エアロパーツの保安基準とは?サイズや重量、形状などに規定あり【自動車用語辞典:保安基準編】

■ドレスアップや改造するためには、保安基準の遵守が大前提

●後付けパーツの取り付けは、整備工場や専門店などに依頼するのが安心

道路運送車両法の保安基準は、クルマの安全や環境性能に関する技術基準であり、自動車メーカーはこの基準に適合するようにクルマを開発し製造します。自分でクルマをチューニング、改造する場合も、保安基準に適合することが大前提です。

ドレスアップの主役、エアロパーツと関連する保安基準について、解説していきます。

●保安基準とは

保安基準は、道路運送車両法で定められた技術基準で、安全確保と公害防止などの観点から、自動車の設計製造のための各種の要件を規定しています。

燃料の規格からクルマの大きさや重量などの基本構成、パワートレインや足回り、内装・外装部品、灯火・警告音の構成、走行性能や排出ガス、騒音特性など、クルマに関わるすべての技術基準を規定しています。

また車検の検査基準であり、リコールの判断基準のひとつでもあります。

クルマのチューニングや改造のために交換部品や用品を装着する場合には、寸法や重量、各種の性能が変化する可能性があるので、あらためて保安基準に適合することを確認する必要があります。

以下に、代表的なエアロパーツと関連する注意すべき保安基準について説明します。

●各種のエアロパーツ

エアロパーツには、レーシングカー用と一般車ドレスアップ用があります。代表的なのは、フロントスポイラーとサイドスカート、リアウィング/リアスポイラーの3点です。

・フロントスポイラーは、ボディ下面への気流によるフロント側の揚力(クルマを持ち上げようとする力)を抑えて、ダウンフォース(クルマを路面に押し付ける力)を強めます。

・サイドスカートは、、ボディ横からフロア下への空気の流れ込みを抑えて、後方への流れを整流する効果があります。

・リアウィング/リアスポイラーは、ボディ後方を流れる空気を整流して、揚力を抑えてダウンフォースを強めます。

ただし、これらの効果が発揮できるのは車速100km/hを超えるような高速走行の場合であり、一般道での効果は期待できません。

したがって一般車でのエアロパーツ装着は、見た目重視のドレスアップのためといえます。

エアロパーツは、愛車を自分好みに改造するための王道ですが、一方安易に選ぶと逆に空気抵抗を増やして燃費が悪化することもあるので、注意が必要です。

代表的なエアロパーツ
代表的なエアロパーツ

●エアロパーツに関する保安基準

エアロパーツを装着する場合、クルマのサイズと重量の変更の許容範囲は以下のとおりです。

・軽自動車と小型自動車の場合 長さ:±30mm、幅:±20mm、長さ:±40mm、車両重量:±50kg

・普通乗用車の場合      長さ:±30mm、幅:±20mm、長さ:±40mm、車両重量:±100kg

また、エアロパーツ関連の注意すべき保安基準としては、以下があります。

・最低地上高を90mm以上確保

・フロント、リアとも車体の最端より突き出でないこと

・エアスポイラーの装着は、溶接やボルト締めなどで強固に装着

・リアウィングは、ウィングの両端が車体の最外側から165mm以上内側に装着

・バンパー最下部より低い位置に鋭利な半径5mm以下の角がないこと


保安基準は、ユーザーが安心してクルマを乗り続けるための最低限必要な技術基準です。

ドレスアップや改造というとすぐに連想するのがエアロパーツですが、取り付けは整備工場や専門店などに依頼するのが安全面で安心です。

ルールを守ってカッコいいクルマに仕上げることこそ、クルマ好きの腕の見せ所だと思います。

(Mr.ソラン)

この記事の著者

Mr. ソラン 近影

Mr. ソラン

某自動車メーカーで30年以上、自動車の研究開発に携わってきた経験を持ち、古い技術から最新の技術までをやさしく解説することをモットーに執筆中。もともとはエンジン屋で、失敗や挫折を繰り返しながら、さまざまなエンジンの開発にチャレンジしてきました。
EVや燃料電池の開発が加速する一方で、内燃機関の熱効率はどこまで上げられるのか、まだまだ頑張れるはず、と考えて日々精進しています。夢は、好きな車で、大好きなワンコと一緒に、日本中の世界遺産を見て回ることです。
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