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●車検はナゼ必要なのか、車検とはどういうことなのか、を理解しよう
クルマを持っていると2年に1回(業務用や貨物自動車は1年に1回)、必ず取得しなければならないのが車検です。
そもそも車検とは、なぜ必要なのでしょうか。取得しなければならない理由や、その仕組みが分からないまま、決まり事だからということで、受けている車検とは何なのか、解説していきます。
・クルマは登録しなければ公道を走ることができない
クルマを公道で走らせる際には、自動車検査登録制度という仕組みによって決められた検査に合格し、国に登録申請をする必要があります。この決められた検査が車検であり、検査に合格し、無事登録が済むと車検証が発行されます。車検証とともに、車検に合格していることを証明してくれるのが車検標章です。
車検には新規検査と継続検査の2種類があります。自動車メーカーの工場から出荷され、まだ一度も公道を走っていないクルマや、中古車でも車検満了日を過ぎてしまい、車検証が無いクルマは、2種類ある車検の中の「新規検査」を受けて車検証とナンバープレートを発行してもらいます。自動車業界では通称「登録」と呼ばれ、車検整備を行いますが、一般的に呼ばれる車検とは区別されています。
私たちが普段使う「車検の時期が来ちゃって」「そろそろ車検だな」という会話の中での車検が「継続検査」で、車検証に記載された有効期限内に検査を行い申請することにより、有効期限を延長させるものです。継続検査に合格するためには、クルマが道路運送車両法に定められた保安基準に適合しなければなりません。
・車検に通ったから故障しない、壊れないというわけではない
車検後にクルマの調子が悪くなると「車検をやったばかりなのに、なぜ故障したの?」思うのではないでしょうか。先に述べたように、車検(継続検査)に通るということは、保安基準に適合したクルマということを公的に証明されただけであり、故障しない・調子が良いということを保証されたわけではありません。
保安基準に適合しているという状態の具体例は、クルマが真っ直ぐ走るか、スピードメーターは狂っていないか、ライトの高さや明るさは適正か、排気ガスの濃度は適正か、ブレーキの制動力は十分か、下回りや足回りに油脂類の漏れや不整合な部分はないかといったものです。
また、不要な反射板をつけていないか、走行中に歩行者などに不必要な危険を与える状態ではないか、フロントガラスに不必要な視界を遮るものが付いていないかといった点もチェックします。
すなわち、みんなが走る公道を使用するために、最低限安全に走行でき、他車に迷惑や危害を与えないクルマであることを検査しているだけなので安全走行可能なクルマの証明ではありますが、そのクルマが調子良好である証明ではないということです。車検を通したから、あと2年は快適に乗れるはずだ、ということが保証されたわけではないことを理解しておきましょう。
・様々な場所で受けられる車検、費用がそれぞれ違うのはナゼ?
自動車ディーラーはもちろん、ガソリンスタンドや車検を専門に扱う整備工場など、様々な場所で車検の受付を行っていますが、その費用はバラバラです。整備工場では10万円の見積もり、ガソリンスタンドでは15万円、自動車ディーラーでは20万円の見積もりになるというケースは、珍しいことではないでしょう。
そもそも車検を通す(継続検査を受検する)だけならば、必要な費用は決まっています。最低限、必ずかかる費用は法定費用と言われる、重量税、自賠責保険料、印紙代です。これを支払い、ユーザーが自分で居住地にある陸運支局へクルマを持ち込み、各種書類の手続きを行って、検査ラインで検査員の指示に従ってクルマを操作して、クルマが保安基準に適合させるのがユーザー車検と呼ばれ、最も車検費用を安く済ませる方法の一つです。
ユーザー車検では、運輸支局内にある、検査ラインを自分が運転して通していきます。
ユーザー車検に必要な作業を専門的に代行する会社もあります。車検代行専門店と呼ばれ、ここに依頼し、手続き代行手数料や保安基準に適合しなかった場合の整備費用を支払えば車検を通すことができます。ユーザー車検よりも手数料やかかった整備費用分、支払う金額は高くなります。
陸運支局へクルマを持ち込まない車検の形態もあります。多くの自動車ディーラーや、一部のガソリンスタンド等は、指定自動車整備事業所となっています。これは、陸運支局から、車検整備の代行許可を得ている整備工場のことで、店舗の中に、保安基準検査を行うラインがあり、整備をするメカニックが自動車検査員の資格を保有しているため、陸運支局へ直接クルマを持ち込まなくても、自店舗の中で車検整備が可能です。
「スピード車検」「クイック車検」と銘打って、90分程度の短時間で車検を通すことができるのは、指定自動車整備事業所として認められており、お店の中で車検を完結することができるからです。
クルマを安全、安心な状態でユーザーに届けたい自動車ディーラーでは、法定費用と車検代行手数料の他に、各種部品・油脂類の交換やクルマの好不調を判断し、不調になりそうな部分を整備して、クルマの好調を保つ整備をするため、多くの部品代や工賃が上乗せされます。そのため、ユーザー車検や車検代行専門店よりも、車検費用が高くなってしまいます。
費用が高くなる要因は、整備費用や部品代ということを理解しておかなければなりません。
費用が高くつくイメージのディーラーでの車検は、車検後の安心料を払っていることになるでしょう。部品代や整備費を削り取ることで、車検費用を抑えることはできますが、その後のクルマの調子までは保証できなくなるので、削りすぎも注意が必要です。
先に上げたように「車検を通す=クルマの調子がいい」の方程式は、十分な整備を行って、しっかりと費用をかけた車検をすることで成り立っていきます。
・まとめ
車検とは、クルマを保有し公道を走行するために、必要な法律を遵守するものです。法律は守らなければなりませんが、そこにかける費用は、ユーザーの考え方によって大きくなったり小さくなったりします。最低限の費用で済むユーザー車検を選択するのも一つの方法ですし、安心代と割り切って、トータルメンテナンスを行ってくれる自動車ディーラーに依頼するのも良いでしょう。車検の仕組みとルールをしっかり理解すれば、車検に対するイメージも変わっていくのではないでしょうか。
(文:佐々木 亘)