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■エアバッグの他、ABS(アンチロックブレーキ)やESC(横滑り防止)などの車両制御システムにも活用
●ピエゾ抵抗型または静電容量型センサーで加速度を検出
加速度センサーは、車両に加わる衝撃や振動、傾きなどを計測できるため用途は広く、特にエアバッグの展開信号のような安全システムや車両運動制御などに多用されています。
高い応答性と信頼性が求められるエアバッグ用の加速度センサーの原理や使用法について、解説していきます。
●エアバッグの役割
エアバッグは、衝突時にシートベルトで乗員の姿勢を適正に保ちつつ、瞬時にエアバッグを膨らませて衝撃を吸収して安全を確保します。あくまでも乗員がシートベルトを装着していることが前提で、シートベルトの機能を補助する役割を果たします。
エアバッグは、最初にドライバー保護のために運転席のステアリング内に、続いて助手席のインパネ内に装備されました。さらにサイドエアバッグ用に座席内、カーテンエアバッグ用にルーフライニング内と、より安全性の向上を目指して多くの場所に装備される傾向にあります。
●エアバッグの動作原理と制御
衝突時、車両前方に装着された加速度(衝撃検知)センサーとECU内に装着された加速度センサーが衝撃を検出します。応答が速い加速度センサーは局所的な衝撃でも反応してしまうので、衝突の判定はECU内の加速度センサーの情報と合わせて、総合的に判断します。
エアバッグの展開が必要と判断された場合には、点火装置で着火してインフレーター(ガス発生装置)を作動させ、大量のガスを発生させます。
発生したガスは、バッグの中に充満し圧力を上昇させてステアリングカバーを破り展開します。衝突を検知してから、運転席なら0.02~0.03秒、助手席なら0.03~0.04秒後に展開が完了します。
●加速度センサー
エアバッグ用加速度センサーには、2つの検出法があります。
半導体の電気抵抗の変化を利用したピエゾ抵抗型と、くし歯電極の可動部と固定部のギャップ変化を静電容量で検出する静電容量型です。
ピエゾ抵抗型式に対する静電容量式のメリットは、温度の影響を受けづらいこと、静電気力を利用し仮想的な加速度を発生させて自己診断の機能を持つことです。
加速度センサーは、エアバッグの他、ABSやESC(横滑り防止)などの安全システムや車両制御システムで多用されています。
これらのシステムでは、万一加速度センサーが故障すると致命的なトラブルになるので、信頼性の観点から自己診断機能が付加できる静電容量式が、現在は主流になっています。
●静電容量式加速度センサーの原理
シリコン基板上に、重りとそれを指示する梁と基板に固定するアンカー部が形成されており、重りにはくし歯電極が設けられています。くし歯電極は重り側から形成されている可動電極と基板側から形成されている固定電極からなり、双方の電極が対向して静電容量を形成します。
基板水平方向に加速度が加わると、重りが変位します。重りの変位により可動電極と固定電極の間隔が変わり、静電容量が変化して加速度が検出されます。
エアバッグ用加速度センサーのような安全装置システムに使われるセンサーには、高い応答性と信頼性、耐久性などが求められます。
エアバッグは交通事故が発生した際には、ドライバーと乗員の命を守ってくれる最後の砦となるので、加速度センサーの役割は重要です。
(Mr.ソラン)