【自動車用語辞典:インターフェイス「シート」】身体を支える重要装備。デザイン、快適性、安全性が求められる

■安全で疲れないシートをめざして

●販売市場や車格も考慮対象

クルマのシートには、快適性や安全性、さらにデザイン性も求められます。特にドライバーにとっては、運転しやすく疲れないことが重要で、それがクルマの安全性に直結します。

乗員の身体をサポートするという重要な役割を担っているシートについて、解説していきます。

●シートに求められるのは?

クルマのシートに求められる快適性や安全性、デザイン性を実現するためには、具体的には以下の項目について最適設計する必要があります。

・快適性と運転のしやすさ

適正な座面サイズや表面生地などによって、サポート性能(包まれ感)を向上する。また、振動を吸収し、適正なクッション性などによって疲労を軽減する。

・安全性

シートの剛性や強度、適正なサイズによって、乗員の安全を守る。

・デザイン性

車室内の大部分を占める部品として、意匠や質感を重視したデザインとする。

●シートの基本構造

一般的なシートは、シートフレームにシートスプリングを取り付け、その上にパッドを置き、トリムカバーアセンブリを被せた構造です。スプリングの代わりに、パッド厚さを増したフルフォーム構造のシートもあります。

・シートフレーム

シートフレームは、乗員とシート自重を支えるために強度と剛性が必要です。一般的には、鋼板や鋼管、鋼線で構成され、なかには軽量化のために高張力鋼板やアルミ合金などを採用した例があります。

・シートスプリング

シートスプリングは、乗員の体重を支えながら座面を撓ませて乗り心地を向上させます。ピアノ線や鋼線のジグザグスプリング、布や鋼線を組み合わせたサスペンションマットなどが使用されます。

・パッド

パッドは、シートフレームとトリムカバーの中間に配置され、通常は柔軟性のあるウレタンフォームが使われます。乗員の姿勢保持や体圧の分散や振動の抑制などが、パッドの役目です。

座面や側面部、背面部それぞれで発泡倍率を変えて、部位ごとにウレタンフォームの硬さを調整します。

・トリムカバーアセンブリ

パッドを保護し、表面は乗員の臀部と腰、背中を支えてクッションの役割をします。シート表面生地(表皮材)とワディングウレタン、ワディングカバーを一体化してシート形状に合うようにカットして、各部材を縫製して繋ぎ合わせます。

シートの基本構造
シートの基本構造

●質感が重要なシート表面生地

シートの表面生地は、見た目の高級感や肌触りが重要視されます。一般的には、布地(ファブリック)と本革、合成皮革の3種が使われます。

・布地は、本革や合成皮革に比べると高級感はありませんが、通気性や耐久性が高く低価格なので多用されています。

・本革は、牛皮などを鞣して表層に樹脂塗装をしたものが一般的です。高価で高級車シートの代名詞ともいえますが、耐久性が低く手入れが大変です。

・合成皮革は、布に樹脂の被膜を貼り付けて本革の表面に似せたものです。しっとりとして肌触りや通気性が良く、しかも耐久性にも優れています。見た目や肌触りは本革と比べても同等以上の質感があり、代表的なスウェード調合成皮革のアルカンターラは、本革よりも高価格の仕様があります。


欧州車のように長距離走行をしない日本の小型車のシートは、疲れやすいなど機能面で劣っていると言われています。日本車のシートは、高級車は高品質で長距離でも疲れない仕様、小型車は短時間の運転を意識して快適性や乗降性を重視した設計思想で作られています。

共用化すればよいと思いますが、市場や車格などに見合ったシートを装備しないとユーザーに受け入れてもらえない部品です。

(Mr.ソラン)

この記事の著者

Mr. ソラン 近影

Mr. ソラン

某自動車メーカーで30年以上、自動車の研究開発に携わってきた経験を持ち、古い技術から最新の技術までをやさしく解説することをモットーに執筆中。もともとはエンジン屋で、失敗や挫折を繰り返しながら、さまざまなエンジンの開発にチャレンジしてきました。
EVや燃料電池の開発が加速する一方で、内燃機関の熱効率はどこまで上げられるのか、まだまだ頑張れるはず、と考えて日々精進しています。夢は、好きな車で、大好きなワンコと一緒に、日本中の世界遺産を見て回ることです。
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