■当面の間は電動化戦略に欠かせない48Vシステム
以前お伝えしたように、ボルボが人気SUVのXC60、最上級SUVであるXC90に48Vマイルドハイブリッド仕様の「B5」を追加しました。
「Drive-E」と呼ばれる同社の最新パワートレーンは今回で3世代目となり、直列4気筒2.0Lガソリンエンジンに、ISGM(インテグレーテッド・スターター・ジェネレーター・モジュール)と、48Vリチウムイオンバッテリーが搭載されています。
気筒休止システムが加わった第3世代のエンジンは250ps/350Nm、モーターは10kW/40Nmというスペック。燃料消費率 WLTCモードは11.5km/L。
今回試乗したのは、2019年の日本市場におけるボルボの中でX40、V40に次いで売れているXC60。ヨーロッパでは純内燃機関(ガソリンエンジン車、ディーゼルエンジン車)の脱却を政策として掲げている国が多く、都市部などへの乗り入れを制限する地域も出ています。
こうしたマイルドハイブリッドやプライグインハイブリッド、ピュア(バッテリー)EVといった電動化は、欧州の企業平均燃費(CAFE)と呼ばれる、罰金を伴う燃費規制などをクリアするのに不可欠になりつつあります。
ボルボは「全モデルの電動化させる最初のプレミアムブランドになる」と宣言していて、電動化も見据えて設計されている「Drive-E」パワートレーンも同時に進化を遂げています。
■モーターアシストによるスムーズな出だしを実感
欧州車でポピュラーになりつつある48Vマイルドハイブリッドは、いわゆる「ストロングハイブリッド」よりもシンプルで、多くのモデルに展開(追加)しやすいのが利点としてあります。
XC60もXC90も「B5」はAWDとの組み合わせで、走行時は常にエンジンが作動。低速域ではモーターアシストが加わるため、スムーズな出だしが美点。実際にXC60 B5 AWD(試乗車はXC60 B5 AWD Inscription)の走りも同様で、モーターアシストが発進時の加速の良さに貢献している印象が伝わってきます。
また、回生ブレーキにより減速エネルギーが48Vリチウムイオン電池に蓄えられるシステムになっていますが、ブレーキのフィーリングに違和感はほとんどなく、純ガソリンエンジン車のように走れるのも印象に残りました。
PHEVと同様に「B5」にはブレーキバイワイヤシステムが採用されていて、初出ではないのも完成度の高さにつながっているのかもしれません。
さらにB5は今回、シフトセレクターもバイ・ワイヤー化されていて、試乗車の「XC60 B5 AWD Inscription」にはスウェーデン・オレフォス社のクリスタルガラス・シフトノブが用意されていました。慣れるまでどこのシフトポジションに入っているのかメーターを確認する必要がありましたが、軽い操作感なのが美点。
さて「ISGM」はモーターアシストだけでなく、オルタネーターの役割も担い、エンジン始動時(アイドリングストップからの再始動時も含む)にも作動し、後述する気筒休止にも使われます。
なお、同類のシステムをメルセデス・ベンツやスズキなどの他メーカーでは「ISG」と呼んでいます。ですからエンジン始動時もスムーズで静か。
また、2.0Lの直列4気筒直噴ターボの高速域のパンチ力も印象的で、気持ちのいい加速も味わえます。さらに今回は1番と4番に気筒休止システムが備えられていますが、その切り替わりは音や振動で察知することはできないほど。
もちろん気筒休止システムの目的は燃費の向上で、WLTPモードで2.5〜4%改善するそう。作動するエンジン回転数と速度は3000rpm以下、30km/h〜160km/hの範囲内となっています(ほかにも変速動作がなく、エンジントルクが安定しているなどの条件があります)。
乗り心地も2代目が登場した2017年秋当時よりも洗練されています。デビュー時は少し硬めの足という印象でしたが、試乗車のエアサスペンション装着車は路面の凹凸のいなしが巧みで、路面によっては少し揺すぶられるシーンはあるものの、前席でも後席でも上質感が増した印象を受けます。
(文/塚田勝弘 写真/井上 誠)
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