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●自動車保険料の負担を公平化するためのシステム
自動車保険には「フリート契約」と「ノンフリート契約」の二種類があります。フリート契約は10台以上の大口契約、ノンフリート契約は9台以下の小口契約となっていて、一般的に個人の方はノンフリート契約を結ぶことになります。
このノンフリート契約における料率制度で保険料の割増・割引率を決めるための区分のことを「等級」と言います。今回は自動車保険の等級について解説していきます。
・6からスタート、20まで育つには最速でも14年かかる
等級は1等級から20等級までの20段階あります。3等級以下は保険料が割増、4等級以上は保険料が割引となります。等級が上がるほど割引が大きくなるため、20等級で割引率が最大になります。例外として、全労災のマイカー共済のみ最大等級が22等級となっています。
自動車保険に新規加入すると必ず6S等級からスタートします(6Sの「S」は、新規契約という意味を表します)。保険請求をする事故がなければ、翌年から毎年1等級ずつ上がっていきます。逆に、保険請求をする事故を起こしたときは、一気に3等級下がります。自然災害や盗難などでの保険請求では1等級のみ下がります。
・等級は一台につき一つずつ
一人で複数台のクルマを所有している場合は、1台ごとに等級が新しく振り分けられます。例えば10年間クルマを保有し続けていて、保険請求が無かった場合、その保険は16等級まで上がっています。この時に2台目のクルマを保有すると、2台目のクルマは7F等級が設定され、一人の契約者が16等級と7F等級の2本の契約を持つことになります。
基本的に新規契約の場合は6等級からスタートしますが、2台目以降の契約の場合「1台目の等級が11等級以上」などの条件を満たすと新規契約を7等級からスタートできる、セカンドカー割引制度(複数所有新規割引)があります。
・日本全国共通の等級管理制度で抜け道なし
保険会社を変更しても、自分の持っている等級は変わりません。良くも悪くも、簡単にリセットできないのが自動車保険の等級です。
例えば、事故を起こして6等級以下になってしまったときに等級の落ちた保険契約を解約して他社で新規契約をしても、等級をリセットすることはできません。保険契約はクルマと契約者に紐づく形になっており、クルマを増やしたり減らしたりしない限り、どこまでも同じ等級がついてまわります。
これは、どの保険会社でも共通のデータベースをもっており、過去の契約を調べることができるので、以前の契約の等級を調べられてしまうからです。不当に保険請求を行って、解約リセットを行えないようにする策でもあります。
仮に等級をリセットするためには、自動車保険を契約していない時期を13か月以上つくる必要があり、その期間はクルマの保有ができません。
逆に、クルマの保有台数を減らす場合に育てた等級が消えてしまうことはありません。「中断」という形をとることで10年間は等級を維持することができ、その後のクルマを買う・増やすタイミングで等級を再利用できます。大事に育てた等級を無くさないように、クルマを手放すタイミングでは必ず中断証明書を発行してもらいましょう。
・「事故あり係数」という罰則期間を理解する
等級には1~20までの段階がありますが、この中でも過去2年~3年の間に保険金請求をしたことがある人には「事故あり係数」というものが適用され、保険金請求をしていない人と区別されます。
これは、事故を起こして保険請求をした人と事故なしで保険料を払い続けている人の保険料負担を公平化するために、2013年10月に導入された制度です。
3等級ダウン事故で3年間、1等級ダウン事故で1年間の事故あり係数適用期間が設けられ、7等級以上では通常より保険料の割引率が下がります。
例えば、事故なしの7等級では30%割引されるところを、事故あり係数適用期間の7等級では20%割引となります。同様に、13等級では49%割引のところが29%割引に、20等級では63%割引のところが44%割引となります。
ちなみに、6等級以下では事故あり係数適用期間は設けられていません。
保険請求をすると等級が下がるだけでなく、実質的に割増保険料を3年間払うことになるので、追加で支払う保険料がクルマの修理費より高くなってしまうケースもあります。
軽微な修理では、自動車保険を使いにくくなった形になり、保険金請求についても、一度立ち止まって考える必要があります。
・まとめ
イマイチ仕組みのわかりにくい自動車保険の等級制度は、事故あり係数適用期間の導入によりさらに複雑なものになりました。
表面的な等級の数字だけでなく、今の契約がどれだけ保険料の割引になっているのか、保険を使った場合と使わなかった場合に等級と割引率がどうなるのかを保険代理店に確認しながら、保険請求や更新手続きを行っていきましょう。
(文:佐々木 亘)