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■市場から不完全なクルマを除外する制度
●保安基準不適合の不具合が多発、それがメーカー責任の場合にリコールを実施
自動車メーカーが、あるモデルで〇万台のリコールを国交省に届け出たという報道が、結構な頻度で発表されます。リコールは、自動車メーカーが設計、製造過程の問題に起因する不具合を自主的に無償で回収、修理する制度です。
かつてリコール隠しなど社会問題を引き起こしたこともあるリコール制度について、解説していきます。
●リコール制度とは
リコールは、工業製品全般の不具合、事故を未然に防止する目的で1969年から始まった制度です。道路運送車両法の環境・安全に関する保安基準に適合しない、適合しなくなる可能性があり、その原因が設計または製造過程にある場合(製造者責任)に、その旨を国交省に届け出て自動車メーカーが責任をもって無償で回収、修理する制度です。
リコール同様、国交省に届け出て不具合を自主回収、修理する制度に「改善対策」があります。
改善対策は保安基準不適合ではありませんが、環境、安全上放置できなくなる可能性があり、その原因が設計、製造過程にある場合の対応です。
またリコールと改善対策に該当しない、商品性や品質の改善のために無償で回収、修理する「サービスキャンペーン」という処置もあります。
●リコールとなる要件
リコールとなるかどうかは、次の3つの要件を基準に判断され、すべてを満たす場合にリコールとなります。
・保安基準不適合
道路運送交通法の環境、安全に関して保安基準に不適合、または放置すると不適合になる恐れがある不具合です。
・設計または製造過程での不具合が原因
製造者責任かユーザー責任かは判断しづらい点もありますが、危険性や多発性が高いと通常は製造者責任になります。
・多発性
多発性がなく不具合が拡大する恐れがない、偶発的な不具合は対象とはなりません。
●リコールの流れ
メーカーには、市場からの不具合を収集分析し、リコールなどの市場対応法を判断する品質管理部門が設置されています。
以下の流れで、リコールの判断と対応が行われます。
・クルマに不具合、故障が発生したユーザーから、販売会社に苦情、修理依頼が届きます。
・メーカーは、販売会社からのクレーム情報を集めて分析し、さまざまな調査や再現試験を行います。
・不具合の保安基準への適合性や重大性、発生頻度など総合的に判断して、要すればリコール対応します。
・メーカーから国交省大臣宛にリコール届を提出します。同時に、回収、修理に備えて修理の準備や交換部品の手配を進めます。
・ユーザーにリコール通知を行い、販売会社や整備工場などでリコール対象車を回収、修理を行います。
●国交書の役割
リコールは、メーカーが自主的に行うのが基本です。ただしメーカーは、積極的にリコールを実施することを避ける場合があるので、国交省がメーカーに勧告、命令することによって、リコールする場合もあります。
国交省でもリコールの迅速かつ確実な実施のための、一般ユーザーからの不具合情報を「不具合情報ホットライン」を通じて収集しています。また必要な場合には、自動車技術総合機構交通安全環境研究所に委託して、技術的検討を行ってリコールの判断材料とします。
その上でメーカーと協議して、場合によってはリコールの勧告、命令を行います。
市場で不具合や事故を起こさない高品質のクルマを提供することが、メーカーの使命です。一方で、完璧な技術やクルマを製造することは不可能という現実もあります。
したがって、リコールは不完全なクルマを市場から除外する制度であると同時に、リコールによって改良してより高品質なクルマを提供するという側面もあります。
(Mr.ソラン)