認証工場と指定工場とは?「車検ができる」「できない」で工場にも区分がある【自動車用語辞典:定期点検編】

■整備検査して車検場で車検を受ける認証工場、自社内の検査ラインで車検が完結できる指定工場

●多少時間はかかるが費用が安い認証工場、短期間で安心だが高い指定工場

車検をする場合、通常ディーラーか整備工場に依頼しますが、整備工場には「認証工場」と「指定工場」があります。認証工場は検査や整備はできるが車検までは行えず、一方指定工場では工場内で車検が完了できるという違いがあります。

認証工場と指定工場の違いについて、解説していきます。

●認証工場

認証工場とは、一定の規模の作業場と設備、分解整備に従事する整備士を有する工場で、地方運輸局長が自動車分解整備事業を認可した工場です。

整備や修理などは行えますが、検査ラインを持ってないので最終検査ができず、最終的な車検は陸運支局(検査場)に持ち込まなければいけません。

ここでいう分解整備とは、自動車の原動機、動力伝達装置、走行装置、操縦装置、制動装置、連結装置を取り外して行う整備または改造を指します。

●指定工場

指定工場とは、認証工場の中で設備や技術、組織などが一定の基準に適合した工場で、地方運輸局の指定自動車整備事業の認可を受けた工場です。指定工場になるためには、厳しい審査に合格しなければいけません。

ディーラーのサービス部門は、基本的には指定工場に属します。

最終検査ラインを持っているので、陸運支局に代わって車検を行うことができます。国から車検を行うことを指定されているので指定工場、また民間車検場とも呼ばれます。

●認証工場と指定工場の違い

・作業場と設備
認証工場には、車両整備作業場、部品整備場、車両置場が設置されています。指定工場には、加えて車検のための完成検査場が必要です。また、指定工場には点検整備用の設備に加えて、車検に必要な検査ラインが必要です。

・人員構成

認証工場:
分解整備に関する従業員が2名以上で、従業員のうち最低1名は整備士資格(1級または2級)を有すること。また従業員が多数の場合は、整備士資格(1級、2級、3級いずれか)の有資格者が従業員の1/4以上必要です。

指定工場:
業務に従事する従業員が5名以上で、従業員のうち自動車検査員が1名以上、整備士資格(1級または2級)保有者1名を含め、工員が4名以上いること。また従業員が多数の場合は、整備士資格(1級、2級、3級いずれか)の有資格者が工員の1/3以上必要です。

認証工場と指定工場の看板
認証工場と指定工場の看板

●自動車整備士と自動車検査員

自動車整備士は、クルマに不具合がないか確認して整備や分解、修理などを行います。

国家資格の整備士技能検定試験に合格する必要があり、技能レベルによって1級、2級、3級があります。

・1級整備士
整備士の中で最上位の資格で、他の整備士や作業員を指導する立場です。

・2級整備士
クルマの整備全般に従事することができ、シャシ整備士、ガソリン整備士、ジーゼル整備士、二輪整備士の4種に分かれています。

・3級整備士
2級整備士と同様に4種に分かれています。2級が一般的な整備ができるのに対して、3級は基本的な整備しかできません。

整備士になるには、専門学校に入学して2級の資格取得を目指すか、実務経験を積んで3級、または2級を目指す2通りの方法があります。

自動車検査員とは、民間の指定工場で車検の責任を担うことができる国家資格を有する検査員です。車検等でクルマが保安基準に適合しているかを検査して、最終点検を行うことができます。

検査員になるためには、2級整備士の資格を有して整備主任として1年以上の実務経験などの資格を有して、国家試験に合格する必要があります。


工場内で車検が完結する指定工場(ディーラーサービス含む)の方が、1日車検のように短期間でしかも厳しい検査をするので安心という考え方が、一般的かもしれません。一方で認証工場の方が、多少時間はかかっても安いというメリットがあります。

いずれにせよ、整備工場で車検を行うときには、評判を聞いて安心できる工場を選ぶのが大切です。

(Mr.ソラン)

この記事の著者

Mr. ソラン 近影

Mr. ソラン

某自動車メーカーで30年以上、自動車の研究開発に携わってきた経験を持ち、古い技術から最新の技術までをやさしく解説することをモットーに執筆中。もともとはエンジン屋で、失敗や挫折を繰り返しながら、さまざまなエンジンの開発にチャレンジしてきました。
EVや燃料電池の開発が加速する一方で、内燃機関の熱効率はどこまで上げられるのか、まだまだ頑張れるはず、と考えて日々精進しています。夢は、好きな車で、大好きなワンコと一緒に、日本中の世界遺産を見て回ることです。
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