よりスムーズさをアップしたキャディのSUV 【キャデラックXT5試乗】

 ■キャデラックとしてはリーズナブルな設定

アメリカを代表する高級ブランドのキャディラック。かつて、日本でもそのブランドバリューは非常に高く、欧州ならロールス・ロイス、アメリカならキャデラックという扱いでした。

そうしたキャデラックが作った初のSUVが1990年代終盤に登場した大型のエスカレード。その後21世紀に入ってミドルサイズのSRXが登場、その後SRXは2代目のSRXクロスオーバーとなり、2017年に後継モデルとなるXT5クロスオーバーにバトンタッチされました。

試乗車は2019年にマイナーチェンジを受けたモデルで、現在はクロスオーバーの名は取れ「XT5」の車名となっています。

XT5 前7/3
2019の改良でグリルデザインなどを変更

搭載されるエンジンは2017年登場時と同様のV6・3.6リットルですが、組み合わされるミッションがデビュー当時と変わっています。

当初のトランスミッションは8ATだったのですが、現在は9ATにアップデートされています。その結果、走りの質もグレードアップされています。

もともとエンジンが最高出力が314ps・最大トルクが37.5kgmと十分なスペックを持っていますので、加速感をはじめとした動力性能は文句のないレベルを持ち合わせていますが、9速化によってよりスムーズさがアップしています。

駆動方式はフルタイム4WDなので、雨天時などの路面状況の悪い際の安定性も確保されています。

XT5 インパネ
のびのびとしたインパネ
XT5 エンジン
気筒休止システムを備えるエンジン

ほぼ2トンのボディをものともしない動力性能はさすがで、高速道路をクルージングしているとじつに快適です。しかし300psオーバーのスペックが必要かといえば、多くの場合はそこまで必要ありません。

ゼネラルモーターズもそのあたりはしっかりと理解していて、このXT5には6気筒のうち2気筒を休止するモードがあり燃費向上に貢献しています。今回の試乗でも休止モードはあったはずですが、それを感じることはありませんでした。

XT5 正面スタイリング
ボリュームのあるフロントスタイル
XT5 真横スタイリング
全長は4825mm、ホイールベースは2860mmとなる
XT5 真後ろスタイリング
バンパー下に足を入れリヤハッチを開くことも可能

ボディサイズは全長×全幅×全高が4825×1915mm×1700mmと、ミドルサイズとはいえかなりビッグで、日本の道路での取り回しにはそれなりに気を遣います。とくに気になるのは全幅で、都内では道を選ぶ場面もあるでしょう。また全高が高いためコーナリング時はそれなりにロールを発生しますが、路面のホールド感は失うことがなく安定しています。

試乗車は235/65R18タイヤを装着するプレミアムでしたが、プラチナムスポーツの場合はタイヤが235/55R20となり、さらに減衰力可変式のリアルタイムダンピングサスペンションが付きます。

XT5 フロントシート
フロントシートは8ウエイのパワーシート
XT5 リヤシート
リヤシートは6対4分割

乗り心地はゆったりとして快適で、ロングツーリング向きといえます。

ラゲッジの容量は標準状態でも850リットルとタップリとあります。リヤシートは6対4分割の可倒式で、最大ラゲッジ容量は1784リットルにもなります。ラゲッジフロアにはレールを装備し、フック類などの装着も可能となっています。

試乗したプレミアムなら650万円、上級のプラチナムスポーツでも785万円とキャディラックというブランドを考えるとかなりリーズナブル感のある価格設定となっています。

XT5 ラゲッジ
使いやすいラゲッジルーム
XT5 リヤ7/3スタイリング
プレミアムは18インチホイールを装備

(文・写真/諸星陽一)

【スペック】キャデラック XT5 プレミアム

●全長×全幅×全高: 4825×1915×1700mm
●ホイールベース:2860 mm
●タイヤサイズ:235/65R18
●車両重量:1990 kg
●エンジン:3L(V型6気筒DOHC)
●総排気量:3649cc
●最高出力:314ps/6700rpm
●最大トルク:37.5kgm/5000rpm
●燃料タンク容量:81L(無鉛プレミアム)
●車両本体価格:650万円

この記事の著者

諸星陽一 近影

諸星陽一

1963年東京生まれ。23歳で自動車雑誌の編集部員となるが、その後すぐにフリーランスに転身。29歳より7年間、自費で富士フレッシュマンレース(サバンナRX-7・FC3Sクラス)に参戦。
乗って、感じて、撮って、書くことを基本に自分の意見や理想も大事にするが、読者の立場も十分に考慮した評価を行うことをモットーとする。理想の車生活は、2柱リフトのあるガレージに、ロータス時代のスーパー7かサバンナRX-7(FC3S)とPHV、シティコミューター的EVの3台を持つことだが…。
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