販売台数が前年比9%減のマツダ。付加価値で「稼げる体質」に変身できるか?【週刊クルマのミライ】

■SUVの販売比率が半分以上。販売台数がマイナスでも売上高はさほど減らない

マツダが2020年3月期の決算を発表しました。新型コロナウイルスの影響もあってか、全体に厳しい数字が並んでいます。

主な数字を整理して一覧してみましょう。※( )内は前年比

グローバル販売台数:141万9千台(9%減)
売上高:3兆4303億円(4%減)
営業利益:436億円(47%減)
当期純利益:121億円(81%減)

グローバル販売の地域ごとの数字は次ののようになっています。※( )内は前年比

日本:20万2千台(6%減)
北米:39万7千台(6%減)
欧州:26万4千台(2%減)
中国:21万2千台(14%減)
その他:34万5千台(16%減)

この数字だけをみると単純に世界中で新車が売れずに、利益を減らしているという風にしか見えません。しかし、ちょっと不思議なことに気付きます。

販売台数が落ちているわりに売上高はそれほど落ち込んでいないのです。

MAZDA CX-30
凝ったメカニズムに加えて魂動デザインによる最新のマツダスタイリングもCX-30の魅力

過去の数字と照らし合わせてみましょう。

マツダのグローバル販売が163万1千台と過去最高を記録した2018年3月期の売上高は3兆4740億円でした。一方、2020年3月期は141万9千台で3兆4303億円です。台数減の割に売上は減っていない印象です。

売上のすべてが新車販売とはいえないので、乱暴な計算になりますが、1台当たりの売上を計算してみると、その理由が見えてきます。

1台当たりの売り上げ
2018年3月期:213万円
2020年3月期:241万7千円

高価なクルマが売れているということが考えられるのです。そのヒントとなるデータが決算説明会の資料の中にありました。

MAZDA SUV Ratio
マツダのクロスオーバーSUV比率の推移(2020年3月期決算説明会・資料より)

年々、クロスオーバーSUV比率が高まっていて、2020年3月期にはついに半数以上がSUVになったことがわかります。一般論になりますが、SUVは車両価格が高い傾向にあります。付加価値の大きい商品が売れているというわけです。

そうなると合点がいくでしょう。マツダは一台当たりの儲けが大きいモデルを、値引きやインセンティブに頼らずに売っていくという戦略に成功しつつあるということです。

同社の言葉を借りれば『ブランド価値を向上させ、稼ぐ力を強化する』という方針に向かっているといえます。

MAZDA CX-8
3列シートのCX-8はSUVのフラッグシップ的存在。2.5Lガソリンエンジン、2.5Lガソリンターボ、2.2Lクリーンディーゼルを設定する

それが台数当たりの売上高上昇につながっているのでしょう。では、なぜゆえに利益は減少しているのか。

こちらも一般論ですが、おそらく固定費が抑制できていないからだと考えられます。たとえば工場の稼働率が下がると相対的に固定費の負担が大きくなり、利益を減らします。いまのマツダはそうした状況にあると考えられます。

固定費を抑えることができればマツダは一気に稼げる体質に変身できるといえるのです。

付加価値の大きな商品を売っていくというビジネスモデルへ着実に変身しつつあるマツダ。数字は厳しいものですが、そこには「明るい未来」も見えている、そんなことが感じられる2020年3月期の決算発表だったといえるのではないでしょうか。

MAZDA CX-5
マツダSUVラインナップの中心的存在がCX-5。2.0L/2.5Lガソリンエンジン、2.5Lガソリンターボ、2.2Lクリーンディーゼルと豊富なパワートレインを用意する
MAZDA CX-3
市街地を走るCX-3。1.8Lクリーンディーゼルと2.0Lガソリンエンジンを用意する

(自動車コラムニスト・山本晋也)

この記事の著者

山本晋也 近影

山本晋也

日産スカイラインGT-Rやホンダ・ドリームCB750FOURと同じ年に誕生。20世紀に自動車メディア界に飛び込み、2010年代後半からは自動車コラムニストとして活動しています。モビリティの未来に興味津々ですが、昔から「歴史は繰り返す」というように過去と未来をつなぐ視点から自動車業界を俯瞰的に見ることを意識しています。
個人ブログ『クルマのミライ NEWS』でも情報発信中。2019年に大型二輪免許を取得、リターンライダーとして二輪の魅力を再発見している日々です。
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