緊急事態宣言が自動車業に界及ぼす影響。期待できるクルマのミライとは?

■自動車教習所は休業要請の対象。レンタカーは利用可能だが…

改正新型インフルエンザ等対策特別措置法に基づく「緊急事態宣言」が発出されました。とはいえ、この宣言には国民の活動を規制するだけの強制力はありません。あくまでも国民の自主性を尊重したものです。

各人が自分で考え、節度のある行動をしてCOVID-19(新型コロナウイルス)を乗り越えてほしいという宣言といえます。まさに、民主主義からウイルスへの宣戦布告です。この戦いに勝つことができれば、それこそ日本の民度が高いということになるでしょう。

さて、緊急事態宣言ではいくつかの施設に対して休業を要請することになっています。ライブハウスなどの劇場、ナイトクラブやゲームセンター、パチンコ店などの娯楽施設、バッティングセンターやプールなどの運動施設などが対象になっています。自動車関連でいえば自動車教習所は休業要請の対象に挙げられていますし、営業自粛をするサーキットの情報も入ってきています。なお、教習所では教習期限や検定期限が気になりますが、そのあたりは柔軟な対応が予想されます。

一方で、電車、バス、タクシー、レンタカー、船舶、航空機などの交通機関については社会生活を維持する上で必要ということで、感染防止策をとることは求められていますが、従来通りに営業が可能となっています。レンタカーにはカーシェアリングサービスも含まれますが、ユーザーとしてはステアリングなど触れる部分の消毒をするなど自衛が必要となるでしょう。そもそも不要不急の外出はこれまで以上に避けるべきですから、カーシェアリングを利用するにしても本当に必要な行動なのか、しっかり考える必要があります。

このように自動車の利用は制限されませんからガソリンスタンドや整備工場も、少々の時短はするでしょうが営業は続けると考えられます。もっとも、お店によっては自主的に休業する可能性もあるでしょう。また、セルフのガソリンスタンドでは燃料ガンを誰が触ったかわかりませんから、ユーザーとしてはなんらかの自衛を考えたほうがいいでしょう。フルサービス店のほうが安心といえるかもしれません。

活動の自粛によって経済が沈んでいることの対策もすべきですし、自動車業界としてはディーラーに行って、クルマを買って欲しいと思う部分もあるでしょうが、いまは他人との接触機会を減らすことを最優先すべきタイミングです。仕事で必要というのであれば仕方ありませんが、急を要しているわけでもないのに見積もりを取りにディーラー巡りをするというのは褒められた行動とはいえません。整備についても、たとえばそのエンジンオイルの交換は本当に必要なタイミングなのか考えるべきです。もちろん必要なメンテナンスはすべきですが、本当にこのタイミングでどうしてもしなければいけないのか、しっかりと判断してほしいと思います。おのおのドライバーのマインドや行動がCOVID-19に打ち勝つには必要です。

ちなみに、自動車メディアに関していえば、各メーカーが広報車の貸出を取りやめたり、広報セクションの活動が縮小したりすることによって、いわゆる新車を試乗してその印象や感想をまとめるといった記事は作れなくなりました。そうした状況は日本だけでありませんので、海外からの情報も大幅に減るでしょう。

しばらくは緊急事態宣言前に仕込んだ試乗記がメディアを賑わせているかもしれませんが、その後はアイデア勝負の記事が出てくることでしょう。そうした記事は「つまらない」と感じるかもしれませんが、どんな視点の記事が生まれてくるのかを楽しんで欲しいと思います。

外出自粛と聞くと、家で鬱々としてしまうと悪いイメージが浮かぶかもしれませんが、クルマの楽しみ方に新しい視点が生まれるきっかけになって、さらに自動車文化が深まる可能性もあります。クルマ好きとしては不要不急の外出を控えつつ、「禍を転じて福と為す」ことを期待しましょう。

(自動車コラムニスト・山本晋也)

この記事の著者

山本晋也 近影

山本晋也

日産スカイラインGT-Rやホンダ・ドリームCB750FOURと同じ年に誕生。20世紀に自動車メディア界に飛び込み、2010年代後半からは自動車コラムニストとして活動しています。モビリティの未来に興味津々ですが、昔から「歴史は繰り返す」というように過去と未来をつなぐ視点から自動車業界を俯瞰的に見ることを意識しています。
個人ブログ『クルマのミライ NEWS』でも情報発信中。2019年に大型二輪免許を取得、リターンライダーとして二輪の魅力を再発見している日々です。
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