旧車再生の基本・キャブレターを分解清掃する(前編)【49年前のCB125は直るのか?素人再生記 】

■エンジン不動はキャブレターを疑え!

●始動不能のバイクを診断する

入手した経緯から現状の確認までは前回お伝えした通りの、我がCB125。

前オーナーのお話では「エンジンがかかって走れる状態」とのことでしたが、見た目の通りで年式相応にヤレた状態。このまま走り出しても良いことはないでしょう。

また不動車を引き取ってきたのと同じ感覚でいるため、ひとまずエンジンが調子良く回るようにするためキャブレターを分解することにしました。

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1971年式ホンダCB125のキャブレター。

というのも、経験則から不動バイクはキャブレターの分解清掃で大抵甦ることを知っているからです。

クルマのように複雑な制御や電装系を持たないバイクは、エンジンさえかかってしまえばブレーキの整備で大抵復活します。

だから不動バイクが動かなくなった原因は大抵キャブレターが詰まってエンジンが始動しなくなるケースがほとんどと考えていいのです。

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1971年式ホンダCB125のキックペダル。

では、エンジンがかからないバイクでキャブレターが原因だと診断する方法をご紹介しましょう。

まず、キックペダルのあるモデルならカンタン。キックを踏み下ろしてクランクが回るかどうかを確認します。そのうえで踏み込んだ感覚から、エンジンの圧縮が足りているかどうかを判断するのです。

これは経験しないと難しいところなので、エンジンが始動するバイクで試してみるといいでしょう。稀にキックペダルが動かないものもあります。その場合は内部でギアが破損していることが考えられます。

つまりエンジンを分解する必要があることになります。

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1971年式ホンダCB125のスパークプラグ。

●慎重な作業を心がけよう

我がCB125の場合、前オーナーの言葉通りにキックペダルは降りるし圧縮も十分そうな手応え。プラグからもしっかり火花が飛びました。

つまり残る問題はキャブレターのみということになります。では早速、キャブレターを分解することにしましょう。

分解するにはエンジンからキャブを分離しなければなりません。エアクリーナー側インシュレーターの固定バンドを緩めて、エンジン側インテーク固定ボルトを緩めます。

さらに燃料タンクのコックをオフにして燃料ホースを外し、アクセルワイヤーが繋がるスロットルホルダーを外します。これでキャブは外れますので、エアクリ側ゴムからキャブをズラして取り出しましょう。

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この時注意すべきは、何事も慎重に作業することです。スロットルホルダーにはニードルジェットが付いていますので絶対に曲げてはいけませんし、エアクリ側ゴムを誤って切ったり破ってしまうと新品に交換するしかなくなります。

旧車によくある事例として、インマニ側ボルトを緩めるとネジ山をナメてしまうこともあります。

すると、次にキャブを固定しようとしてもできなってしまうのです。ヘリサート加工などで新たにネジ山を作らなければならなくなるので注意が必要です。

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1971年式ホンダCB125から分離したキャブレター。
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1971年式ホンダCB125からキャブレターを外す。

●キャブレターを分解する

我がCB125にはキャブが2つあります。気筒ごとにキャブが配置されているからです。

2つのキャブはチョーク・リンケージを介して連結されています。これを外して1つずつフリーにしましょう。リンケージを確認すると、なんとワッシャーと割りピンのみで連結されています。

折り曲げられている割りピンをまっすぐに戻して抜くと、ワッシャーとともにリンケージが外れてくれます。

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1971年式ホンダCB125のキャブレター・リンケージ。

2つとも同じ作業をするので、片方だけで手順を紹介しましょう。まずキャブ下側を見るとフロートチャンバーボディをボルトではなく棒のようなスプリングで固定してあります。これを指で外せばフロートチャンバーボディが外れます。

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キャブレターの下側。

外すと見えるのが2つのウキで構成されるフロートと、中央のメインと脇にあるスロージェットです。

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フロートチャンバーボディを外す。

フロートは根本のピンで固定されているだけですので、ピンを抜けばフロートが外れます。ジェットはマイナスドライバーで緩めますが、ジェットは真鍮でできているので必ずサイズの合ったドライバーを使いましょう。

注意しないとマイナスの溝をナメてしまいます。

フロートを外すとフロートバルブが現れます。ここも真鍮製なのでスパナではなくメガネレンチで緩めましょう。

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フロートバルブを外す。

また内部のバルブは簡単に取れるので紛失に注意しましょう。またフロートバルブには必ずパッキンが使われています。外したら原則新品交換ですが、再利用するなら傷をつけないようにしましょう。

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外したフロート、ジェット、フロートバルブ。

キャブボディ側の側面にあるのは中央側がスロットルストップスクリューで、右側がエアスクリューです。

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キャブレター側面のスクリューを外す。

この2つはアイドリングや燃調を決めるものなので、締め込むまでに何回転するか確認してから緩めましょう。組み直す時に最後まで締め込んでから同じ回転数だけ戻せば元に戻るからです。

また2つのスクリューは内部にスプリングが収まっていまするので、どちらのスプリングがどちらのスクリュー用か忘れないように気を付けましょう。

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外した2つのスクリューとスプリング。

フロートチャンバーボディはガソリンを貯めておく場所で、長年使用するとガソリンが気化したカスがこびりついているものです。ここを掃除するためキャブレタークリーナーなどを吹き付けます。

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フロートチャンバーボディにキャブレタークリーナーをスプレー。

キャブレタークリーナーをため込むようにスプレーして、ついでにジェット類も一緒に漬け込んでおくと一石二鳥です。このまま放置しますが、キャブレタークリーナーは気化してしまうので、できれば早めに洗浄しましょう。

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ジェット類も一緒に漬け込む。

ジェットやスクリューが外れたボディの穴という穴にキャブレタークリーナーをスプレーします。こうして内部を洗浄するのです。

念には念を入れて、外部を掃除した後も同じようにスプレーしましょう。

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キャブレターにクリーナーをスプレー。

説明が長くなるので今回はここまでです。次回はキャブレターボディを清掃して組み上げます。

(増田満)

この記事の著者

増田満 近影

増田満

複数の自動車雑誌編集部を転々とした末、ノスタルジックヒーロー編集部で落ち着き旧車の世界にどっぷり浸かる。青春時代を過ごした1980年代への郷愁から80年代車専門誌も立ち上げ、ノスヒロは編集長まで務めたものの会社に馴染めず独立。
国産旧型車や古いバイクなどの情報を、雑誌やインターネットを通じて発信している。仕事だけでなく趣味でも古い車とバイクに触れる毎日で、車庫に籠り部品を磨いたり組み直していることに至福を感じている。
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