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●JALやANAが実用化を目指す空港内の新しい移動手段
「自動運転」というと自動車をイメージしがちですが、実は高齢者や障がい者の方々が使う「車いす」の分野でも自律走行技術の開発が進んでいます。
ここでは、空港での活用を目指した大手航空会社の実証実験を例に、その潮流を紹介しましょう。
●自動運転化した電動車いすを羽田空港で実験
JAL(日本航空)は、11月2日・3日の2日間、東京・羽田空港で「自動運転型電動車いす」の試験走行を実施しました。これは、高齢者や障がい者、怪我などで足が不自由な方々などが、空港内で移動するための新サービスとして実用化を目指しているものです。
電動車いすメーカーの「WHILL(ウィル)」などと共同で行われたこの実験では、WHILLが製作した電動車いす「WHILL Model C(ウィル・モデル・シー)」をベースに、自律走行が可能な機能を搭載した車両が使用されました。
主な技術としては、左右アーム部分に装備した広い視野角のステレオカメラや、後方のセンサーなどで周囲の人や物体を検知。また、それら情報と事前に登録している空港内の地図情報と照らし合わせることで、安全な自動走行を可能としています。また、操作は全てスマートフォンで簡単にできるほか、操作スティックを使えば手動運転も可能です。
実験は、羽田空港第1ターミナル南ウイングにある3-9番搭乗口とコンコース間で実施。車いす利用者を含め空港内での長距離歩行に不安を感じる高齢者など、一般からの参加者が実際に試乗。体験した30代から80代までの十数組からは、「旅行はしたいが長い距離を歩くのが大変なのでうれしい」など、概ね好評な感想が出たようです。
●成田空港でも1人乗りモビリティで実験
一方、ANA(全日本空輸)でも、2020年2月27日から28日に成田国際空港で同様の実験を行っています。こちらは、クルマの自動運転開発も手掛ける企業「ZMP(ゼット・エム・ピー)」が開発した1人乗りモビリティ「RakuRo(ラクロ)を使用しました。
レーザー照射で人や建物など物体を検知する3D LiDARやステレオカメラ、リヤカメラなどを搭載するほか、空港内の地図情報なども活用しています。こちらも、操作はスマートフォンを使って直感的に行うことができます。
関係者のみで行われた今回の実験は、一般客が行き交うターミナルビル内で実施されました。人混みの中でRakuRoは、決められたルート上にある人や障害物などを検出し、必要に応じて自動停止したり、回避するなどで安全性の高さを証明したそうです。