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■白金(Pt)、銀(Ag)、パラジウム(Pd)、ロジウム(Rh)など高価で希少な10種の金属
●三元触媒に担持されたPt、Pd、Rhは、排ガス中のCO、HC、NOxを酸化、還元させて無害化
自動車における貴金属は、触媒やセンサー、配線類などに使用され、主として環境性能や信頼性向上に貢献しています。特に触媒で使用する貴金属Pt、Pd、Rhは、排ガス低減技術に不可欠な存在です。
ガソリンエンジンが搭載している三元触媒の貴金属の種類と機能について解説していきます。
●貴金属とは
貴金属とは、一般的には高価な金属のことを言いますが、化学的には酸化しにくく腐食しにくい、化合物をつくりにくい希少な金属です。
具体的には、金(Pt)、銀(Ag)、白金(Pt)、パラジウム(Pd)、ロジウム(Rh)、イリジウム(Ir)、ルテニウム(Ru)、オスニウム(Os)、銅(Cu)、水銀(Hg)の10種の元素を指します。
自動車における貴金属の役割として代表的なのは、触媒に担持して排ガスを低減する浄化作用やFCV(燃料電池車)の水素と酸素を反応させる電極触媒、排気ガスの酸素濃度を測るO2センサーなどのセンシング技術への適用、EVモーターの巻き線や配線、半導体素子など多岐にわたります。
●ガソリンエンジンの排出ガス特性と低減手法
排出ガス規制の対象となる成分は、CO(一酸化炭素)、HC(炭化水素)、NOx(窒素酸化物)、PM(Particulate Matter:粒子状物質)です。
・COは、酸素不足(燃料過多のリッチ状態)の不完全燃焼で発生
・HCは、COと同様に酸素不足による不完全燃焼で発生、また燃料が少なく(燃料不足でリーン状態)燃料が燃え切らない場合に発生
・NOxは、高温高圧の燃焼時にN2(窒素)が酸化しやすくなり発生
ガソリンエンジンは、吸気行程でガソリンと吸気をあらかじめ混合させる予混合方式なので、均一な混合気が形成されます。したがって、ディーゼルエンジンのように煤が発生しやすい局所的な燃料過濃領域が存在せず、問題となるレベルのPMは発生しません。
規制対象のCO、HC、NOx特性は空燃比(吸入空気と供給燃料の重量比)によって大きく変化するので、空燃比の制御などですべてをバランスよく低減させることはできません。
したがってほぼすべてのガソリンエンジンは、3つの有害ガスを同時に低減できる後処理技術の三元触媒を装着しています。
●三元触媒の排ガス浄化メカニズム
排出ガスが通過する触媒の断面は、円形あるいは楕円形です。内部は、ハニカム形状のセラミックなどから成り、その表面には貴金属微粒子を担持した触媒コート層が塗布されています。担持する貴金属微粒子は、一般には白金(Pt)、ロジウム(Rh)、パラジウム(Pd)です。
触媒表面を排出ガスが通過すると、酸化反応と還元反応によって有害な3成分が同時に浄化されます。
・COは酸素と酸化反応して、無害なCO2に変換
2CO + O2 → 2CO2
・HCは酸素と酸化反応して、水と無害なCO2に変換
4CxHy + (4x + y)O2 → 4xCO2 + 2yH2O
・NOxは還元反応で酸素を奪われて、酸素と無害な窒素へと変換
2NOx → xO2 + N2
この3つの反応を同時に進行させるためには、エンジンの空燃比を完全燃焼する理論空燃比14.7近傍に設定する必要があります。そのため、排気管に装着した酸素(O2)センサーによって空燃比をフィードバックし、空燃比を精度良く理論空燃比に制御します。
クルマが高機能化すればするほど、環境性能や信頼性向上のために貴金属の需要は増えると予想されます。一方、貴金属全般の価格は高く、白金などは装飾品としての需要もあり、価格変動が大きいという課題もあります。
低コストという観点からは、クルマで使う貴金属量をいかに減らすかが重要なテーマでもあります。
(Mr.ソラン)