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■エアフロ-センサーの主流は、信頼性が高く低コストのホットワイヤ式
●エンジン制御の基本は、吸入空気量に応じて適正な燃料を噴射すること
エアフローセンサーは、エンジンの吸入空気量を計測する流量センサーです。エンジンは、エアフローセンサーで計測した吸入空気量に応じて、適正な燃料量を供給して出力や燃費、排出ガスを制御します。
エンジンの燃焼制御のために高精度の計測が求められるエアフローセンサーについて、解説していきます。
●吸入空気量の計測
エンジンを運転状況に応じて適正に制御するためには、刻々と変化する吸入空気量を正確に計測する必要があります。特に排出ガス低減のためには、エアフローセンサーの計測精度は重要です。
ガソリンエンジンの排出ガス低減には、CO、HC、NOxを同時に浄化する三元触媒を使います。三元触媒によって排出ガスを効率良く低減するためには、空燃比(吸入空気重量/供給燃料重量)を理論空燃比14.7に正確に制御する必要があります。
そのために、吸入空気量を精度良く計測することが不可欠なのです。
現在もっとも一般的に使われているエアフローセンサーは、ホットワイヤ式と最近普及し始めたMEMS(マイクロ電気機械)式です。そのほか採用例は少ないですが、カルマン渦式と可動プレート式があります。
●ホットワイヤ式
ホットワイヤ式エアフローセンサーは、白金の発熱線を流れに中に置き、空気の流れによって奪われる熱量から吸入空気量を求めます。
I²R = A + B√Q
(I:熱線プローブの加熱電流、R:熱線ブロー部の抵抗、Q:空気質量流量、A,B:定数)
電流によって加熱した白金熱線を空気が通過すると、熱を奪って抵抗が変化します。流速が速いほど多くの熱が奪われ、抵抗が下がって電流量が増えます。熱線の電流量を検出すれば、空気流量が計測できるという仕組みです。
原理的に質量流量が検出できるので、大気圧や気温の変化の影響を受けない、扱いやすいセンサーです。
●MEMS(マイクロ電気機械)式
最近は、アトキンソンサイクルや可変バルブ機構、大量EGRシステムなど吸気系が複雑になり、それにともない脈動が大きくなり、吸気内に逆流が発生しやすくなっています。
そのため、吸気の脈動流や逆流も計測できる半導体のMEMS式エアフローセンサーが採用され始めました。これは、シリコンダイヤフラム式検出エレメントを使用して双方向の流れを計測するセンサーです。
●カルマン渦式
流れの中に柱状の障害物があると、その下流には渦が発生します。その渦の数と流速には比例関係があるため、渦の数をカウントすることで吸入流量が求められます。
カルマン渦が発生した空気の下流に超音波を発射して、渦の数に応じて超音波の波形が変化することを利用して、吸入空気量を計測します。光学的に渦数を計測する手法もあります。
かつて三菱自動車が採用していましたが、圧力損失が発生するため現在採用例はほとんどありません。
●可動プレート式
空気が可動プレートに衝突して力が作用する原理を利用して、流量を計測する方法です。
プレートが受ける力は、質量流量の二乗に比例します。また、可動プレートにリターンスプリングが設置され、流速によって受ける力とバネ反力が釣り合う傾きをポテンシャルメーターで検出します。
F ∝ G2・sinθ (F:プレートにかかる力、G:質量流量、θ:流れとプレートとの角度)
可動プレートの傾きから、質量流量を算出できます。
ただし、可動プレートよる圧損があり、長期使用によって計測精度が低下するため、最近の採用例はほとんどありません。
運転条件に応じて変動する空気量を応答良く計測することは、クルマのレスポンスや燃費、排出ガス性能の向上のために非常に重要です。
現在は、信頼性が高く低コストのホットワイヤ式が主流ですが、最近になって吸気の脈動流や逆流の計測ができるMEMS式エアフローセンサーの採用が急増しています。
(Mr.ソラン)