新型コロナで吹き飛んだ、バイク料金割引とETC二輪車「ツーリングプラン」の行方

■「Go To トラベル」開始の目安は7月?

ETC二輪車「ツーリングプラン」は、バイク専用の高速道路のエリア周遊商品です。2017年から毎年対象エリアを変えてNEXCO3社から発売されています。初年度を除き、毎年大型連休前に発売され、有効期間を11月末日までとする期間限定で売り出され、2020年版もその予定でした。ところが、新型コロナ感染防止の影響で発売がまったく見通せず、二輪車ユーザーにとって大事な問題が先送りされようとしています。

ツーリングプラン
2019年の利用者は対前年比で降雨などで大幅に減少した

普通車料金の1/2で、バイク割引を

ツーリングプラン作成の関係者が解説します。
「新型コロナが深刻になる前に、2020年案はできていました。2020年版は2019年の課題を改良して作られるのですが、その公表の機会を失い、期待する議論がまったく前に進まなくなってしまったのです」

全国的な緊急事態宣言が解除され、社会活動は徐々に戻りつつありますが、多くの都道府県が県境をまたぐ移動について制限し続けています。ツーリングプランは定額制で、対象エリア内乗り降り自由の周遊パスです。対象地域の観光振興と高速道路の利用促進を目指しているので、この状況での発売が難しいことは簡単にわかります。それがなぜ問題になるのでしょうか。前述の関係者は言います。
「ツーリングプランは高速道路料金を議論する中で誕生しました。利用実態を把握し、二輪車の料金割引を考える材料を収集するためです。そこが他の周遊パスとはまったく違うところです。とりあえず首都圏だけで始めた1回目、首都圏、関西圏、中部圏に広げた2回目、ほぼ北海道や九州、四国を加えて全国主要区間に拡大した3回目を経て、今年は4回目。もうそろそろツーリングプランとは別に、二輪車の定率割引を考えるべきではないか、という意見が出ていました」

昨年開催されたオートバイの料金割引を検討する与党自民党の二輪車問題プロジェクトチームには、「定額」ではなく「定率」で全国展開を試みるべきだという意見が寄せられています。
「割引には2つの方法があります。周遊パスは一定額で限定エリアを乗り放題にする定額割引ですが、エリアを限定せず、休日割引のように通常料金から定率で割り引く定率割引があります。定額割引での利用実態はほぼわかったので、普通車料金の1/2と同じ水準、つまり軽自動車料金の5/8の定率割引で、全国試行することが必要ではないか、という意見です」

高速道路料金の車種区分は、道路走行中の専有面積、車重が路面に与える損傷度などを考慮して算定され、二輪車は軽四輪と同じ車種区分です。一方、この算定とは別に各種の割引は判断されています。特大車や大型車が各種の割引を適用することによって、軽自動車より安く走っている現実がありますが、国土交通省は定率割引するには「ソフトウエアを改修するなどのコストがかかる」と難色を示します。

2020年ツーリングプランはいつ?

2020年ツーリングプランの実施タイミングが明らかにされていないことも、関係者を心配させています。

2019年は対象エリアを広げて料金を高めに設定したことと、降雨などで対前年比で大幅に利用者が減りました。2020年案はこの反省から対象エリアを狭めて、利用期間を短くするなどして料金を抑えました。
国交省は「過去には大型連休直前からスタートすることが多かったのですが、新型コロナの影響でできていません」(高速道路課・担当の課長補佐)と説明しますが、ツーリングプランの概要どころか、2020年版を行うか否かも明確にはなっていないのです。

一方、同じ新型コロナの影響があっても、赤羽一嘉国交相は新型コロナ後の観光振興を目的とした「Go To トラベル」について、開始の目安を明らかにしています。
「スムースにいけば7月の早い時期にできるかもしれません」
ツーリングプランと「Go To トラベル」は同じ観光振興を目的とした国土交通省の施策です。ツーリングプランは通行料金の割引で、Go To トラベルは旅行商品の費用助成で、共に国全体で経済の立て直しに寄与しようとしています。なぜ高速道路課は課内にツーリングプランを抱え込んだままにするのでしょうか。

二次感染が心配される中、2020年のツーリングプランは開始できるのでしょうか。前述の課長補佐はこう話します。
「Go To トラベルに歩調を合わせた(全国一律の)選択肢もありますが、地域の感染状況を見ながら、設定したエリアごとに開始することも考えています」

(文 中島みなみ)