■35kW(47PS)アップは魅力だが流用チューンのコストは高すぎる?
「GR」モデルとして17年ぶりに復活したトヨタのFRスポーツカー「スープラ」が、日本での発売から一年足らずでビッグマイナーチェンジを発表しました。
なんと3.0Lエンジン(6気筒)モデルの最高出力が、2019年販売モデルの250kW(340PS)から2020年販売モデルでは285kW(387PS)へと大幅にアップしているというのです。これに伴い、0-100km/h加速性能も2019年販売モデルの4.3秒が、2020年販売モデルでは4.1秒へと短縮されたと発表されています。
これがECUのリファインによるものだとしたら、2019年販売モデルも同様のパワーアップが容易に可能と期待も高まりますが、すでに北米で発表されている通りに「これまでの2ポートから6ポートへと大きく変化したエキゾーストマニホールドによりターボチャージャーの能力を引き出すこと」と「ピストン形状を見直して、圧縮比を従来の11.0:1から10.2:1へと落としたこと」がパワーアップにつながっているとすると、同じようなパワーアップはそう簡単にはいかないと考えるべきです。
ヘッドとピストンが変わっているということは、純正パーツの流用チューンだとしても部品代・工賃ともに手軽というレベルでないことは明らかです。エンジンを降ろしてバラして、くみ上げてから載せるという作業が必要になるからです。細かい部品も変更されているでしょうから、実質的にはエンジンを載せ替えるくらいのイメージでなければ同じようなパワーユニットに仕上げることは望めないといえます。
とはいえオーナー心理としては、買ったばかりのスープラを買い替えるというのは納得できないでしょう。金銭的にいっても下取りと新車価格により買い替え時に発生する差額をチューニング資金と考えるとそのコストが妥当かどうか悩むところではないでしょうか。
もちろん、チューニングによって2020年販売モデル以上のパワーを目指すことは可能でしょうが、そこには”メーカー基準の耐久性”を無視できるのであればという条件付きとなります。
チューニングによるパワーアップというのは内容によっては将来的なリセールバリューにも難があるものです。ですから、285kW(387PS)にパワーアップした2020年販売モデルのパワーユニットに魅力を感じるのであれば、2019年モデルから乗り換えるという判断を否定することはできないと感じます。もっとも、2021年販売モデルで、さらにパワーアップしないという保証はありませんが……。
かのフェルディナンド・ポルシェ氏が”The newest car is always the best.(最新のクルマは常に最良)”という言葉を残したことはよく知られています。スポーツカーというのは毎年のように進化してこそ価値があるというわけです。
そうしたメーカーの姿勢を意気に感じるのであれば、やはり思い切って買い替えてしまうというのも、ひとつの見識といえるのかもしれません。
(自動車コラムニスト・山本晋也)