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●運転者限定、家族限定など、大まかでわかりにくい自動車保険の適用範囲を理解しましょう。
契約者(加入者)のみが補償を受ける生命保険や医療保険とは異なり、自動車保険は適用範囲を設定すれば家族単位やクルマを使用する人の単位で補償を受けられるものです。
しかし、その「家族」や「使用する人」という範囲はどこまで適用されるのか、イマイチわかりにくい制度となっています。自動車保険の補償される運転者の範囲を解説していきます。
・自動車保険における「家族」の範囲とは
国語辞典を引くと、家族とは「夫婦とその血縁関係者を中心に構成され、共同生活の単位となる集団」という意味があります。つまり、ひとつ屋根の下、同じ家に住んでいる血縁者のことを一般的に家族と言いますが、自動車保険での家族の定義は、この一般的な家族とは少し異なります。
自動車保険の中での家族とは、
1:本人(記名被保険者)
2:配偶者
3:1と2と同居している親族
4:1と2と別居している未婚の子
の4つの属性のことを指します。
新しい言葉、「親族」がでてきましたが、これは民法725条に規定があり「六親等以内の血族、配偶者、三親等以内の姻族」の範囲を指します。
六親等以内の血族とは、自分を中心にして、
1親等は父母・子
2親等は祖父母・孫・兄弟姉妹
3親等は曾祖父母・曾孫・おじおば・甥姪
4親等は高祖父母・玄孫・祖父母の兄弟姉妹・いとこ・甥姪の子
5親等は高祖父母の父母・来孫・高祖父母の兄弟姉妹・祖父母の甥姪・いとこの子・甥姪の孫
6親等は高祖父母の祖父母・昆孫・高祖父母の父母の兄弟姉妹・高祖父母の兄弟姉妹の子・祖父母の甥姪の子など
を指します。
また三親等以内の姻族とは、父母・子・祖父母・孫・兄弟姉妹・曾祖父母・曾孫・おじおば・甥姪の配偶者ということになります。配偶者の血族の配偶者は姻族には含まれません。
先に上げた4つの属性のどれかに該当すれば「家族限定補償」の範囲で、補償を受けることができるのです。
実際に、これらすべての親族と同居しているというケースは考えにくいですから、現実的には自分の父母、子、孫、祖父母などの範囲が同居していれば、同居の親族として自動車保険の家族限定補償の対象となります。
また、本人と配偶者はわかりやすいですが、未婚の子という分かりにくい表現があります。未婚の子とは、今までに一度も婚姻をしたことがない子供と定められており、扶養の有無は問いません。
したがって、大人になって働いて生計を立てている自分の子供でも、婚姻していなければ大丈夫です。この子が一人暮らしをしていて、別居していても家族限定の運転者範囲に入ります。ただし、一度でも婚姻歴があれば、現在未婚の状態でも未婚の子にはならないので注意が必要です。
・運転者条件と年齢条件では、適用される範囲が異なる
自動車保険で注意すべき限定条件は「運転者の限定」と「年齢条件」の2種類です。
このうち、先に挙げた4つの属性に当てはまる家族全員を自動車保険の補償範囲に含める場合には、運転者限定特約を「家族限定」もしくは「限定なし」とすることが必要です。
限定なしよりも家族限定を付けたほうが保険料は割安になるので、本人・配偶者・同居の親族・別居の未婚の子以外の第三者にクルマを使用させることがなければ、家族限定を付けましょう。
また、年齢条件が適用される範囲は「同居している家族全員」に適用されます。同居する家族内で、クルマを運転する最も若い人に合わせて条件を設定する必要があります。
例えば、父(60歳)、母(63歳)、子(27歳)の場合には「26歳以上補償」とする必要があります。このとき未婚の子供が別居している場合には、年齢条件を問わず補償されるので、年齢条件を35歳以上補償としても、別居の未婚の子は補償範囲内となります。
・単身赴任や子供が結婚した場合にはどうする
夫が単身赴任で配偶者と子供と別居になる場合は、実態上の別居の事実があっても同居家族の時と同じ状態で保険契約を結ばなければなりません。
主たる使用者が夫で、夫がクルマを単身赴任地まで持っていくとしても、考え方は全員が同居している状態と同じです。家族限定補償とし、クルマを使用する中での最年少の人に年齢条件を合わせてください。
子供が結婚した場合は、結婚後も同居していれば同居の親族に入りますが、別居した場合には、家族限定特約のままでは補償を受けることができません。
別居した子供夫婦にも自分のクルマを運転させる場合には、運転者限定なしを選択します。結婚後の子供と同居している場合には、年齢条件は同居家族内での最年少の人に合わせる必要があるので、新しく同居の親族となる子の配偶者の年齢を確認し、年齢条件が当てはまっているのかを確認する必要があります。年齢条件は同居家族に適用されることを理解しましょう。
・まとめ
ちょっとわかりにくい運転者限定と年齢条件について解説しました。2つの条件は必ずリンクするものではなく、別々に使用条件に合わせて考える必要があります。適切な条件を設定して、保険料の割引制度を使い、お得に自動車保険を使いましょう。
(文:佐々木 亘)