高まるというのが、インフィニオンの主張です。
実際、多くの自動車に同社のNORフラッシュは搭載されてきています。そうした実績もあって新しい「Semper Secure」シリーズも大きなシェアを狙いにいくということです。
コネクテッドと自動運転の時代、どこかでセキュリティに関する不安を覚えている人もいることでしょう。
NORフラッシュの技術的な情報についてユーザーレベルでは知らなくとも便利な機能は享受できるのですが、このようにセキュリティを十分に考慮したフラッシュメモリが間もなく市販されるという情報を知れば、CASE時代の次世代車への信頼性も増すというものではないでしょうか。
(自動車コラムニスト・山本晋也)