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■夜間の安全運転のため、欧州車を中心にナイトビジョン搭載モデルが増加
●最大の特長は、暗くても見える、温度情報が得られる、煙や霧を透過しやすいこと
夜間運転は、視界が悪く対向車の眩惑などもあり、事故の発生確率が高くなります。赤外線イメージセンサーは、このような夜間運転の問題を解決して安全性を高める技術として注目され、すでに複数のメーカーがナイトビジョンシステムとして採用しています。
今後採用が期待される赤外線イメージセンサーについて、解説していきます。
●赤外線イメージセンサーの特長と用途
赤外線は、可視光よりも波長が長く、人間の目では見ることができない光です。波長によって、近赤外線、中赤外線、遠赤外線があり、例えばサーモグラフィやナイトビジョンは遠赤外線、化学物質の特定は中赤外線、インターフォンや監視カメラの撮像は近赤外線を使っています。
可視光と比べると、照明が不要(暗くても見える)、温度情報が得られる、煙や霧を透過しやすいなどのメリットがあります。
赤外線を使ったセンシングとしては、アクティブ型とパッシブ型の2種に大別できます。
・アクティブ型は、対象物に赤外線を照射して、対象物からの反射光を受光して対象物を検出します。
・パッシブ型は、測定対象の反射光や自ら発する光を検出します。また、物体から放射される赤外線エネルギーの熱を、熱電対の原理で電圧に変換して温度を計測できます。
可視光を使ったセンシングでは、ほとんどの対象物が可視光を発しないため光源の特定ができません。
自動車用への赤外線の活用例として、夜間撮像システム、車両周囲モニター、エアコンシステムについて以下に紹介します。
●夜間撮像(ナイトビジョン)システム
自動車へもっとも早く適用、実用化された赤外線技術は、夜間撮像システムです。人や動物など熱を発する物体や見えにくい物体を映像化して、ヘッドアップや液晶パネルに映し出します。
遠赤外線を用いたパッシブ型は、歩行者などからの放射を直接検出するのでライト(照明)が不要です。
一方、近赤外線を利用するアクティブ型は、専用の近赤外線ライトで前方を照射して、その反射光を近赤外線カメラで撮影します。
遠赤外線方式は、GMやホンダ、BMWが、近赤外線式はトヨタが実用化しています。
現在、欧州と日本ではNCAP(自動車アセスメント)で夜間歩行者を対象とした自動ブレーキの評価が行われており、特に欧州車ではナイトビジョンシステムを積極的に採用しています。
●車両周囲モニター
日産は、先進安全のデモ車で車両4隅に搭載した赤外線カメラによって、死角の歩行者を検知して、発進時に歩行者がいる場合は警報とともに、発進を抑止するシステムを開発しています。
4台の赤外線カメラは、車両停止時に取得した画像と発進時の画像を比較して、既定の温度および大きさの熱源を検知した場合には、その熱源を歩行者として認識します。
また、赤外線検知機能付きリアビューカメラで合成表示することによって、死角内の歩行者をより分かりやすく表示することも提案されています。
●エアコンシステム
車室内の乗員や内装表面から放射される遠赤外線を受光して温度を計測し、空調制御に利用するシステムが、一部車種で採用されています。
トヨタ・レクサスなどの高級車では、同時に6箇所の温度を計測できるマトリクス赤外線センサーを使って、後席各乗員の温感を察知して最適制御しています。
欧州と日本のNCAPでは、夜間歩行者を対象とした自動ブレーキの評価が実施され始め、夜間の安全性向上が現在の大きな課題となっています。
こうした状況を背景に赤外線イメージセンサーは、「新しい目」のセンシング技術として注目されています。
(Mr.ソラン)