ウィンドウフィルムの保安基準とは?透過率が70%以下のフィルムは不正改造【自動車用語辞典:保安基準編】

■眩しさや紫外線対策、ガラスの飛散防止などのメリットがあるが、安全第一で貼付

●視界を妨げることがないように場所とフィルム、ステッカーを選んで貼付

道路運送車両法の保安基準は、クルマの安全や環境性能に関する技術基準であり、自動車メーカーはこの基準に適合するようにクルマを開発し製造します。自分でクルマをチューニング、改造する場合も、保安基準に適合することが大前提です。

ウィンドウフィルムやステッカー関連の保安基準について、解説していきます。

●保安基準とは

保安基準は、道路運送車両法で定められた技術基準で、安全確保と公害防止などの観点から、自動車の設計製造のための各種の要件を規定しています。

燃料の規格からクルマの大きさや重量などの基本構成、パワートレインや足回り、内装・外装部品、灯火・警告音の構成、走行性能や排出ガス、騒音特性など、クルマに関わるすべての技術基準を規定しています。

また車検の検査基準であり、リコールの判断基準のひとつでもあります。

クルマのチューニングや改造のために交換部品や用品を装着する場合には、寸法や重量、各種の性能が変化する可能性があるので、あらためて保安基準に適合することを確認する必要があります。

以下に、ウィンドウフィルムやステッカー貼付関連の注意すべき保安基準について説明します。

●ウィンドウフィルムやステッカーの保安基準例

ウィンドウガラスに貼付するウィンドウフィルムは、ドレスアップとともに眩しさや紫外線対策のほか、プライバシー保護、ガラスが割れたときに破片の飛散を防止するという実用的なメリットがあります。

一方で透過性が悪いフィルムを貼付すると、視界が妨げられ運転に支障をきたします。

ウィンドウフィルムに関連する保安基準の代表例としては、以下があります。

・フロントガラスと前側(運転席、助手席)サイドガラスへの着色フィルムの貼付は違法
透明フィルムでも可視光線の透過率が70%に満たないものは違法です。最近は、標準仕様のウィンドウガラスで透過率が70%に近いクルマがあるので、注意が必要です。

・後側サイドガラスおよびリアガラスについては、上記規制の対象外
かなり濃いスモークフィルムでも違法ではありませんが、警察には怪しまれる可能性があります。

ステッカーなど貼付物に関する保安基準には、以下があります。

・フロントガラスにステッカーの貼付は禁止
検査標章や点検済ステッカー、保険標章、整備命令標章、保安基準適合標章は貼付可能です。

・フロントガラス内面に、視界を妨げるスマホやナビ、テーブルなどを吸盤等で固定するのは違法

・前側サイドガラスにステッカー類(透明でないもの)を貼付するのは違法
盗難防止用の標識(ステッカー、刻印)であれば、サイドガラスの貼付可能な範囲内であれば貼付可能です。

・ウィンドウにカーテンを付けることは問題ないが、走行中にカーテンを引いて内部を隠すのは違法

フィルム貼付の保安基準
フィルム貼付の保安基準

●不正改造で検挙された場合の対応

ウィンドウの透過率が70%に満たないフィルムを貼付して公道を走行すると、不正改造車として検挙される可能性があります。実際は、透過率が70%を下回っているかどうかの判断は難しいので、極端に濃い場合以外は検挙されないようです。

警察に検挙された場合は、15日以内に修正するように改善命令を言い渡され、クルマに日付の付いた不正改造車というシールが貼られます。

フィルムを除去するなど指摘事項を修正したら、運輸支局でクルマを提示してチェックを受けます。問題なければ、シールを剥がしてもらい改善終了です。減点などのペナルティはありません。

15日を過ぎても修正をしなければ、ナンバープレートや車検証が没収されます。


保安基準は、ユーザーが安心してクルマを乗り続けるための最低限必要な技術基準です。

ウィンドウフィルムには多くのメリットがありますが、重要なことは視界を狭める、見えづらくなることのないように、安全第一でフィルムを選んで貼付することです。

(Mr.ソラン)

この記事の著者

Mr. ソラン 近影

Mr. ソラン

某自動車メーカーで30年以上、自動車の研究開発に携わってきた経験を持ち、古い技術から最新の技術までをやさしく解説することをモットーに執筆中。もともとはエンジン屋で、失敗や挫折を繰り返しながら、さまざまなエンジンの開発にチャレンジしてきました。
EVや燃料電池の開発が加速する一方で、内燃機関の熱効率はどこまで上げられるのか、まだまだ頑張れるはず、と考えて日々精進しています。夢は、好きな車で、大好きなワンコと一緒に、日本中の世界遺産を見て回ることです。
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