ユーザー車検とは?ユーザー自らクルマを陸運局に持ち込んで車検を通す方法【自動車用語辞典:定期点検編】

■メリットは、点検整備費用や手数料の節約による数万円程度の費用削減

●クルマのことをある程度理解して手間を惜しまないユーザーなら、ハードルはそれほど高くない

一般に車検は、ディーラーや整備工場に依頼しますが、ユーザー自らクルマを陸運局に持ち込んで車検を通す「ユーザー車検」があります。車検を自分でやるなんてとんでもないと思うかもしれませんが、少し手間を掛ければ可能なレベルです。

車検を安くできるユーザー車検のやり方について、解説していきます。

●ユーザー車検の流れ

車検とは、購入後の初回は3年後に、その後は2年ごとに保安基準に適合しているかを確認する制度です。通常ディーラーや整備工場に依頼しますが、費用は普通車クラスで10~14万程度はかかります。

ユーザー車検とは、自ら運輸支局に車両を持ち込んで車検を受ける方法です。ディーラーや整備工場に依頼した場合に対して、点検整備費用や手数料がかからないので数万円程度の費用が節約できます。

ユーザー車検のおおまかな流れは、次のようになります。

・事前準備:インターネットで予約して、クルマの事前チェック

・事務手続き:クルマの搬入と書類の準備

・検査:車検検査コースで、8つの検査項目について検査

・検査後:合格すれば、新しい車検証などを受け取る。問題が見つかれば不合格になり、修正後に再度検査を受け直します。

●事前準備

ユーザー車検を受ける場合、国交省の「自動車検査インターネット予約システム」で予約します。車検は、通常は更新日の1ヶ月前から実施可能で1日3回まで受検可能です。

いきなりぶっつけ本番で臨むのは危険なので、最低限問題がないかチェックしておく必要があります。確実なのは、運輸支局に持ち込む前に民間の予備検査場で確認してもらうことです。予備検査場は運輸支局の近傍にあり、3000~5000円程度で車検のラインに近い設備で検査してくれます。

ここで通らないようだったら、本番も通らないので 修正する必要があります。

●事務手続き

ユーザー車検で必要な書類は、車検証と自賠責保険証明書、自動車納税証明書です。車検前に法定24ヶ月点検を実施済みの場合は、整備点検記録簿も用意しておきます。

運輸支局では、継続審査申請書と自動車重量税納付書、自動車検査票を作成します。

●検査

車検検査コースで、次の8項目について検査されます。

・同一性の確認
車検証と申請書類の記載内容と対象車両が同一であることを確認

・外回り検査
対象車両の外観における保安部品に問題がないことを検査

・サイドスリップ検査
前後輪の横滑り量を検査

・ブレーキ検査
前後輪と駐車ブレーキの制動力が基準値内であることを検査

・ヘッドランプ検査
ヘッドライトの光量、光軸が基準値以内であることを検査

・スピードメーター検査
実際の速度とスピードメーターの表示の誤差を検査

・排気ガス検査
排出ガスのCO値とHC値の濃度を確認

・下回り検査
対象車両を下から見て、不具合がないことを確認

車検の検査項目
車検の検査項目

●検査後

合格すれば、新しい車検証などを受け取って無事終了です。

もし不合格になれば、修正後に再度検査を受け直します。1日3回まで無料で再検査できるので、修正内容が軽微であれば通常は1日で片付きます。

もしその日のうちに合格できなければ、「限定自動車車検証」を発行してもらい、特例でその日を含めて15日間は保安基準に不適合ながら公道を走行できます。その間に、不適合箇所を修正して合格しなければいけません。

15日間で合格できなければ、再検査でなく一からやり直しになります。


ユーザー車検はハードルが高そうですが、キチンと準備して対応すればそれほど難しくありません。ただし、何かあっても自己責任なので、クルマの技術に対して自信がない人は、プロに任せた方が賢明だと思います。

(Mr.ソラン)

この記事の著者

Mr. ソラン 近影

Mr. ソラン

某自動車メーカーで30年以上、自動車の研究開発に携わってきた経験を持ち、古い技術から最新の技術までをやさしく解説することをモットーに執筆中。もともとはエンジン屋で、失敗や挫折を繰り返しながら、さまざまなエンジンの開発にチャレンジしてきました。
EVや燃料電池の開発が加速する一方で、内燃機関の熱効率はどこまで上げられるのか、まだまだ頑張れるはず、と考えて日々精進しています。夢は、好きな車で、大好きなワンコと一緒に、日本中の世界遺産を見て回ることです。
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