目次
■保安基準で定められた試験法とメーカー独自の試験法で評価
●試験結果を見れば、そのクルマの速さや力強さ、種類や特徴がわかる
動力性能にはスムーズな発進や安定した定常走行、ストレスのない追い抜き加速が求められます。そのため、クルマの速さや力強さの評価軸となる加速性能や登坂性能、最高速度、牽引性能などの試験を行います。
動力性能のさまざまな試験法について、解説していきます。
●動力性能全般について
メーカーがクルマを開発するときには、商品企画でクルマの狙いや用途、ターゲットユーザーなど、どのようなクルマを作るかを定義します。この商品企画を実現するために設定されるさまざまな目標性能のひとつに動力性能があります。
目標の動力性能を達成するために、メーカーは保安基準で定められた、あるいは各メーカー独自のさまざまな試験を実施してクルマを開発します。
一方クルマの購入者は、カタログなどに表示されている加速性能や登坂性能、最高速度、エンジン性能など、動力性能の試験結果を参考にして好みのクルマを選びます。
実際にクルマを運転してみないと動力性能はわかりませんが、プロドライバーでない限り、いろいろな条件で絶対評価することは現実的ではありません。
以下に代表的な動力性能の試験方法について解説します。
●加速試験とは
加速試験は、クルマの加速力を評価する試験で、発進加速試験と追い抜き加速試験があります。
・発進加速試験
停止状態から全開加速する加速試験です。
もっとも一般的なのは、停止から400mまでの到達時間を計測する、いわゆる「ゼロヨン加速」です。
JIS(日本工業規格)やTRIAS(自動車の試験標準)では、発進して400m地点までの到達時間と到達時の速度を計測する「距離法」が定められています。
スポーツタイプのクルマで使われる「ゼロヒャク」は、発進加速して車速100km/hに到達するまでの所要時間を計測する「時間法」による評価です。
AT車では、通常はフットブレーキの解除と同時にアクセルを全開にして加速します。また、アクセル全開のレーシング状態でブレーキを解除する方法もありますが、これは一般的な方法ではありません。
MT車の場合、エンジン回転を最高回転付近でレーシングした状態から、クラッチ連結と同時にアクセルを全開にして発進します。シフトチェンジは、各段の許容最高回転数付近で行います。
・追い抜き加速およびパーシャル加速
追い抜き加速試験は、追い抜きを想定して一定速度から全開加速して規定速度に到達するまでの時間を計測します。パーシャル加速は、全開でなくアクセル開度を30%開度や50%開度での現実的な加速試験です。
●登坂試験とは
さまざまな勾配の坂路で問題なく登ることができるか、停止後あとずさりすることなく再発進できるかを評価します。これには急坂路試験と長坂路試験があります。
・急坂路試験
平坦路から坂路を登る試験と、坂路で停止して再発進する試験があります。
・長坂路試験
通常は勾配10%以下の長坂路で走行試験を行います。
日本では、道路勾配の設計基準によって車速40km/hの道路では最大勾配10%まで認められていることから、この試験が設定されています。
●最高速度試験とは
瞬間値ではなく、短い距離を連続的に走行できる最高速度です。
JISやTRIASでは、2.2km以上の舗装路で1km以内の助走後の200mの測定区間で100mごとに時間を計測し、初めの100m区間と全体の200m区間の平均速度の速い方を用いるように定められています。
動力性能の基本は、ドライバーの意のままにクルマが動くことであり、加速力の大小はドライバーの好みに依存します。
動力性能試験は、あらゆる環境条件や運転条件で不満のない加速レスポンスや加速力が実現できているかを、定量的に評価できるように設定されています。
(Mr.ソラン)