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■トヨタには時代を超えて人気のモデルが多い
クルマにもその時代時代でトレンドがあり、ある車種やスタイルなどに人気が出ると、いわゆる「競合モデル」が続々と登場する傾向にあります。
近年のSUVや軽自動車のスーパーハイトワゴンなどがそうですが、中にはかつていた競合モデルが時代の流れで不在となったのに、いまだに売れ続けているモデルも存在します。
特にトヨタ車にはそんなクルマが比較的多い傾向にあります。
ここでは、そんなライバル不在のままで、まさに1人勝ち状態のトヨタ車をいくつかご紹介します。
●トヨタ・カローラ
50年以上もの長い間、大衆車の代名詞として人気を誇るモデルが「カローラ」です。
初代モデルが登場したのがなんと1966年。
今や日本だけではなく、世界150カ国以上で売れているクルマで、世界累計販売台数は50周年の節目となる2016年で4410万台を突破! 2019年には4750万台に達するなど、今も販売台数を伸ばしており、世界でも最も売れているクルマのひとつだといわれています。
日本でも大きな人気を保ち続けているのはご存じの通り。
日本の道路事情にマッチしたコンパクトで扱いやすいボディなどが人気を博し(元々は5ナンバーサイズでしたが、現行モデルは3ナンバーサイズに拡大)、かつては日産サニーが最大のライバルでした。
2004年にサニーの国内モデルが生産終了した後は(海外モデルは2006年に終了)、特にセダンモデルは他に競合が見当たらない、孤高のモデルとなっています。
現行モデルとなる12代目が登場したのが、2019年9月。
カローラ(セダン)、カローラツーリング(ステーションワゴン)をそれぞれフルモデルチェンジし、前年に先発した5ドアハッチバック車のカローラスポーツも一部改良を加えて発売されました。
新型も売上は好調で、日本自動車販売協会連合会(自販連)の調べでは、2019年度(2019年4月~2020年3月)の年間新車販売台数ランキングで1位(11万4358台)に。
先代モデルが2018年度(2018年4月~2019年3月)の年間新車販売台数で6位(9万4461台)でしたので、見事に復活を果たしたといえます。
トヨタ独自のTNGAプラットフォームを採用した新型は、低重心でスポーティなスタイルを実現。
スマートフォンと連携するディスプレイオーディオや、自転車や夜間の歩行者検知が可能な最新の予防安全パッケージ「Toyota Safety Sense」を全車標準装備するなど、実用性や安全性なども充実しています。
ちなみに、従来型のカローラアクシオやワゴンのカローラフィールダーもバリエーションを縮小して併売。ユーザーの好みや使い方に応じた幅広いシリーズラインアップを誇り、まさに「生きる伝説」を更新中です。
●トヨタ・アルファード/ヴェルファイア
高級大型ミニバンというジャンルで、他の追従をよせつけない圧倒的な存在が、「アルファード」とその兄弟車「ヴェルファイア」。
特に、最近はアルファードにより多くの人気が集まっています。
広々とした室内に高級なインテリアなどが魅力の高級大型ミニバンは、そもそも日産の「エルグランド」(初代モデルは1997年に発売)が開拓したジャンルです。
2002年に登場したアルファード(ヴェルファイアは2008年登場)は、いわばエルグランドの後追いモデルです。
ところが2015年にフェイスデザインを一新した3代目の登場で状況は一転! 兄弟車のヴェルファイアにも通じる大型フロントグリルやシャープなヘッドライトなどを採用するなどでエルグランドを凌ぐ支持を受け、一躍「高級大型ミニバンの代名詞」となったのです。
たとえば2017年の新車販売台数(1月~12月・自販連調べ)ではエルグランドが8068台なのに対し、同年のアルファードは4万2281台と、アルファードの方が5倍以上も売れています。
また、元々は兄弟車のヴェルファイアの方がアルファードよりも売れていたのですが、3代目以降は逆転します。
アルファードの3代目が登場した2015年の新車販売台数(1月~12月・自販連調べ)では、ヴァルファイア5万4180台に対し、アルファードは4万4366台。それが、2018年にはヴァルファイア4万3130台に対し、アルファードは5万8806台。
2019年にはヴェルファイア3万6649台、アルファード6万8705台と、更にその差は広がっています。
トヨタの高級ミニバンには、ほかにも2019年11月にアルファード/ヴェルファイアよりさらに大型の「グランエース」が販売されましたが、価格も620万円以上と超高額。
350万円台から購入できるアルファードやヴェルファイアほどの台数は、現時点では売れていません。
当面このジャンルで「敵なし」といえるのは、アルファードだといえるでしょう。
●トヨタ・ランドクルーザー
大型SUVモデル「ランドクルーザー」も、国内には敵なしのロングセラー車です。
その歴史は前述のカローラより古く、初代モデルはなんと第2次世界大戦の終戦からわずか6年後の1951年。
69年もの歴史を誇り、今や世界で約170カ国もの国や地域で販売されていて、2019年には世界の累計販売台数が1千万台を突破! まさに国産SUVの王者に君臨しています。
現行の200系は、2007年のフルモデルチェンジにより登場。
4.6L・V型8気筒ガソリンエンジンを搭載し、最高出力318psを発揮。ハードな悪路走行などでも信頼性が高いスーパーインテリジェント6速オートマチックを搭載したフルタイム4WDを採用しています。
ラインアップには、やや小型の兄弟車で、エンジンに2.7L・4気筒ガソリンまたは2.8L・4気筒ディーゼルを搭載したランドクルーザープラドも用意。
高級ブランドのレクサス向けに豪華装備と5.7L・V型8気筒エンジンを装備したLX570などの派生モデルもあります。
1980年代後半〜1990年代に一世を風靡した「クロカン(クロスカントリー車の略)」ブームにより、ランドクルーザーにもかつてライバルがいました。
三菱の「パジェロ」やいすゞの「ビッグホーン」などがそうで、アウトドアブームなどにより、かつて本格的な4WDモデルが売れていた時代があったのです。
特に、1982年に初代が発売された三菱のパジェロが当時最大のライバルともいえるでしょう。
パジェロは、当時日本でも人気があったモータースポーツ、アフリカの広大な荒野を走破する「パリ・ダカールラリー(現在のダカールラリー)」に出場し大活躍! 特に1991年発売の2代目は大ヒットを記録します。
ところがクロカン・ブームの終焉と共に販売台数も凋落し、2019年に生産終了。他メーカーでも、すでにこの手の本格的クロスカントリー車は生産終了していたため、実質的に国産車ではランドクルーザーの独断場となっているのです。
今や、国内市場ではランドクルーザーのライバルは、ジープ・ラングラーやランドローバー・ディフェンダーなどの輸入車しか存在しない状況です。
国産車の中では、今後もライバル不在の状況が続くことでしょう。
スポーツやレースの世界をはじめ、世の中には「ライバル」の存在があってこそ、トップに君臨する“もの”の記録が伸びたり、成長に繫がることがよくあります。
ところがここで紹介したトヨタ車たちは、競合が不在にも関わらず人気を維持し続けているモデルばかり。
こういった側面からも、国内で「トヨタ車が強い」秘密のひとつを垣間見ることができるのです。
(文:平塚直樹/写真:トヨタ自動車、日産自動車、三菱自動車、FCAジャパン)