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●三密を避けるため自転車利用が増える中、新たな法律はどのような意味を持つのか
政府は、改正道路交通法施行令を6月9日に閣議決定しました。改正令では、これまでの14項目に上る自転車の危険行為に加えて、自転車によるあおり運転である「妨害行為」を追加しました。
新型コロナウイルス感染抑止につながる三密を避ける目的で自転車での通勤や通学が増え、政府も自転車の利用を促進している中での改正令はどのような意味を持つのでしょうか。
自転車利用時に遵守するべき法令や、新たな施行令に対する対応方法などをあらためてまとめていきます。
・自転車を対象にした危険行為の規定とは
現在、自転車を対象にした危険行為は14項目が規定されています。
1.信号無視
2.遮断踏切立ち入り
3.指定場所一時不停止等
4.歩道通行時の通行方法違反
5.制動装置不良自転車運転
6.酒酔い運転
7.通行禁止違反
8.歩行者用道路における車両義務違反
9.通行区分違反
10.路側帯通行時の歩行者通行妨害
11.交差点安全進行義務違反
12.交差点優先者妨害等
13.環状交差点安全進行義務違反等
14.安全運転義務違反
気軽に乗れてしまう自転車は、どちらかというと歩行者寄りの立ち位置と誤解する方もいるかもしれませんが、自転車は立派な「車両」になります(厳密には軽車両)。
つまり法律上では、自動車やバイクとそう変わらない位置にある乗り物なのです。ですからもちろん信号無視や酒酔い運転はしてはいけませんし、スマホを見ながらの「ながら運転」も「安全運転義務違反」として検挙されます。
これらの危険行為は、実際に警察の取り締まりを受けることになります。
14歳以上の自転車ドライバーが危険行為を行い、警察からの指導を受けた際に渡されるのが「自転車警告指導カード」です。その場でどのような危険行為を行ったのかを警察官と確認し、警告カードを受け取ります。その他特に何もなければその場で手続きは終了です。
警察の中での記録は残りますが、自動車免許の点数のように何かが減っていくわけではありませんし、反則金の支払いなどもありません。サッカーのイエローカードのように、2枚で退場といった累積処分もありません。今後同じ違反を繰り返した時などに、参考程度に残る記録と考えて良いでしょう。
ただし自転車による危険行為では、悪質と判断された場合には赤切符が交付されます。免許制度のない自転車では青切符は存在せず、悪質な違反に対しては即座に赤切符が切られ、場合によっては略式起訴、そして罰金刑などの刑事罰が科せられる可能性があります。
悪質な違反と判断される要因は明確には規定されていませんが、警察官の停止命令を無視し逃げたり、事情聴取に応じない、反抗的な態度をとるなどが挙げられます。また、自転車による歩行者を対象とした事故を起こし、その事故の原因が危険行為によるものである場合なども、悪質な違反と判断されることが多いようです。
また、赤切符を交付され、その後起訴猶予となった場合でも、危険行為による赤切符を3年以内に2回以上交付された場合には、自転車運転者講習を受けるように命令が来ます。手数料は6000円で講習時間は3時間です。受講命令に従わない場合には、違反行為とは別に5万円の罰金が科せられます。
・新しく追加される、あおり運転の内容とは
改正道路交通法施行令では、15項目めに「妨害行為」として自転車のあおり運転を規定する内容が追加されました。具体的には、自動車やバイク、または他の自転車の通行を妨げる目的での「逆走をして進路を塞ぐ」「幅寄せ」「進路変更」「不必要な急ブレーキ」「ベルをしつこく鳴らす」「車間距離不保持」「追い越し違反」の7項目が規定されています。
こちらに違反した場合にも、上記の14項目と同様の警察の指導や、赤切符の交付が行われます。
妨害行為の追加された改正道路交通法施行令は6月30日に施行されます。ちなみに警察庁によると、過去1年間の自転車の危険行為による摘発は26,687件で、自転車運転者講習を受けたのは328人となっています。
・自転車用ドライブレコーダーは必要になるのか
実際に自転車の危険行為を検挙する場合には、自動車等につけられたドライブレコーダーの映像を警察に提出することが求められることがあるようです。ナンバープレートなどが無く、特定の難しい自転車による違反行為には、実際の映像を使って違反者を確認し、特定することが多いのでしょう。
今回の改正道路交通法施行令では、自転車と自転車による危険行為ももちろん検挙の対象となっています。物的な証拠が残りにくい自転車での走行にも、ドライブレコーダーのような記録装置を付ける必要が出てくるかもしれません。
自転車のマナーや運転者の意識は、地域によって大きくばらつきがあります。普段から危険な自転車の運転が多いなと感じている方は、GoProに代表されるウェアラブルカメラを準備しておき、自転車での走行中はそのビデオで録画しておくという対策を講じておくと安心できるかもしれません。
このようなビデオによる録画を必要としないくらいに、自転車ドライバーのマナー意識や安全運転意識が向上していくことが最も重要なポイントになっていくでしょう。
・まとめ
自転車によるあおり運転項目の追加は、コロナ禍で今後も増えていくであろう、自転車移動の需要増加を想定した、マナーアップの先手であると考えられます。自転車も「車両」の一つだという強い認識を持ち、便利な乗り物を、十分に注意し、高い意識をもって運転することが必要です。
自転車でもハンドルを握ればドライバーになるということを忘れずに、安全運転を心がけましょう。
(文:佐々木 亘)