■街乗りに絞れば250kmの航続距離も可能! ルノー・トゥインゴのEVバージョンが登場
ルノーといえば、欧州でも電気自動車に積極的なメーカーのひとつ。「Z.E.」というシリーズでラインナップ各車に電気自動車仕様をリリースしています。その最新作といえるトゥインゴZ.E.の情報が公開されました。
後輪駆動のトゥインゴをベースとしたEVバージョンの特徴は、EVのジレンマから解放されていることです。
このジレンマとは「航続距離を稼ぐためにバッテリーを積むと、重くなってしまい思うように航続距離が伸びない」というものですが、トゥインゴZ.E.はもともと持つキャラクターもあってシティコミューターと割り切った設計となっているように見えます。
電気自動車の肝といえるバッテリーはフロントシート下に搭載されていますが、その総電力量は21.3kWhと発表されています。いまどきのEVとしてはバッテリー搭載量が少ないようにも思えますが、バッテリーの重量は165kgと控えめで車両重量も1112kgと軽くできています。
ボディが軽ければ航続距離は伸びる傾向にあるので、トゥインゴZ.E.はシティコミューターとして最適化した設計を受けているといえます。
実際、WLTP複合モードでの航続距離は180kmと発表されていますが、アーバンモードに限れば250kmを走行可能といいます。
EU圏でのシティカーユーザーの平均的な一日当たりの走行距離は30km程度といいますから、1週間くらいは無充電で走れる計算です。それもこれもバッテリー搭載量を抑えて、軽い車体にしたことが効いています。
最高速度も135km/hと割り切ったスペックですが、まさに街乗りメインで使うとちょうどいい性能にバランスされているというわけです。
もちろん、EV化されても4名乗車のできるキャビンはしっかり維持されています。シティコミューターとしての用途を満たしてくれること請け合いです。一般論として、バッテリーは電気自動車において大きなコスト要因となりますので、バッテリー搭載量が少なければ車両価格も抑えられます。
どうしても「大は小を兼ねる」とばかりにたくさんのバッテリーを積んだ電気自動車を求めがちですが、自分の使い方が明確であれば、このくらいのバッテリーサイズでも問題ないというユーザーもじつは多いはずです。
日本ではEVというと、Cセグメントを中心としたサイズ感となっていますが、本来的な使い方を考えるとルノー・トゥインゴのようなコンパクトカーのEVにこそニーズがあるでしょう。トゥインゴZ.E.の日本上陸を心待ちにしているEVファンも少なくないはずです。
電動化によってブランドを差別化しているルノー・日産・三菱アライアンスですから、同じアーキテクチャを使った兄弟モデルの登場も期待したいものです。
(自動車コラムニスト・山本 晋也)