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●梅雨時期となり、雨のドライブが増えてきます。タイヤのチェックは済んでいますか?
クルマと地面を繋ぐ、唯一のパーツがタイヤです。タイヤの性能でクルマの安全性能が変わっていくと言っても過言ではありません。
これからの梅雨の時期、そして夏場の突然の豪雨の際に、安全にドライビングできるように、雨天時にタイヤはどういった状態になるのか、基本的な知識をご紹介していきます。
・濡れている路面はスリップの温床、滑りやすいタイヤの条件とは
普段の生活の中でも、ランニングシューズを履いているとき、カジュアルスニーカーを履いているとき、ローファー(ビジネス革靴)を履いているときとでは、濡れた地面の滑りやすさはそれぞれ変わってくると思います。
靴底の凹凸がしっかりとしており、はっきりした弾力があるランニングシューズなどのスポーツシューズでは雨の日でも足元は安定していますが、靴底が平面に近いカジュアルスニーカーや、硬めの靴底で凹凸が少ないローファーなどでは雨のときに滑りやすく感じるのではないでしょうか。
これと同じことがクルマのタイヤでも起きています。
タイヤの残り溝が少なくなった状態では、カジュアルスニーカーを履いているときと同じように地面とタイヤの間に水の膜ができてしまい、グリップ力が低下するためにスリップが起きやすくなります。
タイヤの溝はタイヤと路面の間にある水の膜を取り除く機能があり、溝が少なくなるとその排水性能が低下します。すると水の膜の上で滑ってしまう状態になり、ステアリングを切った時のクルマの反応が遅くなったり、ブレーキング時の制動距離が伸びてしまいます。
また、製造から長い年月が経っているタイヤでも注意が必要です。
タイヤには天然の素材であるゴムが使われており、ゴムは長期間日光にさらされていると空気中の酸素と反応して酸化して硬くなっていきます。すなわち、硬い靴底のローファーを履いているときと同じような状態になってしまうのです。
硬くなったタイヤは溝がしっかり残っている状態でも地面の細かな凹凸に対して形状を変化させるしなやかさを失っており、上手く地面と接地できなくなっています。路面との密着力が低下しているということです。
水の膜を排除できるタイヤの溝が残っていても、そもそもタイヤが地面と密着できない状態ではグリップ力は低下し、路面が濡れていて摩擦係数(μ)が下がっている状態では、よりスリップしやすくなってしまいます。(乾燥路面のμは0.8、ウェット路面のμは0.6~0.4、積雪路のμは0.5~0.2、凍結路のμは0.2~0.1とされており、数値が低いほど滑りやすい路面になります。)
溝が減ってきたり、タイヤを購入してから5年以上が経過している場合にはタイヤの硬化がかなり進んでいる状態なので、雨のドライブの前にタイヤのチェックをしておきましょう。
・溝がある柔らかいスタッドレスタイヤは雨に強いのか?
スタッドレスタイヤ(冬用タイヤ)の溝は夏タイヤよりも深くなっています。プラットフォームと言われる、冬用タイヤとしての使用限界の溝深さになっても、スリップサインが出るまでは夏タイヤとしては使用できるため、プラットフォームが露出したスタッドレスタイヤを夏の間も使用し続けて履きつぶすという方もいるのではないでしょうか。
スタッドレスタイヤに設計されているタイヤの溝は、積雪路を走るために設計されています。走行しながら雪を排出する機能は高いのですが、濡れた路面では夏タイヤの溝と同じような効果は見込めません。
さらには、柔らかいゴムを使用しているスタッドレスタイヤや、夏タイヤよりも吸水性に富んでいるものが多く、雪上などでの少ない水であれば十分に吸い込んで効果があるのですが、雨の路面のように多くの水が溜まっている状態では水分を多く含んでしまい、路面とタイヤの間の水膜を作りやすくなってしまいます。
結果としてタイヤの溝が路面の水を排出しきれなくなり、クルマが水の膜の上を滑ってしまうハイドロプレーニング現象が起こりやすくなります。
スタッドレスタイヤは、できるだけ冬の期間だけ使用するようにし、夏場の雨対策には夏タイヤを装着することをお勧めします。
どうしてもスタッドレスタイヤを履かなければならない場合には、スタッドレスタイヤは雨に弱いという意識を持ち、早めのブレーキングや、1割から2割のスピードダウンを心がけて、スリップ事故を未然に防いでいきましょう。
まとめ
梅雨の長雨や、夏場にはゲリラ豪雨など、雨が降っている中での運転が増えていく時期に入ります。スリップ事故を防げるように、これからの時期、タイヤのチェックはしっかりと行い、クルマの雨対策を進めていきましょう。
(文:佐々木 亘)