PL法とは?クルマの欠陥から生じた事故の損害賠償をメーカーに負わせる製造物責任法【自動車用語辞典:クルマの法律編】

■欠陥のあるクルマで事故が起こり、それによって損害を受けた場合に損害賠償の請求が可能

●被害者が損害の原因と車の欠陥の因果関係を立証する必要があり、成立のハードルは高い

クルマの欠陥によって発生した事故で、ユーザーが何らかの損害を受けた場合は、製造者(自動車メーカー)に損害賠償を求めることができます。この法律を「PL法(製造物責任法)」と言います。

欠陥のある商品からユーザーを守るPL法について、解説していきます。

●リコール制度

クルマは、機械であり人間が造るので、不具合のないクルマを製造することは不可能です。

欠陥や不具合による事故を未然に防ぐのが「リコール制度」であり、発生した事故に対してメーカーに損害賠償責任を求めるのが「PL法」です。

リコールは、市場のクルマが保安基準に適合してない、あるいは適合しなくなる可能性があり、その原因が設計または製造過程にある場合に、自動車メーカーが責任をもって無償で回収、修理する制度です。

リコールするかどうかは、次の3つの要件を基準に判断されます。すべてを満たす場合に、メーカーは国交省に届け出てリコールを行います。

・保安基準不適合

・設計または製造過程での不具合が原因

・危険性や多発性が高い

●PL法(製造物責任法)

PL法は、クルマの欠陥によってユーザーが何らか(人命や身体、財産など)の損害を受けた場合に、その責任が製造者にあるとし、損害賠償を求めることができる法律です。1960年代にアメリカで法制化され、日本では1995年に施行されました。

PL法によって、ユーザーがメーカーに対して損害賠償を請求しやすくなりました。メーカーにとっては、誤使用や誤操作のような従来ならユーザーの過失とされたものが、場合によってはメーカー責任が問われる可能性が出てきました。

損害賠償を受けるためには、次の3つの条件を明確にしなければいけません。

・クルマに欠陥がある。

・欠陥によって生命や身体、財産などに損害を受けた。

・損害の原因がクルマの欠陥である。

実際には、3番目の欠陥と損害の因果関係を証明するのが難しく、PL法を成立させるのは非常に難易度が高いです。

●PL法で定義される対象物とは

PL法の対象となるのは、「製造または加工された動産」と定義され、「製造」とは部品または原材料に手を加えて新たな物品を作り出すこと、「加工」とは物品に手を加えてその本質を保持しつつ新しい属性または価値を付加することです。

例えば、未加工の農産物などはPL法の対象にはなりませんが、加工して漬物にすると対象になります。また、ソフトウェアにはPL法は概ね適用されず、ソフト製造者は責任を負われません。ソフトは、動産でないからという理由からです。

●PL法で定義される欠陥とは

欠陥とは、「製造物が通常有すべき安全性を欠いていること」と定義されています。

・設計上の欠陥

設計段階で検討や確認が不十分で、製造物の安全が確保されていない。

・製造の欠陥

製造過程で組付け不良や粗悪な材料の混入などによって、設計仕様通りの物が製造できていない。

・指示や警告上の欠陥

回避できない危険性に対して、その危険性を防止、回避するための適切な表示や情報を製造者からユーザーに提供していない。


PL法によって、メーカーの責任領域が拡大したと言えます。訴訟社会といわれるアメリカでは、完全にユーザー責任と思われるような事故でも、メーカーの責任を問う訴訟が頻繁に起こっています。

日本では、連日のようにリコールの発動報道が続いていますが、自動車関連でPL法が成立したという話はほとんど聞きません。

この記事の著者

Mr. ソラン 近影

Mr. ソラン

某自動車メーカーで30年以上、自動車の研究開発に携わってきた経験を持ち、古い技術から最新の技術までをやさしく解説することをモットーに執筆中。もともとはエンジン屋で、失敗や挫折を繰り返しながら、さまざまなエンジンの開発にチャレンジしてきました。
EVや燃料電池の開発が加速する一方で、内燃機関の熱効率はどこまで上げられるのか、まだまだ頑張れるはず、と考えて日々精進しています。夢は、好きな車で、大好きなワンコと一緒に、日本中の世界遺産を見て回ることです。
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