■衛星や一般車両から得られる画像データなどを元に自動運転用の地図情報を生成
トヨタの自動運転ソフトウェアの先行開発を行う「トヨタ・リサーチ・インスティテュート・アドバンスト・デベロップメント(TRI-AD)」は、日本橋に先進的なオフィスを構えています。
筆者もオフィスを取材する機会がありました。最先端の自動運転ソフトウェア開発というイメージするラボではあるものの、「和」のテイストが取り入れられた和めるスペースもあり、はたらく場としては、日本式の最先端オフィスになっています。
TRI-ADは、従来はコストがかかるため広範囲での網羅が難しく、自動車専用道路に限られていた高精度地図生成に対する効果的な手法を追求してきたそう。今回、複数のパートナーと実証実験を実施し、自動運転に必要な相対精度である、50cm程度以下の地図生成が可能であることを確認したそうです。
今回の実証実験では、以下の2点が検証され、いずれも高精度地図生成に有効であるという結果を得たそう。
1:専用の計測車両を使用せずに、衛星や一般車両から得られる画像データなどを元にして、自動運転用の地図情報を生成する
2:TRI-ADの自動地図生成プラットフォームであるAutomated Mapping Platform(AMP)上の車両データのデータ形式を変換し、アルゴリズムを補正することにより、他社のプラットフォームで活用する
こうした複数のパートナーとの実験成果を活用することで、自動運転用地図の更新期間の短縮、エリアの拡大、作成および維持コストの大幅な削減が期待できるとしています。
宇宙技術ソリューションをリードするマクサー・テクノロジーズ社(Maxar)、NTTデータ、TRI-ADは、2019年4月25日より3社合同で高解像の衛星画像を使った自動運転用高精度地図の自動生成に向けた実証実験を実施。
その中で、衛星画像に写るクルマや影、建物の倒れこみによる遮閉などの地図以外の要素を自動で解析、除去、補正することで、必要な地図情報を自動抽出することに成功したそう。東京23区と海外6都市で、自動運転制御に活用できる相対精度である、25cm程度の地図生成を実現し、自動運転用地図として有用であることが確認されています。
また、道路インテリジェンスのプラットフォームを提供するCARMERA Inc.(CARMERA)とTRI-ADは、東京23区と米国2都市で、一般車両にも搭載可能なドライブレコーダーを使用した自動地図生成技術の検証を実施。この中で、ドライブレコーダーのデータのみで自動運転に必要な相対精度である、40cm程度の地図生成に成功したそうです。
両社が連携し、CARMERAの「Real-Time Events and Change Management engine」と同じマシンラーニング技術などを使用することで、自動運転に必要な最新情報を判別。HDマッピング・システムに送信、更新することが数分でできるようになります。これにより、AI認識に必要な画像データを収集し、幅広いエリアの地図生成の可能性について実証できたとしています。
さらに、TRI-ADと、位置特定技術をリードするTomTom International BV.(TomTom)が新たな実証実験を実施。TRI-ADが集めたAMPの車両データの信頼性を検証し、TomTomのクラウドベースの地図生成プラットフォーム用にデータ形式を変換し、TomTom独自のアルゴリズムを活用して入力することで、自動運転に必要な車線情報を含む一般道高精度地図の生成と更新に成功したそうです。
ほかにも、TRI-ADと、位置情報データおよび位置情報技術のプラットフォームを提供するHERE Technologies(HERE)との共同実証実験も行っています。TRI-ADの車両データの位置誤差をHEREの高度セルフヒーリング技術で補正することにより、自動運転に必要な車線情報を含む一般道高精度地図の生成に成功。
車両データをHERE Platformに入力することで、HERE独自のアルゴリズムで高精度の一般道地図を自動生成することが可能になったそう。同社のHD Live Mapは、すでに世界有数の自動車メーカーのレベル3自動運転開発プログラムで採用されています。
(塚田勝弘)