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■ペダル踏み間違い事故が起こりにくいのもMT車の利点
マニュアル車、いわゆるMT(マニュアル・トランスミッション)車は、今や国産の新車では少数派ですが、自分で操る楽しさが味わえるなどのメリットがあります。
特に、コンパクトカーや軽自動車など小型車の場合、エンジンにパワーがない分、変速のタイミングなどを自分で決められるなどで、MT車に乗り慣れている人であれば自在にクルマを操ることができるでしょう。
また、近年社会問題となっている高齢者などのペダル踏み間違いによる誤発進事故についても、MT車はクラッチを上手く繋がないとエンストしてしまうため、AT(オートマチック・トランスミッション)車と比べると起こりにくいといえます。
ここでは、そんな意外にメリットが多いMT車の中から、人気のコンパクトカーや軽自動車に設定があるモデルを幾つかピックアップしてみます。
なお、ここで紹介するのは、アクセル・ブレーキ・クラッチの3ペダルがあるモデルに限定。ATモード付きシーケンシャルトランスミッション車やパドルシフト付きAT車は除外しています。
●トヨタ・ヤリス
人気コンパクトカーのヴィッツから、フルモデルチェンジと共に車名を変更した「ヤリス」。
ラリーなどモータスポーツでの使用を前提にした高性能グレードのGRヤリス(2020年夏発売)には6速MTが搭載されることが発表されていますが、実はスタンダードのモデルにも設定があるのです。
ヤリスには、エンジンの排気量で分けると1.5Lエンジンのハイブリッド車、1.5Lと1.0Lエンジンのガソリン車といった3タイプの仕様があります。さらに、1.5L仕様には2WD(前輪2輪駆動)と4WD(4輪駆動)があるのですが、その1.5Lガソリン車の2WD仕様は、6速トランスミッションを採用したMT車の設定があります。
MT仕様に搭載するエンジンは1490cc・直列3気筒で、最高出力120ps/6600rpmを発揮。最大トルクは14.8kgf-m/4800〜5200rpmと、中々パワフルな仕様となっています。
また、WLTCモード燃費は19.6km/リットル。さすがにハイブリッドモデルの35.4〜36.0km/リットルや、AT(CVT)仕様の20.2〜21.6km/リットルほどではありませんが、操る楽しさを味わえるのなら十分な数値でしょう。価格(税込)は1.5LのMT仕様で154万3000円〜です。
●トヨタ・カローラスポーツ
トヨタが世界に誇るカローラ・シリーズの5ドアハッチバックモデル「カローラスポーツ」。スポーティな内外装を持つコンパクトスポーツです。
2019年に内外装が一部改良された現行モデルには、1.2L・4気筒ターボエンジン車と1.8Lの4気筒エンジン+モーターのハイブリッド車があります。
さらに、1.2Lターボ仕様には2WD(FF)と4WDがありますが、2WDのグレードに「i-MT」という6速MTを装備しています。i-MTは、インテリジェント・マニュアル・トランスミッションの略で、シフトアップやシフトダウンの変速時や発進時に自動で最適なエンジン回転数に合わせてくれる機能。これにより、MT車を操る楽しさをより味わえるというのが魅力です。価格(税込)は216万9200円〜です。
●マツダ・MAZDA 2/MAZDA 3 FASTBACK
クルマを操る楽しさを提供するという意味で「Be a driver」のフレーズをテレビCMなどで展開するマツダは、ここ数年様々な車種にMT車の設定を積極的に行っています。
コンパクトカーのジャンルでも、モデルチェンジに合わせてデミオから車名を変えた「MAZDA 2」やアクセラから車名を変えた「MAZDA3」にもMT車の設定があります。
MAZDA 2では、1.5Lガソリンエンジンの「SKYACTIVG-G 1.5」搭載車、1.5Lディーゼルエンジンの「SKYACTIVG-D 1.5」搭載車のほとんどのグレードに6速MT仕様を設定(いずれも特別仕様車White Comfortを除く)。価格(税込)は157万3000円〜です。
一方のMAZDA3では、5ドアハッチバックのFASTBACK(ファストバック)に、やはり6速MT仕様を設定しています。1.5Lガソリンエンジンの「SKYACTIV-G 1.5」搭載車に採用(2.0Lガソリン車と1.8Lディーゼル車には未設定)。
また、SPCCI(火花点火制御圧縮着火)という新技術とマイルドハイブリッド機構により走行性能と低燃費を両立した新型ガソリンエンジン「SKYACTIV-X」搭載車にも、6速MT仕様があります。価格(税込)は222万1389円〜です。
●日産・ノート ニスモS
日産が誇るコンパクトカー、ノートの高性能仕様「NISMO(ニスモ) S」は5速MT仕様です。
ニスモは、レースファンはよくご存じだと思いますが、日産自動車のモータースポーツ活動などを行う子会社であるNISMO(ニッサン・モータースポーツ・インターナショナル)が手掛けるブランド。レースで培った技術により、日産製のクルマを独自にチューニングしたコンプリートカーなどの販売を行っています。
ノート ニスモSも同様のコンプリートカーで、外装パーツやサスペンションなどをチューニング。1.2Lと1.6Lの2タイプあるガソリン車のうち、1.6Lバージョンに5速マニュアル・トランスミッションを採用。専用チューンが施されることで、軽快な走りを実現しています。価格(税込)は237万1600円です。
●スズキ・ジムニー/ジムニー シエラ
軽自動車ながら、オフロードの走破性を高めた本格装備が人気の4WD(4輪駆動)車「ジムニー」にも5速MT仕様があります。
エンジンは、0.66Lの直列3気筒インタークーラーターボで、最高出力64ps/6000rpm・最大トルクは9.8kgf-m/3500rpmを発揮。電子制御式ブレーキLSDトラクションコントロールなど最新技術も採用し、悪路などでも優れた走破性を発揮します。
5速MTは、XC、XL、XGの全グレードに設定。価格(税込)は148万5000円〜です。
また、ジムニーの兄弟車で、やや車格を大きくし1.5Lの直列4気筒エンジンを搭載した4WDモデル、「ジムニー シエラ」にも同じく5速MT仕様が設定されています。
こちらも、JCとJLの全グレードに5速MTを設定。価格(税込)は179万3000円〜です。
ちなみに、スズキの軽自動車には、ほかにもアルトのFグレード(2WDと4WDの両方、税込価格86万3500円〜)、ワゴンRのFAグレード(2WDと4WDの両方、税込価格109万8900円〜)などにも5MT仕様があります。
●ホンダ・N-VAN
最後は軽商用バンを1台。ホンダの「N-VAN」にもMT仕様の設定があります。
0.66Lの直列3気筒エンジンを搭載したトールワゴン系のスタイルに、助手席側のセンターピラーをなくしたドアインピラー構造や、後席と助手席を倒せばフラットになるダイブダウン機構などを採用。独自の安全運転支援システムであるホンダセンシングも搭載し、衝突被害軽減ブレーキなど10の先進機能も装備しています。
価格(税込)は129万1400円〜、軽バンのN-VANのほかにも、質感の高い内外装でレジャーユースも想定したN-VAN +STYLE FUNやN-VAN +STYLE COOLなど、多くのグレードに5速MT設定があります。
(文:平塚直樹 写真:トヨタ自動車、日産自動車、マツダ、スズキ、本田技研工業)